栄養指導で”あるある!こんなこと”
第93回
体重増加が原因で不妊の可能性があるIさん
料理への苦手意識が肥満の原因に…

今回ご紹介するIさんは30代前半の女性で結婚2年目です。妊娠を希望して産婦人科を受診するも体重増加が不妊の原因ではないかとされ、減量するようにと栄養指導の依頼で当クリニックを受診しました。

体重増加の背景にあった衝撃的な事実

田村:Iさん、産婦人科の先生からのご紹介ですね?

Iさん:はい。妊活で通っているんですが、少し体重を減らすようにと言われました

田村:わかりました。今回は初回なので、食事について質問させてください

いつもどおり食習慣の質問をしました。Iさんは身長156cm、体重89kg、BMI36.6kg/㎡でした。食事の回数、時間、間食など目立った問題はこの時点では見つからず、あるとすれば野菜の摂取が少ない点ぐらいでした。

田村:そんなに大きな問題点はなさそうですが、できるだけ寝る前2~3時間は食事などをとらないようにしましょう。

Iさん:はい。そこは気になっていたので気を付けるようにしたいと思います

田村:ちなみに20歳頃って体重はどのぐらいでしたか?

Iさん:20歳の頃は今ぐらいあったんですが、27歳の時に減量して60kgまで落としました。で、また徐々に増えてきたって感じなんです

田村:そうなんですね。その時はどんな減量方法をしたんですか?

Iさん:食事をバランスよくとって、歩いたり筋トレしたりなど、軽い運動をしていました

田村:正しい減量方法ですね。じゃ~2~3年かかりましたか?

Iさん:そうですね、2年はかかったと思います

田村:その時の食事をぜひまた頑張ってほしいですね

Iさん:その時は実家にいたので、母が全部、お弁当も含めてつくってくれていました

田村:そうなんですね。それはありがたかったですね。今はどうしていますか?

Iさん:私、調理がとても苦手で、ストレスになっちゃうんです

田村:ストレス?

Iさん:はい。本当に嫌いなんです

田村:では、お食事は普段どうされているんですか?

Iさん:ほとんどすべてお弁当やできあいの物を買って食べています。お昼のお弁当は勤務先に持参していますが、冷凍食品を詰めるだけです

田村:なるほど、そうなんですね。旦那様の食事は?

Iさん:調理が苦手なのを知っているので主人もいろいろと買ってきてくれて、それを食べています

田村:だから野菜が少ないんですね。ちなみに旦那様の体型はどうですか?

Iさん:同じように太っています

田村:そうですか……

超簡単料理の提案で無理なく健康的な生活へ

ちょっと衝撃的な事実でしたが、便利な世の中、ましてコロナ禍でテイクアウトも盛んになっているご時世ですから、調理しなくても好きな物を好きなように買って食べることができてしまうと改めて感じました。

田村:では、ストレスにならない程度に野菜などをしっかりとって、食事のバランスを整えていかないといけないですね

Iさん:はい。そう思ってはいるんですが……

田村:大丈夫です。できることからやっていきましょう。調理の何が一番苦手ですか?

Iさん:皮を剥いたり、切ったりがとにかく嫌いです

田村:電子レンジはありますか?

はい。あります

田村:炊飯器やお鍋は?

Iさん:ご飯は炊いています。お鍋やフライパンも一応はあります

田村:わかりました。でしたら大丈夫です。今回はとにかく野菜をしっかり食べる習慣を頑張ってみましょう。旦那様も一緒にお二人で頑張りましょう

Iさん:はい。主人も私と一緒に生活するようになって10kg太ったと言っています

田村:レシピも印刷して差し上げますが、コンビニでもスーパーでも今はカット野菜が売られてますよね?

Iさん:はい

田村:それでしっかり野菜をとっていきましょう。サラダはそのまま購入して食べてもいいです。あと、野菜炒め用のカット野菜を鍋に入れて、コンソメなどでスープにしましょう。コンソメ、中華だし、和風だしでみそ汁、牛乳を加えて洋風、トマトジュースを加えてトマトスープなど、これだけでもバリエーションがいくつかできます。ここにウインナーやベーコンを加えてもいいですよ。今の時期だったら多めにつくって翌日味を変更してもいいですね

Iさん:それならできますね

田村:あと同じ野菜炒め用のカット野菜を大きなお皿に出して、ラップをふんわりかけてレンジで温め、温野菜としてポン酢などで食べてもいいですね。そこにきのこ類をプラスすればさらに食物繊維がアップします

Iさん:チンだけでいいんですか?

田村:大丈夫です。職場で食事の際はわかめスープと乾燥のカットわかめを持参しておいて、わかめスープに乾燥のカットわかめを追加して海藻をしっかりとりましょう。そしてできれば毎食、野菜からしっかり食べるようにしてください

Iさん:わかりました

田村:あと以前のように運動をしてはどうですか?

Iさん:暖かくなってきたのでやろうかと思います

田村:いいですね。また再開してみましょう

そして、6カ月後……。

田村:こんにちは。今月も体重が減りましたね。初回に比べて4kg減です

Iさん:はい。最近、体重が減ってきてうれしいのと、身体も少し楽なので、週3日歩いていたところを、週5日にしました。時間も、徐々に増やして今では60分間ウォーキングしています

田村:素晴らしいですね。運動も最初から頑張りすぎてしまうと疲れて嫌になってしまうので、徐々に増やすのがベストです。食事はいかがですか?

Iさん:もともと野菜は嫌いではないので、教えてもらった簡単な料理は続けています。同じ料理でも途中で味を変える方法などはとても役立っています。あと最近、主人も焼き魚などの簡単な料理をつくってくれるようになりました

田村:それは素晴らしいですね

Iさん:主人も体重が減ってきているので、それもうれしいみたいです

田村:そうですか、それはよかった。1ついい方向に向くといろいろと好転してきますね

Iさん:管理栄養士さん、初めて話しますが、最初に来た時生理が止まっていたんです。産婦人科の先生からは太ったりやせたりしたことが原因かもしれないって言われていたんですが、それが先月から戻ったんです

田村:そうですか。それはよかった。食事のバランスなどいろいろと重なっていたのかもしれませんね

食事のバランスが崩れる原因は人それぞれです。患者さんに合った方法を一緒に探して、無理のない方法で結果を出すお手伝いをしてあげると、あとはどんどんよい方向へ向かっていく場合も多いので、そんなサポートができるよう心がけています。(『ヘルスケア・レストラン』2021年4月号)

田村佳奈美
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士

たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている