栄養士が知っておくべき薬の知識
第116回
薬の飲み忘れを防ぐと期待される
週1回服用薬のメリット・デメリット

週に1回投与(服用)すればよい抗糖尿病薬などが開発されています。ただし、薬の投与間隔には注意する必要があります。

薬の飲み忘れと投与間隔について

薬の服用は食事に合わせて1日3回食後などとなっています。この理由の1つは薬の飲み忘れを防ぐことです。薬の飲み忘れはとても多く、「残薬」と呼ばれ問題になっています。入院する患者さんには「持参薬」といって、使っている薬を全部持ってきてもらいますが、それを調べると、数年前の薬が混ざっている、何でこの薬が入っているのかわからない、などといった場合も少なくありません。今、飲まなければならない薬がたくさん余っているというケースもあります。服薬を忘れてしまう「服薬のノンコンプライアンス」の対策として、「週に1回でよい薬」なども発売されています。

薬を使うタイミングは、薬の効果を十分に発揮したい場合と薬の副作用対策などで決められます。薬と食事の関係はとても大切なため、添付文書では、食後や食前服用などと厳密に書かれています。一方、たとえばセフジニル(セフゾン®)など、いわゆるセフェム系の抗菌薬は、「1日3回8時間ごとに服用」などと指示されます。これらの抗菌薬は、食前と食後で若干の吸収の違いがありますが、8時間ごとに飲んでいただきたい薬です。セフェム系などの抗菌薬は細菌を発育させないために、それを殺滅するのにある一定以上の薬の濃度が必要になるためです。反対に言うと、一定濃度以下になると細菌の増殖を許してしまいます。そこで8時間ごとなどの投与間隔が大切になります。

一方、ニューキノロン系であるレボフロキサシンなど、1日1回服用すれば、ほぼ1日中、薬が効いているといった薬もあります。これらは食事に関連せずに服用する薬の例です。1日に何回も服用しなければならない薬よりも、日1回服用で済むなど、なるべく簡便な方法によって服薬コンプライアンスは良好になると考えられています。このためほとんどの降圧薬などは1日1回服用するタイプになっています。生活習慣病の中でも食事に強く関連する抗糖尿病薬の場合、食事摂取後の高血糖を防ぐために、食前服用などが指示されるケースもあります。

週1回の服用で済む抗糖尿病薬

インクレチンは血糖依存的にインスリン分泌を促進する作用があります。ただしこの作用は数分で終わってしまいます。インクレチンを分解してしまうのが、ジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase4:DPP-4)です。この作用を阻害すればインクレチンの作用が継続して起こります。そこで合成されたのがDPP-4阻害薬です。血糖に依存してインクレチンは分泌されるため、DPP-4阻害薬による低血糖の心配はありません。ただしインスリンそのものやインスリンを分泌する薬を併用している場合は、低血糖を生じやすくなることに注意が必要です。

DPP-4阻害薬は何種類も発売されていますが、週1回服用すればよいものとしてトレラグリプチン(ザファテック®)、オマリグリプチン(マリゼブ®)が発売されています。これらの薬はフッ素を構造上に組み込むことや、薬の体内分布や腎臓からの再吸収が起こる、などといった特性をもつため、週1回服用を実現しています。その反面、忘れてしまったらどうするか、などの疑問もわくところです。DPP-4阻害薬という薬の特徴から、2回分飲んでも低血糖は起こりにくいとはいえ、飲み忘れた場合は基本的に1回に2回分を飲むことはせず、気づいた時に1回分を服用して、その後は決められた曜日に服用することとなっています。

吸収しにくいが効果が高いGLP-1作動薬

インクレチンにはGLP-1とGIPという2種類があります。GIPは脂質異常を起こすため薬にはなりにくい一方、GLP-1に作用する薬は主に注射薬として発売されています。DPP-4阻害薬はGIPを増やすことからか、心血管障害を増やすのではないかという懸念もありますが、GLP-1作動薬にはその心配もなく、SGLT-2阻害薬と並んで、メトホルミンの次に選択される可能性のある薬になってきました。GLP-1作動薬はインスリン産生と分泌を促進する作用以外にも、膵β細胞を助ける作用や糖新生を促すグルカゴンの分泌抑制、また、血糖管理にとって有利となる胃排泄遅延作用や中枢を介して食欲の抑制などによって体重増加が起こりにくいことも特徴です。

GLP-1作動薬はまず注射薬で1日2回投与する製剤が開発され、その後、週1回注射すればよいエキセナチド(ビデュリオン®)、デュラグルチド(トルリシティ®)、セマグルチド(オゼンピック®)が発売されています。「マイクロスフェア」という物質にGLP-1を収めて注射すると少しずつ血液中に放出されるという仕組みで、週間に1回投与すればよい注射剤です。この方法は糖尿病薬以外でも、抗菌薬のジスロマック®SRドライシロップや統合失調症治療薬のリスペリドンの注射薬(リスパダールコンスタ®筋注用)にも使われています。

注射薬を使うのは患者さんにとっても介護者にとっても煩雑ですが、GLP-1作動薬の内服薬としてリベルサス®錠(セマグルチド)も発売されています。もともとGLP-1製剤は、薬を吸収させるのが難しいことから注射剤として開発されましたが、この薬は吸収促進剤を用いることで経口剤とすることができました。
ただしこの薬は飲み方が難しく、空腹時(起床時など)にコップ約半分(約120ml)の水で服用する必要があり、服用後も少なくとも30分は、食事はもとよりほかの薬も飲めないなどの制限があります。空腹を長く保つほど、薬の吸収がよくなるためです。なお、骨粗しょう症治療薬のビスホスフォネート系薬も吸収が悪く、同じような飲み方をするため、両者を同時に服用することは難しいでしょう。

週1回で済むことは是か非か?

薬の錠数や服用回数も少ないほうが患者さんには喜ばれますが、糖尿病の患者さんでは食事摂取との兼ね合いも大切だと思います。まだ未発売ですが、インスリン注射も週1回投与の製剤が試されています。

週1回で済む薬は便利な反面、毎日3回薬を飲むことが、自分が糖尿病であることを意識することに役立つという意味で、必要なのかもしれません。患者さん自身が病識をもって治療に参加することをアドヒアランスといいます。糖尿病では、薬よりも毎日の食生活の管理が重要です。糖尿病予備群のデータでは、薬の服用群よりも毎日の食事と運動習慣を指導した群のほうが糖尿病になりにくかったことも示されています。週1回使用すればよい薬も増えてきていますが、食事の制限を守れるかどうかなどは、管理栄養士さんの栄養指導がさらに大切になってくると思います。

今回は週に1度使えばよい糖尿病治療薬を中心に述べました。これ以外にも関節リウマチに使うメトトレキサートも週1~2回の内服薬です。これは毎日使うと骨髄抑制が起こり重篤な副作用を生じます。また抗がん剤の中でも、フルオロウラシル系のティーエスワン®は28日服用したあと7~14間は休薬が必要になるなど、投与間隔に注意が必要な薬もあります。週1回の薬は便利ですが、服用方法がほかの薬とは異なることのメリット、デメリットを考えて利用する必要があると思います。(『ヘルスケア・レストラン』2021年4月号)

林 宏行(日本大学薬学部薬物治療学研究室教授)
はやし・ひろゆき●1985年、日本大学理工学部薬学科卒業。88年、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院勤務。2002年から同院NST事務局を務める。11年4月から日本大学薬学部薬物治療学研究室教授