食べることの希望をつなごう
第35回
“当たり前”となった多職種連携
そのメリットについて考える

どこの施設でも多職種連携が進められていることと思いますが、当院でも病棟に多職種が常駐しており足並みを揃えて患者さんに対応しています。今回は多職種で介入する意義について、改めて考えてみました。

多職種連携が当たり前の今

NSTをはじめとし、多職種連携が当たり前になってきています。口腔がんを多く扱う当院では、摂食嚥下リハビリテーションを中心に多職種連携のもと、診療が行われています。当院の病棟の特徴として、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士が常駐しており、いつでも意見交換・情報共有が可能になっています。歯科衛生士や言語聴覚士の介入もあります。

「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」では、頭頸部がんの支持療法において、多職種連携が必須とされています。支持療法とは、治療において出現する有害事象を最小限にし、治療効果を最大限に引き出すためのものです。大きく分けて予防的介入と対症的介入の2種類があります。
予防的介入とは、有害事象が発生する前から介入し、発生を抑えることを目的として介入することです。「予防的」な介入なので、介入したから有害事象が抑えられているのか、もともと有害事象が発生しなかったのかの判断がわかりづらく、効果を実感しづらいかと思います。それに対し、対症的介人は、起きてしまった有害事象に対して、苦痛を最小限に抑えるために介入します。こちらは症状に対する対応なので、介入の仕方がわかりやすく、効果も実感しやすいと思います。

それぞれの情報を共有して細かな対応が可能となる

当院では化学療法や放射線治療を行う患者さんも入院するため、治療方針が決まったところからそれぞれの立場で介入します。治療方針や現在の状況、これからの方向性などの総合的なところは担当医が担います。口腔ケアは歯科医師と歯科衛生士が、薬物療法は薬剤師が、食事に関するもろもろは管理栄養士が務めることになりますし、日々の身体状況をはじめとした、患者さんに関する種々の情報は看護師が把握しています。それぞれが得た情報を共有することで、患者さんへより細かい対応が可能となっていることを実感します。

化学療法が決まると、使用する薬剤や回数、期間について、特に看護師、薬剤師と情報共有する場面が多いです。使う薬剤によって起こりやすい有害事象や発生すると予測される期間があるので、看護師、薬剤師、管理栄養士で相談します。
看護師は患者さんの情報、たとえば心配性といったキャラクターや、治療についての姿勢などの情報を共有します。嗜好をはじめ、家族構成や家での生活といった情報も非常に参考になります。私は食事に関するところでかかわりますが、治療が決まったところから「不安が強くて相談したいと言っている」、「気持ち悪くなったらどうしようとの発言あり」など、食事の対応依頼があります。まだ症状の出ないうちから、患者さんに「管理栄養士にいつでも相談できます」と説明をしておくことで、患者さんが我慢せずに気軽に相談できる環境ができます。そのように一度介入しておくと、次からの相談がよりしやすくなるように思います。
また、「こんな対応ができます」という例をご紹介しておくと、「何が食べられるのかわからない」という状態から「そういえばフルーツなら食べられた患者さんがいると言っていた」、「効率よく栄養をとる方法があると言っていた」など、患者さん自身が自分に合った対応を考えるきっかけになることがあります。

化学療法が2回目、3回目となると、「薬を入れたのが○曜日で、○曜日から○曜日までは食欲がなくて、○曜日からアレが食べられた」など、経験に基づいた対応を事前から計画することもできます。これは、患者さん自身の心の準備だけではなく、今日は調子が悪い可能性が高いな、などスタッフの心構えにもつながり、対応への配慮が可能となります。

他職種を介することでうまく対応できることも

患者さんがほかの職種には話せることがある、ということも経験しました。特に年配の方に多いのですが、「対応してもらっているのに食べられなくて申し訳ない」、「食べられないのは自分の頑張りが足りないからだ」、「食べられないのはわがままだ」と自分を責めてしまうのです。

「食べられないのは治療のせいで、それは頑張っていないとか、わがままだとか、患者さんの努力で何とかなる問題ではないんですよ」と説明しても、やはり「用意してもらった食事を残してしまって申し訳ない」と思ってしまう方は少なくありません。そういう思いが強くなってしまうと、訪室しても「大丈夫」と言われてしまったりします。カルテには食事摂取量30%の記載、看護師からも「食べられていない」と聞いているのに……。

そんな時、別の用件で話をしたという他職種から、「麺が食べたいと言っていたよ」とか、「家では朝はパンと牛乳だったそうです」などの情報をもらえることがあり、そういう場合はこっそり対応します。訪室は続けつつ、提供してみてどうだったか、他職種にも確認してもらい、その後の対応に役立てます。

栄養や食事の観点を共有することも大切

反対に、管理栄養士の目線から他職種に情報提供する場面ももちろんあります。

歯科衛生士には、口腔ケアで使っている保湿剤が口に合わないとか、手術のあと歯磨きの仕方がわからないなど、患者さんからの要望や質問を伝えることに加え、口腔ケアの予約が入っている患者さんの食事の状況も伝えます。たとえば、誤嚥があるので直接訓練しか行っていない、食事は出ているけれども疲労感から摂取量が少ない、まだ経腸栄養の期間が続く見込み、といった、口腔内の環境に影響するであろうことなどです。
薬剤師とは、薬と食事の相互作用やアレルギーの情報についての連携は必須ですが、誤嚥につながりやすい薬の処方があるか、痛み止めの種類や使用回数、食形態と剤形などについても共有します。

先日は、誤嚥のリスクが非常に高い患者さんがいたのですが、上限まで痛み止めを使っていたので、「発熱が誤嚥の指標とはなりにくいかも」とアドバイスをしてくれ、やはり多職種の目線の共有は大切だと痛感しました。その話を聞いた患者さんご自身も、無理のない範囲で痛み止めの使用を減らしたいという気持ちをもたれ、結果的には使用薬剤の減量につながりました。
また先日は「エンシュアの味変について」患者さんから相談を受けたとのことで、薬剤師と一緒に対応しました。そこから「ツインラインは飲んだことがある?」「エレンタールはフレーバーがあったほうがいいよね」など話が広がり、試飲の機会を設けたいね、という話になりました。

職種を問わず、患者さんへ情報提供ができるよう、かかわるスタッフ向けに情報発信することは大切だなと思います。管理栄養士の人数が十分でない施設も少なくないでしょう。
管理栄養士でないとできないことはもちろんたくさんありますし、管理栄養士が必要だと感じてもらうことは非常に大切だと思いますが、業務量が抱えきれず対応できなくなってしまわないためにも、他職種と連携をとり、多職種で対応できる方法も、実はよいのではと考えています。(『ヘルスケア・レストラン』2021年2月号)

豊島瑞枝(東京医科歯科大学歯学部附属病院 管理栄養士)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年より東京医科歯科大学歯学部附属病院勤務となる。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、NST専門療法士、TNT-D管理栄養士、糖尿病療養指導士