食べることの希望をつなごう
第30回
食事の苦痛を和らげられる方法を提案すること

栄養相談の内容で多いのが、食事のボリュームを落としたいという希望です。今回は、痛みで食事が思うようにとれずに悩んでいたという、外来の栄養相談での事例を2つご紹介します。

他職種がつなぐことも多い外来の栄養相談

緊急事態宣言が解除され外来診療が再開となり、入院・外来ともに患者さんが増えてきたことから、栄養相談の件数も増えてきています。栄養相談では、何をどれだけどうやって安全に食べるか、ということを中心にお話ししています。
特に入院患者さんに関しては、看護師·薬剤師などの他職種からの情報に加えて、毎日のミールラウンドでもちょこちょこ疑問に答えることができるので、そうした機会も使って患者さんが不安なく退院できるよう心がけています。

歯科医師だけでなく、看護師・薬剤師などのスタッフも、患者さんが食事を食べていない、こんな不安があるなど、食事に関することを積極的に聞き出して、私につなげてくださるので、大変ありがたい環境です。外来からも、主に看護師さんがPHSに連絡をくださいます。身体が空いていればすぐにうかがい、ご相談に乗るようにしています。

固形物が歯に当たると痛くて食べられない…

骨髄炎の痛みが強く、食事に苦労しているというAさんの相談に乗ってもらえないかと外来から連絡がありました。咀嚼をする動きをしたり、歯に食べ物か当たったりすると痛みがあり、食事が進まないとのこと。同席の奥様も「とにかくつらそうで、食べてと言えない」と困っていらっしゃいます。吸う動作でも痛みが出るので、できるだけさらさらした形状のものを重力でのどに落とし込んで飲んでいるとのことでした。ポトフのスープの部分や、あさりやしじみのみそ汁の上澄みなどです。「何とか温泉卵は食べられるけど、歯に当たった時のことを考えると、できるだけ固形物は食べたくない」とおっしゃいます。そのほかにはドラッグストアで購入したという1.6kcal/mlの栄養剤と、0.9kcal/gのゼリードリンクを飲んでいらっしゃいました。
主治医からは痛み止めの処方があり、翌々日の再診が指示されていました。身長と体重、性別から1700kcal程度は必要と判断しましたが、現状では半分以下しかとれていません。1.5kcal/mlの栄養剤が処方されていましたが、1日1つしか飲めておらず、「一度に飲むには量が多いし甘いんだよね………」とのこと。しかし、食べられていないことの不安が非常に大きく、栄養はとりたいけれど、痛くて食べられないという、とてもつらい状況になっていました。

そこで、まずは摂取量不足による脱水の回避と、ご本人のご希望どおり、少しでも栄養をとれる方法をご紹介することにしました。幸い、酸味や辛味など、味による痛みは出ないとのことだったので、形態とボリュームの調整で、現状よりは良い方向に向かうと考え、牛乳、豆乳などの利用や油の使用を勧め、2kcal/mlの濃厚流動食をご紹介しました。
一度にたくさん飲むのは難しいとのことだったので、ちょこちょことポトフのスープやみそ汁の上澄みなど、奥様手づくりのものはそのまま飲んでいただき、処方されていた1.5kcal/mlの栄養剤と、ご自身で購入されていた1.6kcal/mlの栄養剤、0.9kcal/gのゼリードリンクを、今回ご紹介した2kcal/mlのものに置き換えてみることにし、2日後に再診が決まっていたので、そこで摂取量と体重、採血データなどを確認することにしました。その際、現在処方されている栄養剤とは違うメーカーの栄養も試してみることになりました。

コンパクトな栄養剤で食事の苦痛が軽減した

がんの再発がわかり、これ以上の治療は希望されないとおっしゃるBさん。今後は在宅療養に切り替え、折を見て緩和ケア病棟のある病院に入院するとのことでしたが、Aさんと同様、痛みが強く食事の量が減っていると奥様が困っていらっしゃるとのことで、栄養相談となりました。
主治医は麻薬の使用を勧めていましたが、在宅訪問医が決まり次第、在宅の先生のもとで麻薬を開始したいというご本人の強い希望があるとのこと。在宅訪問医が決まるまでの数日間、何とか少しでも食べていてほしいとのことでした。現在は、奥様手作りのペースト食をごく少量召し上がっておられるとのこと。水分はお茶を食事の際に少し飲んでいらっしゃるようです。

再発がわかったとはいえ、まだまだしっかりしていらっしゃいますし、痛みのコントロールがつけば、もう少し食べられるようになると予想されます。口腔がんの手術もされているので、咀嚼は難しいですが、嚥下には今のところ問題はないため、痛くなければ奥様手づくりのペースト食もしっかり召し上がれるでしょう。
しかし、痛みのコントロールがつくまでどのくらいかかるのか、それまでに体力が落ちてしまうのではないかと奥様はとても心配されていたため、こちらもAさん同様、2kcal/mlの栄養剤をご紹介し、サンプルをお渡ししました。見た目がとてもコンバクトであったことと、パッケージもお気に召したようで、「水分補給の感覚で飲んでもらいます」と笑顔で帰宅されました。数日後、娘さんを含めご家族で来院され、食事の苦痛が少し改善されたとおっしゃられていたのでホッとました。

少量で栄養を確保するための引き出しを多く持てるように

たまたま何件か、「とにかく食事のボリュームを落としたい」「食事の時間を短縮したい」「たくさん食べられないけれど、どうしたらよいか」などの相談が続きましたが、食事のボリュームを落としたいというご希望はよくうかがいます。
軟らかく調理をすると、どうしても水分が多くなりますし、ほぐしたり細かくしたり、つぶしたりすると、見た目のボリュームが増えるため、たくさん食べても実際は栄養量が不足していた、なんていうこともよくあります。少量頻回食や、補食の利用、油や乳製品、大豆製品を調理に使用し、栄養量のアップを図ることに加え、栄養剤をご紹介することも多々あります。
味が合わない場合や、「使用したくない」とおっしゃる方には無理には薦めませんが、とてもたくさんの種類が出ているので、とにかく食事にかかる時間やボリュームを落としたいという方や、何もしたくない時などの非常食として、ご利用いただいてもよいと考えています。

そして、できるだけ多職種で少しずつでも試飲できると、パンフレットに載っている情報だけでなく、ミルクっぽい濃厚な味のものから、さっぱりしたジュースのようなものまで、いろいろなフレーバーがあること、さらには商品によってとろみ具合が違うことなどを周知できます。
その際に、価格や、脱水や高血糖など気を付けていただきたい点についても説明しておくと、よりよい使い方ができるのかな、と思います。(『ヘルスケア・レストラン』2020年9月号)

豊島瑞枝(東京医科歯科大学歯学部附属病院 管理栄養士)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年より東京医科歯科大学歯学部附属病院勤務となる。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、NST専門療法士、TNT-D管理栄養士、糖尿病療養指導士