“その人らしさ”を支える特養でのケア
第32回
機能低下の進行に合わせて食事介助や食形態を見直していく

認知症の事例紹介の最後は、レビー小体型認知症のCさんです。レビー小体型認知症はパーキンソニズムが特徴の1つで、徐々に身体機能が低下していき、当然、食べる動作にも影響が表れてきます。
Cさんもまずは歩行が難しくなり、やがて食事の自力摂取が難しくなっていきました。

お菓子を買い込むほど甘いものが大好き

Cさんはレビー小体型認知症で現在要介護度は5。全身の拘縮も進んでしまい、いわゆる寝たきりの状態です。食事もムース食とONS(経口的栄養補助)を組み合わせていますが、徐々に姿勢の保持機能や口腔嚥下機能の低下が進行しているように感じます。

入居当時のCさんは杖を使って歩くことができました。機能訓練指導員とともに館内を歩き、歩行のリハビリを重ねていた姿を思い出します。もともとお1人で過ごすことがお好きだったCさんは、毎日やってくる機能訓練指導員に渋い表情をされることも多かったようですが、「しかたがない」と歩行訓練を続けていらっしゃいました。

当時のCさんは口腔嚥下機能に大きな問題はなく何でも召し上がっていました。特に甘いものがお好きで、館内の自動販売機で炭酸飲料を買うのが楽しみ。機能訓練指導員も心得ていて「今日は気がのらない」と渋るCさんに「お買い物に付き合います」と歩行を促す口実にしていたようです。

この時、Cさんが抱えていた問題は「甘いものの食べ過ぎ」でした。ある時、体重増加が大きいことをきっかけに間食を見直してみると、炭酸飲料はもちろんのこと、受診などで外出する機会があるとお菓子を買い込んできていることが発覚。認知症も軽度で自己管理も可能でしたが、1日の摂取量が把握されていませんでした。

看護師からの要請もありおやつの管理が始まりました。私は情報収集不足を反省しましたが、一方でCさんの楽しみを奪うことになってしまうのではないかと心配になりました。Cさんにとっては間食で好きなものを食べることが生活の原動力になっていると感じていたからです。

そもそも、食事制限があるわけではないことから、楽しみや日々の張り合いを残す意味で1日分の菓子の数を決めることになりました。Cさんはやや不満そうにしながらも、毎朝お菓子箱からその日のおやつを選びます。一気に食べてしまう日、少しずつ食べる日、とさまざまでしたが、それもご本人の自由にしていただきました。体重増加も落ち着き問題解決となりました。

徐々に機能低下が進行し食べる動作にも影響

しばらく落ち着いていたCさんの病状ですが、気が付くとリハビリは歩行している時間より座って話をしていることが多くなっていました。
余談ですが、活動量の変化は栄養必要量の見直しのきっかけとなります。認知症のご利用者以外でも機能訓練指導員からの視点も重要な情報です。

さて、機能訓練指導員に話を聞くと、歩行状態が悪化しなかなか足が前に出なくなった、とのこと。また、辻褄が合わない発言や幻視幻聴が増えているようだということでした。
この時「訓練ではただおしゃべりしているだけじゃなくて、過去を思い出すことで脳を刺激しているんだよ」とも教えてもらい、会話をすることもリハビリにつながると知りました。
さらに、機能訓練指導員から「おやつの数が不満らしい」という情報も得られ、おやつが楽しみなことは変わっていないと安心し、Cさんとの面談を行いました。

Cさんは「おやつがもらえない」と悲しそうな表情。説明を試みましたがCさんには届かず、怒った口調で一方的に話し続けます。おやつの不満より、おそらく幻視幻聴による不安感を聞いてほしいのだと感じ、終始傾聴に努めました。この後も折を見ては面談しましたが、状況は変わりませんでした。

この頃からCさんは食事中にむせるようになってきました。また、食事は自力摂取していましたが、箸やスプーン、ストローの先がうまく口に入らないことが増えてきていました。
目標を「自力摂取を継続すること」に切り替え栄養管理を行いますが、レビー小体型認知症の特徴の1つであるパーキンソニズムが影響しているのか、なかなかうまくいきません。
リハビリ用の食器や食具を使ったり、手に持たせるところを介助したり、すくい取る介助を行ったりと状況に合わせて介助しますが、すっかり落ち着いた頃さらに機能低下の進行に気がつく、ということを繰り返しながら、徐々にCさんの機能は低下していきました。そしてCさんからは「もうダメ」という発言が多くなり、機能低下とともに意欲も低下していきました。

甘いもの好きは変わらないCさん

その後Cさんは内科的な疾患や転倒による骨折で入退院を繰り返し、あっという間に全身の機能低下が起こりました。退院ごとに入院中の食形態をもとに食事を調整していきます。病状は落ち着いていましたが、食事摂取量の低下が長引くこともあり、意思の疎通が難しくなったCさんの意向を汲み取ることはできずにいました。

ある日、Cさんの受診に付き添った看護師が「病状の1つとして嗅覚異常が出る場合があるようだ」と説明を受けたと教えてくれました。匂いがわからないと食事はおいしくない、とかかわるスタッフ全員が納得。Cさんに伝わっているかわかりませんが、食事介助での声かけなどで食事を意識できるよう心がけています。

甘いものがお好きだったCさん。現在は食事よりONSを提供している時の方が(わずかな変化ですが)口の動きがよく、「食べ物の好みは変わらないなぁ」と感じ、介助にお邪魔する時は「今日は○○味のプリンですよ」と説明しています。

冒頭でも紹介しましたが、現在のCさんは咀嚼が不十分で軽く口が動く程度です。発語も「うぅ」とうなるように声が出るだけで、舌の機能もかなり低下しているように思います。
また、全身の拘縮が進み、顎も上がりぎみであることから今後は食事姿勢の調整が課題です。

私の主観ですが、レビー小体型認知症の方は長くかかわると身体機能の低下がほかの認知症の方より大きいように感じます。特養がリハビリに特化した施設ではないこともあるのでしょうが、機能の変化を捉えた対応が必要であると思います。

先日Cさんの食事介助中に介護職員から話しかけられ、Cさんへの介助が中断した時がありました。少しお待たせしてしまったCさんからしびれを切らしたように「うぁ!」と声がかかりました。何となく「早くして」と言われたような気がして少しうれしくなりました。(『ヘルスケア・レストラン』2020年8月号)

横山奈津代
特別養護老人ホーム ブナの里

よこやま・なつよ
1999年、北里大学保健衛生専門学校臨床栄養科を卒業。その後、長野市民病院臨床栄養研修生として宮澤靖先生に師事。2000年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院に入職。同院の栄養サポートチームの設立と同時にチームへ参画。管理栄養士免許取得。08年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院を退職し、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里開設準備室へ入職。09年、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里へ入職し、現在に至る