病態に合わせて少量高エネルギーな経口栄養補助食品を活用する

高齢患者の食欲不振その背景には複合的な要因が

東京医科大学病院 栄養管理科 宮澤靖科長

東京医科大学病院 栄養管理科の宮澤靖科長

いくつもの高層ビルが建ち並ぶ東京都西新宿。その一角に1931年から建つ東京医科大学病院は、2019年に新病院として生まれ変わり、厚生労働省認定の特定機能病院として高度な医療の提供に努めている。
「全体的に循環器や呼吸器、消化器疾患の方が多いでしょうか。また、大学病院という性格上、感染症の方も多いと思います」と語るのは、同院栄養管理科の宮澤靖科長。同院に着任して約1年。新病院オープンの準備に奔走しながら、管理栄養士の病棟常駐体制構築に向けて試行錯誤を繰り返している。

「実際に病棟を回ってみると、食欲不振の方が多く見られます。もともとご高齢で食が細く、ベッド上から動かないで毎日を過ごすため食欲が低下。加えて、入院生活という環境変化が不安につながりさらなる食欲低下を招いているという背景があるのですが、病態を詳しくみていくと、なおさまざまな要因が複合していることがわかります」

治療や手術の侵襲などによる倦怠感、心不全や胸水などによる呼吸苦、薬剤の副作用など、多様な病態が影響し、食欲不振となっていることもあるという。

「私たち管理栄養士は、病棟から食欲不振の情報提供があると、摂取量を調べて不足するエネルギー量分の栄養補助食品を付加して解決としがちです。しかし、それでは食欲不振の解決につながらず、低栄養のリスクを高めてしまうことになりかねません」

まずは食欲不振の原因を追究し、それを除去する方法を模索すること。それがファーストステップだという。その結果、呼吸苦などが原因で一度に多くの量を摂取すると苦しくなるような状態の場合、少量高エネルギーな経口栄養補助食品が有効である。宮澤科長がそのために最適な製品として薦めるのが、テルミール(R)アップリードTM(テルモ、以下アップリード)だ。

ベッドサイドでの経過観察が食欲不振解決への道

アップリードは、1パック(100ml)当たり400kcalと高濃度な組成の経口栄養補助食品。3大栄養素と微量栄養素がバランスよく配合されているうえ、たんぱく質が100ml当たり14.0g、BCAAが100ml当たり1,640mg、含有脂肪酸(21.6g)のうちの30%を中鎖脂肪酸が占めており、長期的には術後の在宅療養を見据えたリハビリテーションにも有益な内容となっている。味のバリエーションはさわやかなりんご風味とサワー風味の2種類。物性は約10,000mPa・sという嚥下調整食学会分類2013の中間のとろみ程度となっており、嚥下調整食の提供患者でも摂取可能となっている。

「アップリードはリキャップ可能な点が特長です。1日かけて少しずつ飲んでいただければ、それだけで400kcal摂取できます(図1)。当院の場合、朝食のトレーにアップリードを付けて提供し、食間など自由に好きなだけ摂取してくださいとお伝えするようにしています」

アップリードの提供方法例

もちろん、アップリードを提供したからといって、すぐに摂取量が向上するわけではない。しかし、まずは1日1パック摂取することが患者の自信につながる。1パック摂取できたら、次は1日2パックというように3~5日間かけて摂取量をステップアップしていけば、無理なく目標エネルギー量へ近づくことができるという。

「りんご風味とサワー風味の2つの味があるので、1日1パック提供する場合には日替わりで味を変え、1日2パック提供する場合には2つの味を提供すれば、飽きずに摂取可能です。また、アップリードには1パック50mlで200kcalのミニサイズもあります。こちらは400kcalでは多いというご高齢の方に提供しています」

また、高齢患者の多くはさまざまな薬剤を服用しているが、なかには内服する際の水だけでお腹が膨れて食べられなくなってしまうこともあるという。そのような場合、内服用の水代わりにアップリードを使用すれば、多少なりともエネルギーの摂取につながる。水の代わりに高濃度な栄養食品を用いて薬剤を内服する方法をメドパスと呼び、宮澤科長がかつて臨床栄養管理を学んだアメリカではごく当たり前に行われている方法だという。

さらにアップリードは、PFCバランスにおいて脂質の割合が高いため(図2)、呼吸商の低い食品が望まれる慢性閉塞性肺疾患の患者や、血糖上昇しにくいことから糖尿病患者の栄養管理にも適しているかもしれないと、宮澤科長は考えている。

アップリードの標準組成

「いずれにしろ、ベッドサイドで患者さんの状態を経過観察し、きめ細かく対応していくことが必要です」と宮澤科長。たとえば、医師から血圧の高い高齢患者に対して減塩食のオーダーがあった場合、そのまま減塩食を出すのではなく、まずは該当の患者のベッドサイドを訪問し、どれだけ食べられているのか、食べられていないのならそれは何が原因なのか、突き止めることだと強調する。

「ご高齢の方であれば、多少血圧が高いのは珍しくありません。食事摂取量が半分以下なのであれば、常食を提供すれば塩分摂取量も半分ですから問題はないでしょう。それよりも味の薄い減塩食を提供した結果、おいしくないと食欲不振になるほうが低栄養のリスクを高めることにつながります。ご高齢患者さんの場合、制限ではなくまず食べていただくこと。栄養補助食品をご提供するのであれば、製品の組成も大切ですが、まずはその製品が食べていただけるきっかけとなるかどうか、その観点から選択することが大事でしょう」(栄養経営エキスパート 2020年5・6月号)