社会保障短信(8月7日号)

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トピックス…小児・周産期や診療報酬改定施行時期の議論が進む
ひとこと…介護従事者の処遇改善について
今週の数字…1997円

トピックス:小児・周産期や診療報酬改定施行時期の議論が進む

▼診療報酬改定施行を6月から
中央社会保険医療協議会総会は8月2日の会合で、「小児・周産期」と「医療DX」をテーマに議論した。小児・周産期は施設・機能の集約化の状況が報告されたほか、医療的ケア児への対応やハイリスク妊婦への支援の評価などが議題に挙がった。

また医療DXは診療報酬改定施行時期を後ろ倒しにして6月からとする案が取り上げられ、取り組みスケジュールなどを示した。

▼低体重の出生児が増加
小児医療では、外来体制、入院医療、高度急性期体制、医療的ケア児の支援体制などが議題に挙がったが、その背景も紹介された。

15歳未満の人口は2005年で1758.5万人だったのに対し、2022年は1503.1万人で、14.5%減少している一方で、外来患者は医科で2005年の62.5万人に対して2022年は60.1万人と、3.8%減にとどまっている。
また出生時体重別出生数と出生割合を見ると、1975年で出生数が約190万人、うち出生時体重2500g未満の出生児割合は5.1%。2013年は出生数が約103万人、うち出生時体重が2500g未満の出生児割合は9.6%。2020年は出生数が約84万人、うち出生時体重が2500g未満の出生児割合は9.2%となっていた。

1975年から約40年あまりは出生数が減少する一方で低出生体重児の割合が増加しているが、この10年ほどは横ばい傾向が続いていることになる。

▼時間外対応加算要件が課題
こうした状況のなかで、小児外来診療の評価については、小児かかりつけ医の機能を評価する方向で進めている。2022年度診療報酬改定では、「小児かかりつけ診療料1・2」の施設基準に時間外対応加算1~3の届出を行っていることを追加している。ただし、算定状況は初再診料・外来診療料における6歳児未満の小児の算定回数と比較して10%にとどまっていた。

施設基準を届け出ていない理由としては、▽小児科医の配置にかかる要件を満たせない、▽在宅当番医等への参加にかかる要件を満たせない、▽時間外対応加算1・2にかかる要件を満たせない――が多かった。

たとえば時間外対応加算はもともと病院勤務医の負担を軽減させることがねらいの一つになっている。医師の働き方改革推進との兼ね合いもあることから、この要件を緩くすることは考えにくいだけに、今後の議論が注目される。

▼精神科との連携に注目
周産期医療についての議論では、ハイリスク妊産婦が増加している状況が紹介された。高齢出産が増加しており、母胎年齢別で見ると35歳以上が全体の30%を占める。これに伴い、合併症の頻度が増加し、3人に1人が何らかのリスクをもつ状況になっているという。

また妊娠中から収入基盤が安定しないなど家庭環境におけるハイリスク要因を有していたり、若年であったりといった社会的ハイリスク妊産婦も15.5%を占めるといった報告(「ハイリスク妊婦の把握と保健・医療の連携による妊娠期からの切れ目ない支援の構築のための研究」光田信明)も紹介された。

診療報酬ではハイリスク妊娠管理加算、ハイリスク分娩管理加算などのほか、精神疾患を有する妊婦などを対象に、精神科・心療内科の医師に紹介した場合に算定できるハイリスク妊産婦指導料を用意してきた。同指導料の算定回数は増加傾向にあり、2018年に月108回だったのが、2022年は306回に増えていた。

▼薬価改定は4月実施を維持
診療報酬改定施行時期の後ろ倒しについては、改定施行を現行の4月から6月にずらす案が出ているが、今回はその具体的な日程も示された。6月1日に施行、7月10日に初回請求することになる。

作業が短期間に集中するとの指摘が出たベンダーの作業内容は、①改定前年12月から翌年3月上旬にソフトウェア回収への影響を見きわめ、②3月~5月いっぱいにかけて窓口負担金計算向け対応、③4月~7月に初回請求向け対応④同時期に疑義解釈、変更通知等発出――となる。

経過措置は従来どおり9月末までを基本とする。

薬価改定は毎年実施されていることもあり、薬価調査の実施~翌年度に改定を行うというサイクルを崩すことは「薬価制度の根幹を揺るがす」との指摘が出たことから、4月改定施行を維持する。

ひとこと:介護従事者の処遇改善について

「小規模事業者は経営が厳しくて、事務職員も少なくて大変であるということは理解していますが、今回の調査への回答率も低いですし、賃金も特別高くない。取れる加算についても、事務の煩雑さの理由で消極的ということでございますと、その事業所で働いている職員の方たちにこういった施策の効果が行き渡らない形になります」
松本庄平
独立行政法人福祉医療機構経営サポートセンターリサーチグループグループリーダー
~2023年6月16日 第37回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会

今週の数字:1997円

2022年10月時点での、病院給食の委託契約単価(患者一人あたり/日)。2015年10月と比べると321円増。患者一人あたりの入院時食事療養費(/日)は1998年より1920円であることを踏まえて単純計算すると、病院の給食部門は赤字ということになる。(出典:日本メディカル給食協会「2024年度(令和6年度)診療報酬改定に係る入院時食事療養費の見直し要望について」添付資料2023年6月30日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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