第16回
オンライン資格確認導入の義務化で考える
医療提供体制における公・民のあり方
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6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)では、医療DXの推進が強調されている。政府に、首相を本部長とする「医療DX推進本部(仮称)」を設置し、「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」などを進める方針を示している。
その「第一歩」と位置づけられるのが、オンライン資格確認導入の義務化だ。骨太の方針では、オンライン資格確認について「保険医療機関・薬局に、2023年4月から導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す。2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」と記載された。
厚労省ではオンライン資格確認の導入専用サイトをつくって普及を進めている
8月3日の中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では後藤茂之厚生労働相から、「医療DXの基盤となるオンライン資格確認の導入の原則義務付けおよびこれに伴う診療報酬上の加算の取り扱いについて」諮問を受けた。医療DXの基盤整備に関する議論の開始である。
一方、この日の中医協総会には、7月24日時点での医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入状況が示された。これによると、顔認証付きカードリーダー申込数は、病院で81.0%、医科診療所で49.9%、歯科診療所で52.4%、保険薬局で84.4%。全体でも61.0%にとどまる。
運用開始施設数となると、全体で25.8%にとどまり、病院41.8%、医科診療所17.4%、歯科診療所17.8%、保険薬局45.1%という状況だ。
こうした状況で、来年4月に原則義務化が可能か、疑問が残る。とくに医科の場合、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いの真っただ中で、オンライン資格確認導入にまで手が回らないというのが実情だろう。経済的な負担の問題もまた、存在する。
コロナ禍で、民間医療機関がCOVID-19診療に及び腰だという指摘があったことを覚えているだろうか。日本の医療は、民間医療機関が下支えしているという現実。これは、国などによる医療機関の整備が追いつかず、民間の手に委ねてきたことに遠因がある。このため、有事にも強制的な指示、命令ができず、さまざまな課題解決の場面で機能不全が指摘されてきた。
今回の問題もまた同様だ。結果的に「補助金」という方法に頼らざるを得ず、非効率このうえない。
とはいえ、いきなり全部国有化しろと言ってもそれはできない相談だ。そろそろ、医療提供体制における公・民のあり方について、抜本的な見直しをするべきではないか。地域医療構想も働き方改革も、すべてはここがボトルネックになっているのだから。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)