第15回
リフィル処方箋をめぐる確執

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消えた「医療費削減+患者の利便性≠質の高い医療の提供」の主張

2022年度診療報酬改定で、ついにリフィル処方箋が認められることになった。開始から3カ月あまり、まだまだ普及しているとは言い難い状況だ。

そもそも、リフィル処方箋が厚生行政のなかで初めて取り上げられたのは、今から10年以上前、2010年3月のこと。以降、骨太の方針や財政制度等審議会財政制度分科会の建議などで、毎回のように取り上げられてきた。
主に財務当局や保険者サイドが、慢性疾患患者の受診回数減による医療費の削減効果を狙ったもので、患者にとっての利便性も訴えていた。

これに対し、日本医師会(日医)は基本的に「絶対反対」の立場を貫いてきた。医師による定期的な経過観察は、質の高い医療の提供には絶対に欠かせないものであり、リフィル処方箋ではそれが困難だという主張だ。

ところが、22年度診療報酬改定を前に、改定率を決める財務相と厚生労働相の折衝の後に出された文書で、
「リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進による効率化▲0.10%(症状が安定している患者について、医師の処方により、医療機関に行かずとも、医師および薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる、分割調剤とは異なる実効的な方策を導入することにより、再診の効率化につなげ、その効果について検証を行う)」
との文言が書き込まれた。

財政制度分科会(令和4年4月13日開催)資料より

確かに、22年度改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の議論のなかでも、リフィル処方箋について触れたこともあった。
しかし、改定のたびに診療側が絶対反対、支払側が積極導入を訴える「恒例行事」となっていたこともあって、やや唐突な印象を受けた。当然、日医には事前の根回しがあったはずで、なにがしかの条件を付けて了解していたものと考えられる。

患者からリフィル処方箋を求められたとき、医師は…?

今年4月、日医の松原謙二副会長(当時)が、大阪府地区医師会役員に宛てた文書を出した。リフィル処方箋について「診察を省略して、患者の希望と薬剤師の判断に任せる」ことで、医師としての処方権を放棄したも同然などと記されていたという。
また、中川俊男会長(当時)が、プラス改定とのバーターでリフィル処方箋を受け入れたとも主張していた。

6月に行われた日医の役員選挙では、再選を目指していた中川氏が立候補を断念。中川執行部で常任理事だった松本吉郎氏と、副会長だった松原謙二氏が立候補し、松本氏が当選、新会長に就任した。リフィル処方箋をめぐる意見の対立も、その結果に大きく影を落としたのではないだろうか。

結果的に、日医はリフィル処方箋を「容認」することになった。
今後、患者への普及・啓発活動が盛んに行われるだろう。患者からの求めに対し、医師は否定できるのか。まだまだ発行件数はごくわずかだが、一人ひとりの医師に、その問いが突きつけられているといえるだろう。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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