第13回
「外来機能報告制度」と「感染対策向上加算」に見る厚労省の思惑
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地域の医療機関の外来機能を明確にし、連携強化へ
昨年(2021年)5月、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が成立・公布された。
このなかで、地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるための外来機能報告等が位置づけられ、今年4月に施行された。
目的は、「地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため」。そのために、
①医療機関が都道府県に外来医療の実施状況を報告(外来機能報告)する
② ①の外来機能報告を踏まえ、「地域の協議の場」で、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行う
という手順を踏む。
その後、①・②で、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関(紹介受診重点医療機関)」を明確化する。それを医療機関が外来機能報告で報告し、国の示す基準を参考にして、地域の協議の場で確認することにより決定する。
ところで、「医療資源を重点的に活用する外来」(重点外来)とはどのようなものなのか。
報告書*では、
▽医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(悪性腫瘍手術の前後の外来など)
▽高額等の医療機器・設備を必要とする外来(外来化学療法、外来放射線治療など)
▽特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来など)
の3つの類型を挙げている。さらに、重点外来を地域で基幹的に担う医療機関を紹介受診重点医療機関とし、明確化した。
そのうえで、「かかりつけ医機能を担う医療機関」と「紹介受診重点医療機関」がお互いに紹介・逆紹介という形で連携していくことになる。
外来機能報告等に関する報告書(参考資料)(厚生労働省、2021年12月17日)
外来機能報告の対象医療機関は、病院と有床診療所。ただし、高額な医療機器等による検査を集中的に実施しているなど該当する可能性が高く、かつ、希望する無床診療所は対象とすることができる。
紹介受診重点医療機関の選定は「地域の協議の場」で決定されるが、その際の基準は「初診に占める重点外来の割合40%以上かつ再診に占める重点外来の割合25%以上」「紹介率50%以上で逆紹介率40%以上」の2つ。
協議の場での協議は、2023年1月から3月にかけて行われる見込みだ。ここで合意ができれば、3月末までに都道府県が紹介受診重点医療機関を公表することになる。
*外来機能報告等に関するワーキンググループ「外来機能報告等に関する報告書」
実際に進むのは地域連携か、
かかりつけ医療機関の奪い合いか
22年度診療報酬改定では、「紹介受診重点医療機関入院診療加算」が新設された。重点医療機関では「入院機能の強化や勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上する」ことから、入院初日に800点を算定できる。
また、重点医療機関は「初診料および外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定」の対象ともなった。「紹介割合50%未満または逆紹介割合30% 未満」の場合に減算となる。
入院初日に800点という加算は大きい。一方で減算の可能性もあるため、重点医療機関に名乗りを上げた医療機関は、紹介率・逆紹介率の確保・維持に必死とならざるを得ない。結果的に連携が進むという見方もできるが、かかりつけ医療機関の「奪い合い」となる可能性もある。
一方で、22年度診療報酬改定で、外来感染対策向上加算が新設され、感染対策向上加算(1~3)と併せて体系化された。感染対策向上加算1の届け出医療機関を中心に、同加算2・3の届け出医療機関、外来加算の届け出医療機関が、感染対策の面で連携することに対する評価だ。
同加算1は地域の中核病院が想定されており、同加算2・3は中小病院、外来加算は無床診療所が想定される。これはそのまま、重点医療機関、それ以外の病院、かかりつけ医という関係と重なる部分が大きい。
外来機能報告制度と感染対策向上加算の2つには、地域医療構想実現という厚労省の意図を、強く感じざるを得ない。(文/ヘルスケア・マネジメント.com)