第12回
病床機能分化の強化で迫られる戦略的病棟展開
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急性期一般入院料1からこぼれ落ちる内科系患者
2022年度診療報酬改定は、3月4日に官報告示された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下での初めての改定となる。そうしたなかでも、事前の想定に比べ、抜本的で大幅な改定項目が目についた。
とりわけ急性期、回復期の入院医療については、厚生労働省の考える「機能分化」が前面に押し出されていたと考えられる。
具体的には、急性期一般入院料1の届け出病棟は、手術等を伴う患者を入院させるベッドと位置づけ、内科的な患者は、急性期一般入院料2から同6までの病棟や、地域包括ケア病棟で対応するということだ。
まず、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」のA項目で、心電図モニターの管理が除外され、「点滴ライン同時3本以上の管理」が「注射薬剤3種類以上の管理」に改められた。
主に内科系の患者が多い病棟では、該当患者割合を満たせなくなるとして病院団体などから危惧の声が上がっていた。
出典: 03 令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅰ(急性期・高度急性期入院医療)(厚生労働省)
しかしこれは、厚労省の明確な意図のもとで実施された改定である。急性期一般入院料1は、手術などを予定する重症度の高い患者を対象とすべきで、内科的な入院は入院料1で診るべきではないと言っているのだ。では、内科的な入院はどこが担うというのだろうか。
中等度・軽度の救急を担う地域包括ケア病棟
その答えの1つが、地域包括ケア病棟だ。22年度改定では、一般病床から届け出る場合は「第二次救急医療機関であることまたは救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院であることを要件とする」とされた。ただし、200床未満の保険医療機関については、当該保険医療機関に救急外来を有しているまたは24時間の救急医療提供を行っていることでよいとした。
ほかにも、入院料等1・3における自宅等から入院した患者割合の要件については1割5分以上から2割以上に、自宅等からの緊急の入院患者の3月の受け入れ人数については6人以上から9人以上に、それぞれ変更された。
療養病床から届け出る場合、所定点数の95%を算定するとされたが、その除外要件(100%算定)として
①自宅等からの入院患者の受け入れが6割以上
②自宅等からの緊急の入院患者の受け入れ実績が前3月で30人以上
③救急医療を行うにつき必要な体制が届け出を行う保険医療機関において整備されている
のいずれかを満たすものとされた。
中央社会保険医療協議会(中医協)での議論では、地域包括ケア病棟について、ポストアキュート(急性期を経過した患者)に偏っている医療機関を「問題視」する意見があり、サブアキュート(在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者)や在宅復帰支援の機能とのバランスを重視した要件の変更となっている。
つまり、在宅患者の急性増悪や高齢者救急など、中等度・軽度の救急は、地域包括ケア病棟が担うよう誘導しているわけだ。
ただし、高齢者救急をすべて地域包括ケア病棟で診られるのかというと、現状では困難だ。長期的には、急性期一般入院料1を大幅に減らし、その分で地域包括ケア病棟を整備していくという考え方ではないだろうか。
支払側や厚労省は、今でも入院料1が多すぎるというのが本音であることは間違いない。それを踏まえたうえで、戦略的な病棟展開を、地域のなかで考えていくことが求められるのではないか。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)