第11回
揺らぐ中医協の存在意義
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「重症度、医療・看護必要度」は今回も公益裁定に
1月26日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の総会では、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度に係る評価項目および該当患者割合」「オンライン診療に係る算定要件、施設基準および点数水準」について、支払側、診療側それぞれの主張が平行線のまま折り合いがつかず、最終的に公益裁定で決着した。
ここ何度かの診療報酬改定では毎回、公益裁定が適用されている。とくに一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」については、2018年度診療報酬改定、20年度改定、そして今回の22年度改定と、3回続けて公益裁定に持ち込まれているのだ。
公益裁定とは、支払側、診療側の意見の隔たりが埋まらないとき、公益委員が中立・公正な立場から決定すること。中医協は、支払側7人、診療側7人の委員がおり、加えて小塩隆士会長はじめ6人の公益委員が在籍しており、ほとんどが経営学や経済学の研究者。分科会等の会長も、公益委員が務めている。
昨年7月の中医協総会で、公益委員をめぐってひと悶着があった。調剤をテーマとしたキックオフの会合で、公益委員から、「規模や後発医薬品の割合などで患者負担が異なる現状は再考すべき」「大型門前薬局の調剤基本料を下げると患者負担が低くなり、目的とは逆のインセンティブが働く」などの意見が示されたのだ。
これに対し診療側の委員は、「持論があるのはいいが、それを発言されると議論の流れをつくりかねない」と反発。支払側委員も巻き込んで、その場が紛糾した。
強まる外圧と弱体化する中医協
2月2日の中医協総会では、日本医師会常任理事の城守国斗委員が、中医協での審議のあり方に苦言を呈した。
ひとつは、診療報酬に対して中医協以外の会議の影響力が増していること。中医協の役割について「中医協では社会保障審議会医療部会と同医療保険部会が作成した改定の基本方針を踏まえ、医療技術などの評価について、エビデンスに基づいて有効性と安全性を確認して保険財源を勘案して保険収載の可否を判断すると同時に、その技術が安全かつ適切に行使されるために算定要件や施設基準を決定している」と定義づけ。医療政策色の強いテーマについては中医協の外で一定の方針が決められることはあったとしたうえで、「近年は中医協の外で詳細な制度設計まで言及されるテーマが散見される」と指摘。中医協の権限が相対的に縮小しているのではないかとし、危機感を訴えた。
また、中医協の議論のなかで「利便性」が重視されつつあるとし、「もちろん利便性は重要だが、中医協で保険適用の可否を審議する際に最も重要な判断基準は、エビデンスに基づいた有効性と安全性だという認識を各委員には改めて強く認識してほしい」と訴えた。
中医協はそもそも、保険者と医療機関の代表が、値決めをする場だった。それが国民皆保険の成立とともに、医療政策を支える場としてのあり方に比重が移ってきている。公益委員に対する厳しい視線、中医協の権限の縮小、利便性の重視といった流れに対する診療側の焦りが、そうさせているのではないだろうか。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)