第7回
今、治療用アプリはどこまで進んでいるのか

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初めて保健収載されたニコチン依存症治療用アプリ

デジタルヘルスという言葉も、最早聞きなれてきた感があります。では、「治療用アプリ」はいかがでしょうか。実は、昨年12月に、治療用アプリが初めて保険収載されていたのです。

健康管理をサポートするスマートフォンなどのヘルスケア・アプリは、いくつか商品化されています。血圧管理や禁煙サポート、運動管理などが行えるものです。これに対して、アプリを治療に活用しようというのが治療用アプリです。

昨年12月、「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」(CureApp SC)が保険収載されました。株式会社CureApp慶應義塾大学が共同開発したもので、治療用アプリとしては初めてのことです。

CureApp SC

「CureApp SC」は、治験を実施し薬事承認を受け、保険収載されました。
医師が診断したうえで必要な患者に「処方コード」を発行します。患者はアプリをダウンロードし、処方コードを入力すると、使用可能になります。
患者は、COチェッカーを使いながら日々の健康状態や検査値などのデータをアプリに記録します。「CureApp SC」は、記録をもとに、患者の行動変容を促すための対処方法をアドバイスします。喫煙欲求が高まったときの対処法、患者に適した禁煙テクニックなどです。

CureApp SC使用例

一方、記録は医師のもとにも残されます。受診にあたってあらかじめ記録を見ておけば、より効率的で質の高い診療が可能となります。
受診と受診の間はこれまで、治療の空白期間となり、生活習慣改善は患者の意識次第でした。それが、アプリ活用でフォローアップできるようになったのです。

保険点数は、在宅振戦等刺激装置治療指導管理料導入加算(140点)と、疼痛等管理用送信機加算(600点×4回=2400点)の、合わせて2540点を算定します。

「CureApp SC」を開発、販売している株式会社CureAppは、治療用アプリ開発のトップランナーで、自治医科大学と共同で開発した高血圧治療アプリを、今年5月に薬事申請しています。さらに、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療アプリを東京大学と、アルコール依存症治療アプリを久里浜医療センター岡山市立市民病院と、それぞれ開発中です。

生活習慣病・慢性疾患など続々と進む治療用アプリ開発

治療用アプリの開発は、CureApp社以外でも進められています。サスメド株式会社では、久留米大学をパートナーに不眠症治療用アプリを、国立がん研究センターをパートナーに乳がん治療用アプリを開発中です。そのほか「ACP」「腎臓病」「遷延性悲嘆障害」「オピオイド誘発性便秘症」について、研究が進められています。

株式会社Save Medicalは、大日本住友製薬と共同で、2型糖尿病管理指導用アプリを開発、現在治験が行われています。2型糖尿病についてはアステラス製薬テルモでも、治療用アプリの開発が進められているようです。
そのほか塩野義製薬は注意欠如・多動症(ADHD)、田辺三菱製薬はうつ病を対象に、それぞれ治療用アプリ開発が行われています。

治療用アプリは、2014年の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)改正により、予防・診断・治療を目的としたソフトウェアやアプリが、医療機器に該当するとされたことで、開発が始まりました。アメリカでは10年にWelldoc社の糖尿病治療アプリが承認されており、遅れること10年、やっと治療用アプリが承認されたことになります。

治療用アプリは、薬と違って副作用がなく、研究開発のコストや期間も圧縮できるというメリットがあります。とくに生活習慣病や慢性疾患については、今後治療用アプリが続々と発売されるでしょう。同じ疾患の治療用アプリが、何社もからリリースされ、競争が発生することになるでしょう。

治療用アプリ普及に向け、かかりつけ医は今から準備を

治療用アプリの主戦場は、おそらく生活習慣病です。それは、まさにかかりつけ医が取り扱うテリトリーです。これまでに触れたものだけでも、糖尿病や高血圧症治療用アプリが治験段階に入っている模様で、2~3年後には競争が始まっている可能性が高いのではないでしょうか。

現在の高齢者は、スマートフォンになじみのあるのは少数派かもしれません。しかし、今の40代、50代が高齢者になって生活習慣病の治療を受けるようになれば、治療用アプリは急速に浸透し、拡大していくのは間違いないでしょう。とくにかかりつけ機能が中心の医療機関は、今から準備を進めておく必要があるでしょう。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

*本文画像提供:株式会社CureApp

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