改正医療法の波紋が地域医療に与える影響に着目せよ

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着々と進む医師の働き方改革の法整備

厚生労働省は5月28日付で、「『良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律』の公布について(通知)」を、都道府県知事や保健所設置市長、特別区長に宛てて通知した。5月21に可決、成立した同法(改正医療法)が28日に公布されたことを受け、改正内容を整理したものだ。

改正の趣旨として「医師の長時間労働等の状況に鑑み、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するため、医師の労働時間の短縮および健康確保のための制度の創設、各医療関係職種の業務範囲の見直し等の措置を講ずるとともに、外来医療の機能の明確化および連携の推進のための報告制度の創設、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取り組みに関する支援の仕組みの強化等の措置を講ずること」と記されている。

具体的な改正事項ではまず、「医師の働き方改革」が挙げられる。「長時間労働の医師の労働時間短縮および健康確保のための措置の整備等」として、医師に対する時間外労働の上限規制の適用開始(2024年4月1日)に向け、以下の措置を講じるとしている。

▽勤務する医師が長時間労働となる医療機関における医師労働時間短縮計画の作成
▽地域医療の確保や集中的な研修実施の観点から、やむを得ず高い上限時間を適用する医療機関を都道府県知事が指定する制度の創設
▽当該医療機関における健康確保措置(面接指導、連続勤務時間制限、勤務間インターバル規制等)の実施

医師の働き方改革の図
「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」第31回地域医療構想に関するワーキンググループ令和3年2月12日参考資料より(厚生労働省)

次に「各医療関係職種の専門性の活用」に関しては、医療関係職種(診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士)の業務範囲を見直し、タスクシフト/シェアを推進して医師の負担を軽減するとしている。また、医師養成課程を見直し、共用試験合格を医師国家試験の受験資格要件とし、同試験に合格した医学生が臨床実習として医業を行うことができるよう明確化した。

医療関係職種の業務範囲の見直しの図
「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」第31回地域医療構想に関するワーキンググループ令和3年2月12日参考資料より(厚生労働省)

進む病床機能の再編と不安の残る非常時の医療提供体制の確保

3つ目の「地域の実情に応じた医療提供体制の確保」では、以下の3点を示している。

①新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付け
医療計画の記載事項に新興感染症等への対応に関する事項を追加する。
②地域医療構想の実現に向けた医療機関の取り組みの支援
2020年度に創設した「病床機能再編支援事業」を地域医療介護総合確保基金に位置付け、当該事業については国が全額を負担するほか、再編を行う医療機関に対する税制優遇措置を講じる。
③外来医療の機能の明確化・連携
医療機関に対し、医療資源を重点的に活用する外来等について報告を求める外来機能報告制度の創設等を行う。

地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組の支援の図
「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」第31回地域医療構想に関するワーキンググループ令和3年2月12日参考資料より(厚生労働省)

さらにその他として、持分の定めのない医療法人へ移行しようとする医療法人の移行に関する計画の認定の期限を、2023年9月30日まで延長するとした。

個々の医療機関、とくに診療所にとって、あまり身近には感じられないかもしれない。しかし、急性期の病院等では、医師の配置などに大きな影響が出ると考えられる。それが、医療界全体の医師の配置に響き、中小医療機関の医師の、非常勤も含めた採用に抑制がかかる可能性もある。地域におけるさまざまな「協議の場」での議論を注視しておく必要があるのではないか。

また、2020年度に創設した「病床機能再編支援事業」の地域医療介護総合確保基金への位置付けは、すでに今年度予算で措置されている。昨年から続くコロナ禍で、受け入れベッドが足りず医療崩壊が現実のものとなるなか、医療界からは予算措置に批判的な声が上がっていた。

今回法的に位置づけられたことにより、地域医療構想下での減ベッドの動きは、コロナ禍にかかわらず粛々と進むことになるのだろう。オリンピック、パラリンピックも粛々と開催されるようであるし、予想されていたことではあるが……。(文/ヘルスケア・マネジメント.com)