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第1回
厚労省が描く「地域共生社会」に未来はあるか

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この春にスタートした重層的支援体制整備事業とは

この4月から、「重層的支援体制整備事業」がスタートしています。「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」(改正社会福祉法)に伴うもので、「地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援」を行うものです。

厚生労働省は同事業の背景として「地域住民が抱える課題が複雑化・複合化しており、子ども・障がい・高齢・生活困窮といった分野別の支援体制では、複雑・複合的な課題や狭間のニーズへの対応が困難になっている」と指摘。従来の分野別の支援体制で、複合的な課題や狭間のニーズに対応するために、属性を問わず相談を受け止める窓口を設置する場合、各制度の補助金等の目的外使用と指摘されないように属性ごとのタイムスタディ等での按分処理が必要となり、市町村の事務負担の増大により実施しにくいとしました。
そのため、属性を問わず広く地域住民を対象とした「重層的支援体制整備事業」を創設。この事業を実施する市町村に対して交付金を一体的に交付することで、属性や分野を超えた取り組みを柔軟に実施可能となり、課題を抱える相談者やその世帯への包括的な支援や、地域住民等による地域福祉の推進を展開しやすい仕組みを導入するというものです。

同整備事業は、市町村全体の支援機関・地域の関係者が断らず受け止め、つながり続ける支援体制を構築することをコンセプトに、「属性を問わない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に実施することを求めています。
これを踏まえ、社会福祉法第106条の4第2項で「包括的相談支援事業」「参加支援事業」「地域づくり事業」を第1号から3号に規定し、それを支えるための事業として4項以下の「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」「多機関協働事業」を挙げています。主な3事業の具体的な内容は以下のとおりです。

【包括的相談支援事業】
 ▽属性や世代を問わず包括的に相談を受け止める
 ▽支援機関のネットワークで対応する
 ▽複雑化・複合化した課題については適切に多機関協働事業につなぐ

【参加支援事業】
 ▽社会とのつながりを作るための支援を行う
 ▽利用者のニーズを踏まえた丁寧なマッチングやメニューをつくる
 ▽本人への定着支援と受け入れ先の支援を行う

【地域づくり事業】
 ▽世代や属性を超えて交流できる場や居場所を整備する
 ▽交流・参加・学びの機会を生み出すために個別の活動や人をコーディネートする
 ▽地域のプラットフォームの形成や地域における活動の活性化を図る

地域共生社会の実現で期待される地域社会やNPOの役割
そして医療機関は?

これとは別に、厚労省は3月18日に「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」の報告書を公表しました。「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」は、「地域共生社会」を実現するための「システム」「仕組み」と位置づけています。
そのうえで、その考え方や実践は、地域共生社会の実現に資する各種の取り組みとの連携を図り、地域住民の複雑・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制の構築にも寄与するものであり、地域共生社会の実現に向かっていくうえでは欠かせないとしました。さらに、「重層的な連携による支援体制の考え方と構築」「普及啓発の推進」が、基本的な事項として挙げられています。

どちらの例にしても、地域社会やNPOなどの関与が重要視されています。「縦割り」の解消のために、自由度の高いこれらの人々が、隙間を埋め、接着剤的な役割を期待されているのでしょう。
 一方で、これまでの社会保障の仕組みが制度疲労を起こし、効果的に機能していないということでもあります。行政の仕組みを変えていく(=縦割りの克服)のと同時に、こうした公助にできるだけ頼らず、自助・共助で何とかしてほしい、という意図も、あるのかもしれません。
医療機関は今のところ、地域共生社会の「絵図面」のなかにはっきりとは組み込まれていません。精神障害に関して、わずかに触れられているだけです。しかしいずれ、こうした流れに組み込まれていくことは間違いないでしょう。その時に何をすべきか、今から検討しておく必要がありそうです。(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

▼参考資料など
「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会推進検討会)」の最終とりまとめ(厚生労働省)
地域共生社会のポータルサイト(厚生労働省)

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