栄養経営士になろう
入居者のQOL維持のためデータを有効活用
食べやすさが一目瞭然の「食事形態一覧表」作成で
家族への説明がスムーズに

食事内容の“見える化”で家族の理解が深まった。入居者情報のデータ化で自分の手で食べられない人にも早期に栄養ケアを実施できるようになった。

特養では家族への説明、理解が重要

埼玉県東松山市の特養「ふるさとの社 かみのもと」の入居者定員は100名。管理栄養士は2名で、リーダーは副主任の和多勝弘さん。2024年からこちらに勤めていて、栄養経営士の資格は、それ以前の2018年に取得した。

特養での管理栄養士の仕事は、咀嚼や嚥下機能が低下している人居者に、食べやすい形態の食事を提供し、栄養状態を維持すること。そして、食事については日常のケアの役割を担っている介護職員を含めた多職種や家族とコミュニケーションを保つことだという。
施設の食事は、業者がクックチルでつくったものを、厨房で入居者各個人向けの食べやすさに合うよう各食事形態に加工をしている。その形態は、咀嚼、嚥下能力に応じて「常食」から「ミキサー食」まで6段階(食事形態一覧表)、水分の「とろみ」については、どろっとした「濃いとろみ」から「極薄とろみ」まで4段階(とろみ一覧表)。そのほか、飲み込みやすいゼリーとジュレがある。

「食事形態一覧表」「とろみ一覧表」は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021を参考に作成

これらの写真つき一覧表は、和多さんが栄養経営士の視点でつくったもの。特養では入居者の家族とのコミュニケーションが重要で、どの形態の食事を選ぶかの説明で、この表があれば一目瞭然だという。
特に、食事の形態を上げる場合は誤嚥や窒息のリスクがあることを管理栄養士が直接、家族にメール等文書で説明し、同意を得られた場合のみ実施するという。和多さんがつくった、この「食事内容変更フローチャート」を見ると、形態を上げるパターン、下げるバターンともに本人の意向を確認後、介護職、看護職、ケアマネらと協議したうえで、家族に説明することになっており、誤嚥や窒息を防ぐための慎重な対応が読み取れる。また、病院から入退院時の食事情報の交換でも、この表をもとにやりとりするとスムーズということだ。

入居者情報データ化で低栄養リスクの人に早期介入

和多さんがつくったシステムとして、入居者の年齢、体重、身長などから必要なエネルギー量を割り出し、「栄養ケア計画書」と照らし合わせて、体重の推移を見える化したものがある。これによって低栄養リスクのある人に早期介入できるようになったという。
現在は2人の管理栄養士を中心にミールラウンドを定期的に行い、低栄養リスクが高い人は2週間ごとに各データをチェックしている。

「栄養ケア計画書」は介護報酬の栄養マネジメント強化加算算定に必要な国指定の文書だが、こちらの施設では、2021年度の改定以降、この加算を算定していなかった。
和多さんは、栄養経営士の視点から算定が必須と判断し、施設の方とも相談をし、要件となる管理栄養士の1名増員を実現させた。これにより、現在は入居者全員が栄養マネジメント強化加算の対象となり、月あたり約30万円が加算されている。
また、認知症や嚥下機能低下で口から食べることに困難がある人が対象の経口維持加算については、入居者のほぼ半分に適用されていて、月あたり約50万円の加算となっている。

口から食べることができても、認知症などで自分の手で食事を摂れない人は10人ほどだが、和多さんらは、介護職員の方々とともに食事介助に加わり、咀臀や嚥下について注意を払っている。自分の手で食べてもらうために、介護用自助具や自助食器の活用もし、スプーンやフォークを握りやすいように柄を太い物や、食材をすくいやすいように食べ口が曲がった物等を使用している。また、視覚的にわかりやすいように、主菜副菜を1つの皿にまとめるワンプレートにするという工夫もしている。低栄養リスクのある人については、「極力入院しないよう気を遣っている」といい、飲料タイプやゼリー状の栄養補助食品で早期介入することも多いそうだ。

最後に和多さんの心に残るエピソードを教えていただいた。以前に勤務した施設で、看取り段階の方に誕生日に合わせて、嚥下に配慮したムース食のケーキをつくり、とても喜ばれたことがあったそうだ。
「医療や栄養の面は、日々進化するので、栄養経営士は専門知識を生かして活躍できる」という和多さんの一言が印象的だった。(『ヘルスケア・レストラン』2026年4月号)

栄養経営士
和多勝弘さん

社会福祉法人一心会
特別養護老人ホーム ふるさとの杜かみのもと
副主任

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