ケーススタディから考える診療報酬
第46回
身体的拘束最小化見直しの影響

2024年度診療報酬改定では入院基本料の通則に加わった「身体的拘束の最小化に関する体制」ですが、26年度改定ではさらに一歩進んだ取り組みが求められるようになり、関係する加算の見直しや新設があるようです。今回は、いつものケース紹介ではなく、「身体的拘束の最小化に関する見直し」に係る内容を踏まえ、今後検討しなければならない病棟マネジメントの視点について解説していきたいと思います。なお、執筆時は答申が出た直後(2月13日)のため、今後の告示・通知や疑義解釈を含めた詳細な診療報酬改定情報は反映されていませんのでご了承ください。

押さえておきたいポイント3点

2026年度改定で、現状明らかになっている「身体的拘束の最小化に関する見直し」で押さえておきたいポイントは、3点あります。

①入院基本料の通則の見直し:

「相当な実績」または「適切な取組」が追加

②認知症ケア加算の見直し:

点数の見直しと身体的拘束を行った際の減算割合引き上げ

③新たな加算の新設:

療養病棟や地ケア等で算定できる「身体的拘束最小化推進体制加算」の登場

身体的拘束最小化に向けた取り組みについて一歩踏み込んだ内容となっており、特に、院内の身体的拘束に対する実績要件が盛り込まれた点が“新しい”と感じています。

身体的拘束の最小化に「実績等に係る基準」

入院基本料通則に「相当の実績がある」または「適切な取り組みを行っている」という実績等の基準が必要となります。相当の実績は「院内で身体的拘束の割合が15%以下(計算方法)」と答申で示されており、これを満たせない場合には「身体的拘束の最小化に向けた具体的な取組を検討するための委員会を3ヵ月に1回以上」等の取り組みが求められます。

これまで、認知症ケア加算を算定しているなど医療の質のみならず経営の質改善に取り組んできた医療機関にとっては、「院内で15%以下」という要件のクリアは難しくないと思われますが、これから示す認知症ケア加算の見直しを含めて、さらなる改善が望めるかどうかといった、日常的な検討は重要です。ちなみに、身体的拘束割合の計算方法では「身体的拘束としない場合」についても言及していますので、今後の疑義解釈と合わせてご確認ください。

認知症ケア加算は減算に注意

認知症ケア加算の見直しで点数は全体的に引き上げられましたが、身体的拘束を行った際の減算の割合が6割減から8割減と引き上げられています。言うまでもなく、身体的拘束を行った場合の収入に与える影響は大きくなっていますので、これまで以上に、「身体的拘束をしない方法」を現場で日常的に検討する重要性が増しています。

とはいえ、決して十分ではない医療従事者数ですべての患者に身体的拘束を行わないという決断をすることが医療安全上難しいということも少なくないでしょう。医療安全に考慮しながら患者に寄り添う医療従事者の気持ちも踏まえて、全国的に減算されるケースが少なくなる取り組みが進んでいくことを期待したいと思います。

療養や地ケアでは新設加算の検討を

診療報酬改定の議論でたびたび問題視されていた「急性期ではない病棟で行われる身体的拘束」について、急性期以外の病棟で身体的拘束の最小化の取り組みを行っていることを評価する加算「身体的拘束最小化推進体制加算40点(1日につき)」が新設されることになります。現時点では、細かな届出の条件等については明らかになっていませんが、毎日算定できる加算として小さくない点数となっていますので、に示した入院料を有する医療機関の皆様は、ぜひ積極的算定に向け検討していただきたいと思います。

表 身体的拘束最小化推進体制加算の対象となる入院料

●療養病棟入院基本料
●障害者施設等入院基本料
●有床診療所療養病床入院基本料
●地域包括ケア病棟入院料
●特殊疾患入院医療管

このように今回は3点の「身体的拘束の最小化に関する見直し」をご紹介しました。26年度改正のスタートは6月からですが、この身体的拘束の最小化を進める風土づくりは一朝一夕に行えるものではありません。今から少しずつご検討いただけることをお勧めいたします。(『最新医療経営PHASE3』2026年4月号)

結論

身体的拘束の最小化は日常的な対策から!
「拘束をしない」という文化形成を

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング