栄養経営士になろう
「病棟担当制」が定着し、
GLIM 基準導入で 栄養指導件数も倍増

新しい栄養管理体制をつくるためにGLIM基準を導入し、管理栄養士が病棟で活動しやすい環境になりつつあり、多職種との連携の大切さを再認識している。

2021年から病棟担当制をスタート

埼玉県の川口市立医療センターは、13病棟510床の地域で中心的な急性期病院で、臨床栄養科の管理栄養士はバートを含め12名。うち3名が栄養経営士という体制。リーダー的存在の芳野多香子さんは、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、がん病態専門管理栄養士、診療情報管理士、介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格も持ちカバージャンルが広い。

以前は入院患者の栄養管理に明確な指標がなかったが2024年9月にGLIM基準を導入した。これにより、管理栄養士の病棟で患者に関わる機会が増えた。ただ、そのためには、他職種との人間関係構築などの地道な積み重ねがあったという。

管理栄養士の病棟担当制は2021年から実施し、カンファレンスに参加することで、他職種との交流が増え、患者情報の共有もりアルタイムに容易になった。また、嚥下関係の資格をもつ芳野さんは、院内の摂食嚥下支援チーム立ち上げを主導し、副院長でもある看護部長から、摂食嚥下支援チームの必要性の理解を得た。

従来の栄養管理体制にGLIM基準を導入するには、いくつかハードルがあった。特に病棟業務の中心となる看護師の理解だ。入院時のスクリーニングで低栄養の可能性がある患者を抽出し、早期に栄養介入することの重要性を多職種へ説明した。看護部長の栄養管理への理解が得られた。この頃、NSTでは勉強会を開き、MUSTへの理解を深めていた。

2023年には、入院時の栄養スクリーニングは看護師がMUST(20歳未満はSGA)を使って行うことへの了解を得た。MUSTの結果が、2点以上の患者には、管理栄養士がGLIM基準で低栄養診断を行う手順とした。また、NSTと当科が協力し、対面での院内MUST勉強会を提案したが、主力の看護師さんの参加は難しいとのことで、音声入りのバワーポイントを作成し、理解を深めてもらった。

栄養指導件数が倍増

このように院内の多職種の了承が得られ、2024年9月に晴れてGLIM基準による新栄養管理体制がスタートした。電子カルテのメーカー変更が、2025年5月に控えていたことが、GLIM基準導入の契機の後押し(追い風)ともなった。この体制になり、芳野さんは「管理栄養士の病棟業務が明確になり、栄養管理が主業務のスタッフ病棟滞在時間は、日に5~6時間へ増えた」という。

MUST2点以上、SGA4点以上、褥瘡に関する治療計画書が必要な患者の下腿周囲長測定を管理栄養士が行い、GLIM基準を実施することになった(図2)。低栄養とがんを中心に栄養指導件数が2024年には前年に比べ倍増した。その理由のひとつは、低栄養の患者に栄養指導を行っていても、栄養指導料の算定を実施していないケースが多かった。しかし、GLIM基準導入で、低栄養患者(栄養指導対象者)が明確になったことを、栄養経営士の視点から気付くことができ、改めたとのことだ。

がん治療中の食思不振の患者へは、「心和み食」という、嗜好に合わせ食べやすいセットメニューやアラカルト等で食事調整を行い、体重維持の重要性を栄養指導でお話ししている。
退院時の栄養情報提供書の作成件数も2024年は前年の5倍と飛躍的に増加した。
このような算定の漏れのチェックに栄養経営士の視点が役立つ。
臨床栄養科では月1回定例会議と勉強会を開催している。科内定例会では現状の業務が算定につながらないか、新たな業務拡大を検討。科内勉強会では、症例報告、製薬会社や食品メーカーの担当者に来てもらい、薬の最新情報を得たり、経腸栄養剤の理解を深めるように努めているそうだ。

科内には栄養経営士の資格を持つメンバーが芳野さん以外に2人いるので、現場の声を伺った。2人は「病棟に行くと介入が必要そうな患者さんがすぐわかるようになった。他職種の人から『病棟に栄養士さんがいてくれて助かる』と言われるようになった」「食事摂取量の少ない患者さんにも介入できるようになり、安心している」ということだった。

今後の課題として芳野さんは、「GLIM基準の実施対象をMUST1点の患者へ拡大、病棟担当制は常駐ではないので、ゆくゆくは常駐を目指したい」とのことだった。(『ヘルスケア・レストラン』2026年3月号)

栄養経営士
芳野多香子さん
川口市立医療センター臨床栄養科

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