Dr.相澤の医事放談
第70回
2026年こそ
医療提供体制見直しの第一歩を

2040年に向け、日本は急激な人口減少と高齢化に見舞われるが、医療提供体制のビジョンについては明確に示されていない。日本病院会の会長を務める相澤孝夫先生は、医療提供体制の制度改革を1丁目1番地に挙げる。26年は、その第一歩を踏み出す極めて重要な年になる。

まずは病院の整理と類型化を

2025年、高市早苗政権が誕生し、風の吹き方が少し変わってきたでしょうか。26年を迎えるにあたり、わが国として医療提供体制の制度改革に取り組むべきだと私は考えています。この1丁目1番地とも言える改革は、15年の社会保障と税の一体改革で取り組むぺきこととされた内容ですが、残念ながら、これまでは現状維持で進んできました。

しかし、社会は今大きく変化しています。25年から40年にかけては急激な人口減少に代表されるかなり激しい変化が想定されています。高齢化が急速に進む一方で生産年齢人口は約1000万人以上減少します。すでに若年層が縮小し、看護学校の入学者数や学校数が減少している地域もあるほか、理学療法士の養成校では定員割れが進行するなど、地域医療を支える人材供給に影響が出ています。

そのため、来るべき40年のあるべき姿からバックキャストし、26年の行動計画(アクションプラン)を立てて行動すべきですが、なるべく現状を変えずに手直しする議論に終始しているように感じます。診療報酬改定や医療費についての議論も、あるべき姿に対応するために“今どうするか”という視点が不可欠だと思います。

医療提供体制の制度改革でまず最初に行うべきことは、病院の整理と類型化です。私は、広域型病院と地域型病院の2つに思い切って整理すべきだと考えます。
このうち、広域型病院はベッド数がたとえば400~500床程度で、医療資源を集中して「治す」医療を行っていく病院です。ヒト、モノ、機械、金などの医療資源をある程度集中させる必要がありますので、たとえば、入院日数は7日に設定するなどして「治す」回転を上げていくことが重要になります。人員配置としては、医師や看護師を中心にして、あまり職種を増やさないようにしたほうがよいでしょう。

一方、「支える」機能は地域型の病院が担いますので、こちらは多職種が必要となります。医療ソーシャルワーカーやリハ、管理栄養士など皆で支える体制づくりを進めるべきでしょう。そうなると広域型病院より職員数は必然的に多くなりますので、人件費は診療報酬でカバーするような仕組みを考えることが必要になります。
また、「退院後」の機能については地域の事情によって異なりますが、外来でのフォローや在宅医療、もしくは在宅医療の後方支援なども必要になると思います。

これらは一つの案ですが、地域によって病院の機能に違いがありますし、専門的機能を有する病院もあります。まずは、40年に向けて医療提供体制をどのようにしていくのかというビジョンを明確にし、1年ごとに取り組むことを決めていくべきでしょう。
このビジョンをもとに医師の偏在や減少する医療従事者への対策、医療費の効果的な使い方などを決めて段階的に進めていけばよいのです。26年は、その議論をすべきタイミングになると考えています。

日本は医療後進国になる?

もう一つは「診療報酬で守るべき日本の医療とはいったい何なのか」ということを明確にすることです。国内では、最新の医療機器を使用した手術は赤字になることがあります。おそらく、日本は新しい医療に対して投資をするという概念があまり働かないのではないかと考えています。このままだと、10年もすれば日本はアジア諸国のなかで一番貧相な医療を提供する国になってしまうのではないかと……。他国はものすごい勢いで最先端の医療機器・技術を取り入れ、どんどん進歩しています。これは赤字にならないからできるわけですが、日本はこうした新しい医療に診療報酬で点数がつけられていません。ですから、日本の医療はどんどん遅れていくのではないかと危惧しています。

もちろん、すべての病院で同じことをできるようにする必要はなく、類型によって区別すればよいのです。選ばれた病院では医療技術をどんどん上げ、アジアで負けないようにすることも大事ではないでしょうか。ですから当然、診療報酬の考え方も見直す必要があります。こうしたことを広く皆さまにご理解いただき、何とかして向かうべき方向に進んでいかなければいけません。

いよいよ26年を迎えますが、新年は、向かうべき方向に一歩を踏み出す極めて重要な年になります。引き続き、よろしくお願いします。(『最新医療経営PHASE3』2026年2月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

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