栄養経営士になろう
育成計画で目標を明確化、教育強化で若手の実践力アップ
チームのモチベーションを高める工夫も
マンツーマンの育成プログラムのもと、2年でNST研修を7名が受講したことで、チームの対応力が急速にアップしたという。集中治療室での管理栄養士の配置を1人体制から2人体制に増員し、早期栄養介入業務を強化させた。
スキルアップに挑戦しやすい雰囲気づくりを心掛ける
埼玉医科大学国際医療センターは、756床のがん、心臓病、脳卒中などの救命救急に特化した高度急性期病院。栄養部には非常勤5名を含む管理栄養士2名が所属。入院患者の栄養管理、退院前の個人栄養食事指導、外来栄養食事指導、給食の食数管理などを行っている。
管理栄養士リーダーの菊地宏尚さんは数年前に栄養経営士の資格を取り、2023年にこの病院に赴任した。20~30代がおよそ9割を占めるメンバーに現場で活かせるスキルを身につけてもらう教育や後輩の育成に注力しているという。最先端医療を担うこの病院では、集中治療室での早期栄養介入に2名の管理栄養士を日勤で割いている。これを担当するにはNSTで3年の経験を積む必要があるが、菊地さんの育成プログラムでは、集中治療室の早期栄養介入業務を一つの目標としている。
また、個別の栄養指導については、がんが8割、心臓病が2割で、がんは、乳がん、大腸がん、胃がん、食道がん、それぞれに対応した栄養指導を行っており、1~2年目のメンバーへの育成プログラムにも組み込まれている。その効果もあり、個別の栄養指導をできるメンバーが増えたという。
育成方法はマンツーマンで教えながら業務を進めるOJT型で、NSTは8か月のプログラムになっている。菊地さんの「後輩が先輩の背中を見て育つ」という言葉がこのやり方を象徴している。
これら若手の育成を菊地さんとともに進めているのは、昨年栄養経営士を取得した大室美紀さんだ。NST専門療養士や病態栄養専門管理栄養士の資格も持ち、若手に資格取得を勧めている。
菊地さんと大室さんが力を入れてきたのは、NSTに入ることのできるメンバーの育成だ。院内では1年目の終わりから2年目の半ばまでを育成期間としている。院内での育成と並行し、自らの意思で40時間のNST実地修練を受け、昨年は3名、今年は4名がNSTの専任登録メンバーとなり、カバーできる業務が増加した。2人は、「病棟で患者さんや他の職種のスタッフとのコミュニケーションをとることでやりがいを感じ、自分が必要とされていることを実感できるような機会を増やし、チームのモチベーションを上げる雰囲気、環境づくりに心を配っている」という。
データの有効活用で残業時間を大幅に削減
菊地さんが、栄養経営士の視点で進めたことには、データの有効活用もある。
退院前の個人栄養食事指導を徹底するために、電子カルテに記載されている指導の要否、退院日などの情報が一目でわかるようシステム改修を依頼した。その結果、退院前だけでなく手術入院前の外来時の栄養指導のスケジュールを効率的に組めるようになった。
また、入院患者の栄養管理や栄養指導の件数を手作業で集計していたが、検索システムを活用することで簡単に集計できるようになり、大幅な残業時間の削減につなげることができたという。
このほかには、入院患者の栄養サポートのわかりやすいマニュアルを作成した。
菊地さんは、「経営という視点で現場を見ることができるようになった」と栄養経営士資格取得のメリットを語る。診療報酬の加算算定との関係では、NSTや早期栄養介入管理などを担当できるメンバーを増やすべく育成に注力するとともに、病棟での活動時間を増やし、メンバーのモチベーション向上につなげることと両立させることの重要性を強調していた。
患者さんとの関わりについて、大室さんの以下のお話が印象的だった。
「食道や胃、大腸の手術後の患者さんは、厳しい食事制限をイメージされるが、実際には食べられるものがあることを説明すると、安心して自宅に帰っていく」
また、菊地さんは、退院後数か月経った患者さんから「退院前の栄養指導の内容を今も続けていて、おかげで元気になった」と声をかけられた経験があり、管理栄養士としての役割を果たしていることを実感したということだった。(『ヘルスケア・レストラン』2026年2月号)
図 職員の育成計画
| 1年目 | ・管理栄養士業務について学び、一人で行える業務を増やしていく。 |
| 2年目 | ・2年目終了時に管理栄養士の業務内容のほとんどを一人で行えるようになる。 |
| 3年目 | ・自己研鑽として研修会への参加、NST修練生として40時間の研修を受講。 |
| 4年目 |
・管理栄養士業務(食数管理・栄養管理)について若手職員の教育を行うことができる。 ・自己研鑽として資格取得など実施。 |
| 5年目 |
・管理栄養士業務(栄養指導・チーム医療)について若手職員の教育を行うことができる。 ・チーム医療の専任業務を実施。研究・学会発表など実施。 |
| 6年目 | ・管理栄養士業務(NST・ICU業務など)について若手職員の教育を行うことができる。 |
| 7年~ | ・若手職員の育成、業務改善への取り組みを実施。 |
| 10年目~ |
・一定範囲の業務知識を有し、自らも判断業務及び熟練を要する業務を遂行できる。 ・一般職員に対し、指導・育成ができる。 ・上位者に対し進言できる |
埼玉医科大学国際医療センター
栄養部 課長補佐

