高い技術力と豊富な知見で
病院の課題解決に貢献
疾患の早期発見や適切な治療を行ううえで欠かせない存在となっているのが 体内を可視化する画像診断装置だ。世界有数の医療機器メーカー、ドイツの シーメンスヘルシニアーズは、画像診断装置をはじめ、革新的な装置の開発 を通じて高度化する医療の多様な要望に応えている。当面の重点戦略は何なのか、日本法人であるシーメンスヘルスケア株式会社(東京都品川区)の櫻井悟郎代表取締役社長に聞いた。
開発の原動力はイノベーション創出へのチャレンジ精神
――シーメンスヘルシニアーズは 画像診断及び治療装置で世界をリードする企業の一つです。どういう特徴をもった会社ですか。
櫻井 まず、イノベーションの創 出に最優先で取り組んでいることが特徴として挙げられます。併せて、診断から治療まで優れたポートフォリオを幅広く揃え、さらにカスタマーサービスの質にも強くこだわっています。イノベーショ ン創出のため、売上高の約 10 %を毎年、研究開発に投じています。それにより、革新的で独創的な製品を世界に先駆けて生み出し、医療の発展や課題解決に貢献する、という考えです。企業理念として掲げる「We pioneer breakthroughs in healthcare. For everyone. Everywhere. Sustainably. ヘルス ケアをその先へ。すべての人々へ。」のもと、医療従事者による質の高いケアを支え、患者さんに最善の結果がもたらされることを願い、チャレンジを続けている会社です。
――革新的な製品の創出に向け、重要と位置付けている技術分野は何ですか。
櫻井 センシング、ロボティクス、AIの3分野です。センシング技術は、患者さんの体内の情報をいかに正確にとらえ、的確な診断や治療に結びつけるという点で、すべての出発点になる重要な技術です。ロボティクス技術は、血管内治療や放射線治療で求められる高い精度と再現性を支えると同時に、業務の自動化によって医療DXを進め、医療従事者の負担を軽減する重要な技術です。AIに関しては早くから研究に着手し、医療関連AIの特許は世界トップレベルの件数を誇っています。疾患の領域の特定や放射線治療計画の 策定、診断画像の読影を支援する画像再構成など、AIの活用範囲は極めて広く、継続的なイノベーションのためにも引き続き高水準の投資を続けていく方針です。
――イノベーションの成果として 画期的な医療用CTの開発に成功していますね。
櫻井 シーメンスヘルシニアーズが世界で初めて開発し、実用化した臨床用のフォトンカウンティングCTです。従来のCTとは原理が異なり、X線の光子(フォトン)が持つエネルギー情報を直接電気信号として電子化し、フォトン一つ一つを計測することで画像を生成する点が大きな特徴です。沖縄のアクロラド社が開発したこの素子に着目し、当社の技術を結集させ、臨床の現場で使用可能なレベルにまで高めるため、長年にわたる開発を重ねてきました。このCTには体内の微細な組織構造を解明できるほか、放射線被ばく量も低減できるなど多くの利点があります。すでに国内でも大学病院を中心に導入が進み、設置台数も着実に増えています。将来的には当社のすべてのCTがフォトンカウンティングCTに置き換わるとみています。沖縄発の技術を起点にブレークスルーが生まれたという点で、日本発の革新的な製品と言うこともできるでしょう。
医療の課題解決に生きる豊富なソフト面の知見
――もう一つの大きな柱として、顧客である医療機関とパートナーシップを構築するという取り組みも強化しているようです。
櫻井 まず、病院経営をお支えするという意味で、カスタマーサービスは本当に重要だと考えています。導入後に弊社の製品パフォーマンスを最大化していただきたい、そのための教育の提供には力を入れています。また、命にかかわる臨床の現場を機器の不具合などで止めてはいけない、1秒でも早く復旧させる、という医療機器メーカーとしての責任感、使命感が根底にあります。ですからカスタマーサービスでは、オンライン対応を活用し、訪問が必要な場合も、高い技術力を持つエンジニアが1回の訪問で修理を終えることを徹底して意識しています。
しかし、私たちが目指している本質的なゴールは、それにとどまりません。長期的視点に立ち、医療DXの推進による業務の効率化や診療プロセスの見直し、さらには病院経営の改善までを視野に入れ、信頼に裏打ちされたパート ナーシップを構築することです。 単なる機器ベンダーではなく、コンサルティング機能も備えたパートナーと捉えていただきたいと考えています。お客様からの多様な要望に応えるべく、ポートフォリオの一段の拡充にも努めています。2021年には放射線治療機器で高いシェアを持つ米バリアンメディカルシステムズもシーメンスヘルシニアーズの一員となり、がんの領域では、診断から治療まで一貫したソリューション提供が可能になっています。こうした強みを活かし、医療機器の納入や運用に加え、病院内の機器の更新などに際して最適な提案を行い、病院経営の効率化につなげる 総合的なパートナーシップ契約も増えています。
――医療機関は今、多くの課題を抱えていますね。
櫻井 質の高い診断機器や治療機器を導入することで、優れた医療 従事者が集まり、質の高い医療の提供により患者さんも増える―そうした好循環を生み出すために弊社の装置を複数導入している、というお客様の声もいただいています。私たちは、装置のみならず、 業務や診療プロセスの改善なども含め、医療機関を総合的に支援できる体制を整えています。日本の医療機関が抱える課題の解決に、少しでも貢献できる存在でありたいと考えています。(『最新医療経営PHASE3』2026年6月号)
さくらい・ごろう●1998年慶應義塾大学卒業。米ワシントン大学でMBA取得。東芝、ジョンソン・エンド・ジョンソンを経て、2021年シーメンスヘルスケア入社。画像診断事業本部長、営業統括本部長などを歴任したのち2024年4月から代表取締役社長。
▼『最新医療経営 PHASE3』のご購入は こちらから
▼最新号の内容やバックナンバー等を知りたい方は こちらでご確認ください

