Dr.相澤の医事放談
第67回
重要な人と組織のマネジメント
キャリアアップの仕組みも用意
年間100万人にも達する急激な人口の減少は、社会経済全体大きな影響を及ぼすことになる。日本病院会の相澤孝夫先生は、今後の病院経営をどうしていくか、今こそ真剣に考える必要があると警鐘を鳴らす。人材確保とDXは、その解決策の一つとなる。
外国人材に頼る現状
主体性がもてる業務内容に
2025年以降、日本に大きな変化が訪れます。それは、「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が大きく変わるということです。それは、働き手世代の人口減少が急速に進むということを意味します。病院経営において人材は不可欠な要素。必要な人材がいなければ病院の運営は成り立ちません。病院経営に必要な人材をどう確保していくのかが、今後の大きな課題となってきます。
厚生労働省によると、23年10月1日現在、病院施設の常勤換算従事者数は約211万人で、そのうち一般病院の常勤換算従事者数は約195万人。内訳は看護師が約76万人、医師が約24万人、事務職員が約22万人、看護業務補助者が約12万人となっていて、全体の約7割を占めています。
そのなかで今課題となっているのが、看護業務補助者の確保です。すでに日本人では集まらず、外国人材に頼っているところも多いと思います。人材確保のためには、働く人のモチベーションが向上するよう、また、主体性をもって仕事ができるような仕組みづくりが必要です。「○○をお願いします」「はい、わかりました」という指示命令だけでは長続きさせることは難しいでしょう。患者さんとコミュニケーションが取れて、患者さんから感謝されるような、充実感につながる業務内容を考えなければいけないのではないかと思います。
一例ですが、“院内デイケア”という仕組みがあります。入院している高齢患者さんの昼夜の生活リズムが狂わないよう、つまり、夜になったらちゃんと眠れるよう、デイサービス施設で行われているような作業や活動を院内で行うものです。日中はレクリエーションを楽しませたり話をしたりしますが、このような作業だと患者さんとふれあえる機会が多くなりますので、やりがいにもつながりやすいのではないかと思います。合わせて、介護福祉士取得に向けて学習する機会を用意したり、研修制度やeラーニングの提供など学習環境の整備を行い、キャリアアップの仕組みも用意すべきでしょう。
外国人材を採用する際に重要となるのが、受け入れ態勢の整備です。その最たるものが言葉の問題です。病院としてこの問題をどう解決していくか、考えておく必要があります。そのうえで、仕事をする仲間として受け入れ、言葉のハンデを理解して病院運営をしていくことはとても大事なことです。人のマネジメントと組織のマネジメントの両方が求められていると言えるでしょう。
最初は、仕事の設定や自分の役割をきちんと理解することが難しいために仕事をやりすぎてしまったり、逆にやらなさすぎたりしてトラブルになることがあります。ですから、外国人材が気持ちよく働けて、その人がきちんと働けるような仕事の与え方をしていくマネジメントが欠かせません。
改善すべき課題を解決するためのDX
もう一つの解決策が、医療DXです。ICTを活用した仕事や手法の変革は重要な取り組みです。ただし、人員の省力化による生産性の向上と仕事とサービスの質の向上が図れることを合わせて考える必要があります。
よくある間違いは、ソリューションを導入することが目的となってしまうこと。そうではなく、業務の改善やサービスの向上、時間の短縮・省力化など、改善すべき課題、つまり目的を明確化し、どのように改善につながったか、導入後の検証が欠かせません。そのうえで課題となるのは、さまざまあるソリューションの的確な選択であり、現場が抱える課題の抽出です。
そのため、たとえば「DX推進室」のような部署を設置し、組織の方針やビジョンにDXの推進を掲げて取り組むことが大事です。きちんと費用対効果を検証すれば、コストの問題は順位が下がっていくでしょう。ただし、病院経営は非常に厳しいですから国が一部を負担するような仕組みも検討すべきだと思います。
DXとして病院で導入が進んでいる一例が、人口知能(AI)が電話対応を行う「AI電話」です。断ることなく予約の変更やキャンセル、問い合わせに対応し、返信が必要な担当者は優先順位をつけて都合の良いタイミングで返信ができるように情報の見える化を行うといったソリューションです。
DXの推進は離職防止や採用増にもつながる取り組みですので、率先して自ら実行していくことが求められます。(『最新医療経営PHASE3』2025年11月号)
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

