Dr.相澤の医事放談
第64回
病院医療の崩壊カウントダウン
抜本的改革が必要不可欠

日本病院会の会長である相澤孝夫先生は、病院医療の崩壊が始まっていると危機意識を強くする。医療報酬の価格である、医療に対する評価や医師の仕事に対する評価があまりにも低すぎることに原因の一つがあると指摘。こうした状況を知ってもらおうとYouTube「日本病院会チャンネル」で情報発信を行っている。

診療報酬以外の財源など抜本的見直しを

今、病院医療崩壊の危機が迫っています。大きな理由の一つは病院の赤字です。6つの病院団体が合同で行った「2024年度診療報酬改定後の病院経営状況」の調査によると、補助金などを除いた医業利益の赤字病院が69%、経常利益の赤字病院が61%まで増加していました。

赤字が拡大している最大の要因は、医療に対する評価(診療報酬)があまりにも低すぎることにあると考えています。また、海外と比較しても、困難な手術や人命を支える手術に対する評価が低いという課題があります。
一方で、経費が持続的に増加しており、物価高がさらに経費を増加させています。しかし、医療の質向上や高度化に対する費用は、診療報酬に十分に盛り込まれているとは言えません。最新鋭の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」のような医療の質が向上する機器を導入すると、高額な購入費用だけでなく高額医療材料が必要となり、支出が増える一方になっているのです。

また、施設の維持・整備のための費用についても手当てがないのが現状です。ある地域に必要な手術室の数を決めたのなら、整備や維持のための費用は国や自治体が負担し、手術は診療報酬で行うような両建ての方法も検討すべきです。

ただし、医療機関によって費用構造が大きく異なる点は把握しておく必要があるでしょう。一般病床と回復期病床、療養病床など複数の病床機能を併せ持つケアミックス病院と、重症な患者や緊急度が高い患者に急性期医療を提供する急性期病院とでは大きく異なります。

前者は人件費のウエイトが高く、後者は材料費や薬剤費、高額な機械の減価償却などの比率が高くなっています。そのため、ある程度病院を類型化して対策を考えたうえで対応していくべきでしょう。前号でも述べましたが、たとえば1日2000円の入院基本料の上乗せをご利用者にご負担いただくとすると、14日間の入院で計算すれば2万8000円、これを400床規模の病院が年間通じて運用するとすれば、億単位の差が生じることになります。
こうした、診療報酬だけではない新たな財源を考えるなど、医療の提供のあり方を根本的に見直すべきです。

医師が診療報酬できちんと評価される仕組みを

今、若手医師が臨床研修後に美容医療業界に流れる、いわゆる「直美」が問題になっていますが、この問題も同様に、自分たちの仕事に対する評価である診療報酬があまりにも低いことに原因があると考えています。美容医療は自由診療になりますので、患者さんの要望に合わせて料金を設定することができますし、給料や労働条件にメリットを感じる若手医師は少なくないでしょう。

一方で、診療報酬は公定価格のため自由に価格を決めることはできません。低い評価に甘んじて仕事を続けることには、苦痛すら感じます。当然、そのような医療現場からは医師が去り、結果として医師不足に陥り、地域で必要な治療を行うことができなくなってしまう可能性があるのです。
まずは、医師がきちんと診療報酬で評価される仕組みを構築し、そのうえで無駄を減らすなどの対応をとるべきでしょう。

高齢者の人口が2040年にピークに達することで生じる、さまざまな社会的・経済的問題が懸念されています。医療や介護にかかわる社会保障費の負担増、働き手の減少による医療提供の不足などが予測されるなか、わが国の医療は今、何を変えていかなければならないのか、真剣に考える必要があります。

日本病院会ではYouTube「日本病院会チャンネル」を作成し、情報発信を行っています。日本病院会のホームページから視聴可能ですので、ぜひご視聴いただき、病院医療が抱えているさまざまな課題について理解を深めていただけたらと思います。(『最新医療経営PHASE3』2025年8月号)

※日本病院会ホームページ https://www.hospital.or.jp/

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

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