“その人らしさ”を支える特養でのケア
第92回
看取りケアを次に活かすための
振り返りカンファレンスの重要性
看取り介護の専門職に管理栄養士が明記されて3年が経ち、「栄養」や「食」についてのかかわり方について考える機会が増えてきました。振り返りのカンファレンスの際に、自己評価のポイントとなる点を紹介します。
管理栄養士としての自己評価ポイントとは
看取り介護にかかわる専門職に管理栄養士が明記されて3年。読者の皆さんのなかにも「看取りケアにかかわる機会が増えた」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際に看取りケアに参加して、どのように感じていますか?「この対応が良かった」「悔いはない」など前向きな反省がある一方で、「もう少しこうしたかった」「あの時この行動ができていたら良かったのに……」など、心残りなケースもあるかと思います。
今回は、看取りケアで経験したことを次に活かすために、当施設で取り組んでいることを紹介します。
当施設の看取りケアの終了時には、職員内で、ケアの振り返りカンファレンスが行われます。カンファレンスにはケアにかかわった職種が参加し、参加者一人ひとりが、その方の看取りケアの内容について良かったことや反省点、看取りケア対象のご利用者様との思い出などど、印象深かったことを話します。
管理栄養士としては「栄養」や「食」についてのかかわり方について話すことが多いです。
振り返りの際、自己評価のポイントとしていることを紹介します。
①食事の提供に無理はなかったか
看取りケアが進んでくると、食事が摂れなくなる方が多くなります。寝ている時間が長くなったり(覚醒状態の悪化)、嚥下機能の低下が主な理由です。しかし、多くの看取りケアを経験すると、そのご利用者様が「もう食べたくない」と思っているのではないかと感じることも多いです。そのため、ご利用者様への食事提供がその方にとって良いかどうかを見極めて、食事のタイミングや食べる場所、何をどのくらい食べるのかなどを調整していく必要があると思っています。
参考文献※には、「おそらく、この時期の栄養摂取量は人間の生命維持に必要なカロリーとは比較にならないほど少量になるのではないでしょうか。それは、体が欲していないためと考えられます」と書かれており、ご利用者様に合わせた対応が必須と考えられます。
②経口摂取ができなくなった時に、どのようなかかわりができたか
ケアの終盤には、経口摂取ができなくなる方が多いです。「食事ができないから管理栄養士の出番は終わり」というわけではありません。看取りケアでの「環境整備」の一環として「ご利用者様とのかかわりを続けていくことが良い」と考えています。
具体的には、お部屋に訪問し話しかけたり、口腔ケア(食事をしていないので汚れたり乾燥したりする。水を含ませたスポンジブラシでグルっとふき取るだけ)を行ったり除圧を行ったりと、できることを中心にかかわっています。時には「水を飲みたい」など、ご利用者様からのリクエストにお答えすることもあります。
参考文献※には「一人で死ななければならない」と思うのは寂しいもの」と書かれていました。ご利用者様にかかわる一人の人間として、栄養補給ができなくなってからも積極的にかかわりたいと思っています。
③対象のご利用者の安楽や穏やかな楽しみに寄与できたか
看取り期といえども、生きている限り日常生活は続いていきます。そのなかで少しでも「楽だな」とか「気持ちいい」「たのしい」とご利用者様が思えることにかかわることも、職員としての大切な支援だと思っています。
食事の場面だけを切り取れば、食事をする場所や姿勢、言葉がけの内容、食事介助の方法、何を食べるかなどが挙げられます。私自身は看取り期の食事介助を担当することも多いです。看取り期では嚥下調整食を提供することがほとんどなので、食事介助の際は、何を食べているのかをしっかり伝えるようにしています。
摂取量が低下している事例では、ご利用者様の反応が良いものだけを提供することもあります。「これが最後の食事かもしれないので、おいしいものだけを食べてほしい」と思うからです。ご家族からの差し入れも積極的に取り入れ、食事よりも差し入れを優先して提供します。
そして、経口摂取が困難になった場合でも、ご家族の希望があればごく少量の嗜好品をスポンジブラシにとり、舌に乗せることで味を感じてもらうような支援も行っています。これまでも、アルコール飲料やプリンなどの味を楽しんでいただきました。
個別性の高い看取りケアのかかわり方
振り返りカンファレンスでは、今後の看取りケアの方向性を決めるような検討が行われることもあります。たとえばこれまで、吸引を含めた医療行為をどこまでやるのか、ご家族様とのかかわりや連携、入浴のタイミングなどが検討されました。
看取りケアは、10人いれば10通りのケアがあると感じるほど個別性が高く、事例ごとの対応が必要です。しかし、実際のケアを振り返ってご利用者様やご家族様に不都合が大きかった出来事については、次回への反省点として活かしています。そのため、栄養ケア以外でも気になった点を問題提起することがあります。
振り返りカンファレンスでは、つい涙してしまうこともあります。カンファレンス中に泣くのは……と他職員から苦言をいただいたこともありましたが、ご利用者様の供養ととらえ、お許しいただいています。
以前は、ケアの内容に悔いが残ってしまい悔し涙も多かったように思います。今は、看取りケアのかかわりが増えたことで「ご利用者様らしい最後にかかわれた」という視点ができました。それでも、長くかかわったご利用者様との別れは寂しいものです。毎回、そのご利用者様とのかかわりで学ばせてもらったことを感謝しつつ、看取りケアの振り返りを終えています。
人の死は自然なことで、避けることはできません。しかし、ご家族をはじめかかわった人たちから穏やかに見守ってもらえるのは、死に向かうご本人からしても幸せなことだと思います。
これまでの経験を今後の看取りケアに活かしていくことが、逝去されたご利用者様の供養になると感じています。(『ヘルスケア・レストラン』2025年8月号)
参考文献:特別養護老人ホームにおける施設サービスの質確保に関する検討委員会/特別養護老人ホームにおける施設サービスの質確保に関する検討報告書 別用 特別養護老人ホームにおける看取り介護ガイドライン 平成18年度 厚生労働省 老人保健事業推進費等補助金
特別養護老人ホーム ブナの里
よこやま・なつよ
1999年、北里大学保健衛生専門学校臨床栄養科を卒業。その後、長野市民病院臨床栄養研修生として宮澤靖先生に師事。2000年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院に入職。同院の栄養サポートチームの設立と同時にチームへ参画。管理栄養士免許取得。08年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院を退職し、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里開設準備室へ入職。09年、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里へ入職し、現在に至る

