マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.13
Z世代に「違うから戸惑う」より
「違うからこそ学べる」で臨む

<今月のご相談>私の部署(総務課)にも5年ぶりに新卒を迎えました。オリエンテーションでは楽しそうにワークに参加し、とても素直でやる気に満ちたコメントをしていたのですが、いざ配属となると何となくおとなしすぎてかかわりにくさを感じます。アドバイスをしてもとても落ち込んだ様子……。どう接すればよいでしょうか。

「指示どおりに動かない」ではなく「理由がわからないまま動けない」

新入職員を迎えると職場が明るくなりますね。特に社会人一年目ともなると初めてのことが多く、仕事を教えたり進め方のコツをアドバイスしたり、先輩たちもあれこれお世話をしたくなり元気になりますね。ところが、マニュアルを見せながら教えても、説明したとおりに動いてくれないし、ちょっと注意したらすごく落ち込んでしまい、何となくかかわりが難しいという声を聞くことが多くなりました。いわゆる「Z世代」は、価値親も感じ方も、昭和の時代の方々とは少し異なるようです。

Z世代とは、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた方々を指し、「デジタルネイティブ」世代とも呼ばれています。
物心ついた頃からスマートフォンやSNSが当たり前で、ネットを通じて多様な価値観に触れて育ってきました。何かを調べるにしても、私たちは周囲に尋ねたりマニュアルを見たりしましたが、彼らは「Google検索」、「YouTubeで動画を見る」のが当たり前。タイパ(タイムパフォーマンス)を重視し、効率の良さを追求します。
もちろん、業務改善の視点としてはとても良いのですが、多様性の尊重意識から「みんなと同じ」より「自分らしさ」や「自分の納得感」を重視する傾向があります。職場のルールややり方に対しても、「とりあえず従う」ではなく「それってどういう意味があるのか」と疑問をもつのが自然なのです。「指示したとおりに動いてくれない」のではなく、「理由がわからないままでは動けない」、そうとらえ直すだけでも、見え方が変わってくると思います。

ちょっとした「見方の転換」で信頼し合える関係を育んでいく

「ちょっと注意しただけなのに、翌日から元気がなくなって……」とのことですが、Z世代は、「注意されること」を自分のやり方を「否定されることと」ととらえてしまう傾向があります。感情的な言葉や強い言い回しへの耐性が弱く、モチベーションが削がれ、時に、心を閉ざしてしまうこともあるようです。伝えるべきことをしっかりと伝えなければ現場は混乱してしまいますから、「アドバイスする、注意する」から「対話する」へと、かかわり方を少しだけシフトさせてみてください。
たとえば「ここは、さっきも言ったけど、〇□と間違えないようにね」という言い方を、「ここ、難しいよね。私も新人の頃はよく間違えたのよ」「次はこのやり方でも試してみて、あなたの意見を聞かせてね」など「対話型」の表現に変えると、「自分は否定されてはいない」と感じることで少しずつ信頼関係を築いていくのです。

Z世代の多くは、自分のことを「ちゃんと見てもらっているかどうか」にとても敏感。ただ「がんばってるね」と褒めるだけでは響かないこともあります。むしろ、行動をしっかり見てそれを言葉にしてもらえると「認めてもらえた」と実感できます。「電話の対応、昨日よりずっと自然になっていたね」「急な変更にも落ち着いて対応できていたよ。助かった」など、ちょっとしたひと言がZ世代にとっては大きなモチベーションになるのです。

「褒めすぎると調子に乗るのでは」との心配もあるかもしれませんが、彼らにとっての「調子に乗る」は「やる気が出てきた」のサインでもあるのです。上手に力を引き出すチャンスだと思って、遠慮せず声をかけてみてください。時代が変われば人の育ち方も変わりますが、「人と人」として大切にしたいこと、信頼関係を築くことはいつの時代でも変わりません。

Z世代を理解し、受け入れ、信頼し合える関係を少しずつ育んでいく。その第一歩は、ちょっとした「見方の転換」かもしれませんね。「違うから戸惑う」のではなく「違っからこそ学べる」ととらえ、私たちもまた、成長していきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2025年6月号)

いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民問企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に「医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」「経営企画部門のマネジメント」(ともに日本医療企画)ほか

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