制度と経営に強くなる!
地域課題解決の事例を元に
介護事業経営の「未来」を考えるPart.3
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
全国の福祉事業者の取り組みから“気付き”“学び”を得る
私は仕事柄、年間200日以上、北海道から沖縄まで全国各地にお邪魔し、高齢・障がいを問わずさまざまな福祉経営者の方々とお仕事をさせていただいています。
主には「(新規)事業」や「組織づくり」「人財づくり」を中心に、未来志向に基づいた意見交換、およびそこから生まれる取り組みのご支援を行っているのですが、介護保険事業を基盤としつつも“地域課題”に寄り添い、そこから未来をつくり出そうとされている前向きな経営者の姿を現地で実際に見聞きさせていただくと、「これからの福祉事業者が担うべき新たな役割」、そしてそこから生まれる「未来・次世代における「福祉経営の可能性」について明るい気持ちになります。と同時に、「このような取り組みがもっと全国で知られるようになればどんなに素晴らしいだろう(≒未来を見据える経営者にとって大きな“ヒント”や“エネルギー”になるのでは?)」と痛感することが多々あります。
そのような活動・想いのなかから、弊社が全国で主催している福祉経営者コミュニティ“ケアビジネス研究会”のなかで主に発信・流通している情報の一部を、前号に引き続き抜粋して紹介します。
今回は、中国地区(島根県)の福祉事業者(ショッピングリハビリカンパニー株式会社・尾添純一代表取締役・杉村卓哉取締役ファウンダー)が発案し、主には介護予防(総合事業)活動として全国約20拠点に拡がりつつある“ショッピングリハビリ®”についてです。
買い物はリハビリ運動の隠れた“宝庫”
私が「ショッピングリハビリ®」という事業を初めて知ったのは2017年のこと。「これからの介護は施設・事業所内での、いわば“閉じた空間でのサービス提供”に終始するのでなく、顧客の生活圏域に根づいて展開されるべき」という想いをもっていた私としては、そのネーミングに興味を覚え、すぐさま島根県へと足を運びました。するとそこには、今まで見たこともない形状のショッピングカート(同社が開発した楽々カート)を使い、スーパーマーケット内を自由に歩いてお買い物をされている高齢者の姿が。実際に現場を拝見し、次の2点の意義を強く感じました。
1点目は「“買い物”という行為にはリハビリにつながる要素が数多く盛り込まれている(しかも自然に)」という、介護予防活動としての意義です。たとえば、お目当ての商品を探しながらスーパーマーケット内を歩くことで、多い方で約3,000歩、距離にして1.5~2kmを歩いています。それだけの歩行量に一役買っているのが、特殊な形状で歩行時の体重負荷を軽減する“楽々カート®”です。
加えて、商品を取るために自然と腕を上げたり、互いの買い物かごの中を見ながら利用者同士で談笑したりスーパーの店員の方々に声をかけたり、はたまた、自分が買った商品のあらかたの合計金額を計算したり財布からお金を出したり等々、本当に“自然”、かつ“無意識”のうちにリハビリにつながる動きが散りばめられていることに、改めて驚きを覚えました。
楽々カート®
“買い物弱者”という地域課題の解決にも直結
そして2点目は、“地域課題解決に対する意義”です。これについては大別すると、次の2つの視点が挙げられると思います。
1つは、「買い物弱者問題への貢献」という視点。農林水産省によると、「近くに小売店がないことなどにより食料品の確保が難しい65歳以上の高齢者(=食料品アクセス困難人口)」の数が、2020年の時点でなんと全国で約904万人にまで上っているそうです。こうした状況からしても、「高齢者を車で送迎し、スーパーマーケットまでお連れする」という行為は、前述の課題解決に少なからず貢献していると見ることができるでしょう。
そしてもう1つの視点は「地域経済活性化に対する貢献」です。独力では足を運ぶことが難しくなってしまった方々をスーパーマーケットまでお連れするわけですから、地元のスーパー経営者からすれば、シンプルに売り上げが上がることになります。また、これも興味深い傾向だなと思うのですが、実際、この「ショッピングリハビリ®」に参加されている高齢者は、一般の買い物客と比較しても、1回当たりの買い物単価が総じて高い金額で推移しているようです(たとえば、中山間地域の「ショッピングリハビリ®では、平均客単価4,600円」というデータもあります)。
以上、雑駁ながら、「ショッピングリハビリ®」という事業について、その意義や可能性について触れました。こうした情報が「皆様の何らかの気づき・ヒントにつながれば嬉しいな」という想いのもと、今号の連載を終えさせていただきます。(『地域介護経営 介護ビジョン』2025年4月号)
C-MAS全国顧問
株式会社ケアビジネスパートナーズ代表取締役
はらだ・ただし●1970年生まれ。福祉、介護特化型コンサルタントとしてさまざまなノウハウを開発、発信し、全国で福祉経営者向けセミナー・研修等を実施。「他業界の経営支援で培った知見」「自らのデイサービスでの実体験」「福祉業界の経営支援で培った知見」を融合させながら、「ケアビジネス研究会」を基軸とした実戦的な経営支援活動を行っている
株式会社ケアビジネスパートナーズ | ||
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