マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.5
介護施設スタッフへの
ちょっとした気配りが大切

<今月のご相談>病棟でクラーク業務を行っています。介護施設からの入院患者が増えてきているのですが、患者さんの施設での様子の確認や退院の調整などの連絡がうまくつかず困っています。

コミュニケーションでは介護施設の都合も考える

高齢社会となり、施設で暮らす方が増えています。介護保険施設でもある程度の医療的対応はできますが、治療が必要であれば入院することになり、施設の方と連絡を取り合うケースも増えてきます。
特に、2024年度介護報酬改定で、介護保険施設と協力医療機関との連携の必要性はより明確になりました。協力医療機関になっている施設への往診、24時間365日の相談対応、定期的なカンファレンス、そして、施設からの入院要請を積極的に受け入れることが求められていますので、今まで以上に受け入れは多くなっているのではないでしょうか。家族との連携とは異なるコミュニケーションの取り方も必要になってきます。

介護保険施設側も病院と同じように、24時間365日のシフトを組んで勤務にあたっているので、担当者が常に出勤しているとは限りません。患者さんのことで相談がある場合は、担当者だけでなく、代替の連絡手段も把握しておくことが重要です。施設内でも情報を共有していますので「その日の対応者」を教えていただけるでしょう。
介護施設の職員は「家族のように」利用者さんに接していますし、家族の代わりに病院にも来てくれますが、施設内の多くの利用者の介護業務にあたりながらの対応ですので、思ったように動けない時間や、タイミングが合わないこともあるでしょう。
介護施設との情報共有のツールやシステムがあれば、相互に閲覧することで情報の遅延や誤解を防ぐことができます。しかし、こうしたツールがない場合は共通のフォーマットや書式を作成し、メールなど文書が残るような仕組みで情報を共有すると良いでしょう。
介護施設側の1日の動きをある程度把握できれば、電話対応がしやすい時間帯、メールのほうが良い時間帯などが想定できますから、病院側が時間帯を変えることで連絡がとりやすくなります。食事や入浴のタイミングは、介護職員だけでなく事務職員もサポートに入っている施設も多いようですから、電話には出にくい状況かと思います。午後の時間帯はアクティビティなどを行っていることもあるので、施設の1日の過ごし方、イベントの予定なども聞いておくことをおすすめします。

短時間でも直接話し合う場を持ちたい

入院時に介護施設から患者さんの状態やケアの詳細を事前に収集しておくと、後の対応がスムーズになります。もちろん、看護師が事前に必要な情報を聞いていると思いますが、クラークとして必要な情報もチェックリストに入れておきましょう。
退院調整や状態確認が必要な場合、電話だけでなくメールや書面でも確認を行いますが、状況が許せば、オンラインミーティングを設定し、短時間でも直接話し合うのも良いと思います。直接のコミュニケーションで詳細な情報を確認でき、双方の理解がより深まります。
退院して介護施設へ戻る際には、病院からも多くの情報提供を行います。入院中の治療内容についてはもちろんですが、退院後の生活の注意点、栄養士やセラピストからの情報提供も行われます。必要な書類を整えておくことも大切ですが、退院(お迎え)の時間についても、施設の方が迎えに来やすい時間帯を「うかがっておくなど、ちょっとした気配りができると良いと思います。

今後、介護保険施設との連携は増えていくと思われます。スムーズで、お互いが気持ちよく連絡を取れる関係を築けると良いですね。(『最新医療経営PHASE3』2024年10月号)

いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民問企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に「医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」「経営企画部門のマネジメント」(ともに日本医療企画)ほか

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