マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.4
マイナ保険証の利用促進に
病院としてしっかり向き合う
<今月のご相談>マイナ保険証利用促進のために患者さんに案内していますが、マイナンバーカードへの登録方法やポータルサイトの使い方なども聞かれるので大変です。なかには「マイナンバーカードにしたくない」と言ってくる人もいて、対応に苦慮しています。どうすればよいでしょうか。
マイナ保険証移行のラストスパート
2024年12月2日からの健康保険証新規発行終了に向けて、マイナ保険証移行へのラストスパートです。特にこの5月から7月は、厚生労働省が進める「マイナ保険証利用促進集中取組月間」でもありましたので、多くの病院、診療所、薬局などで積極的な声かけを行っていたと思います。もちろん、現在も継続して患者さんたちへの利用促進の声かけをしているでしょう。私も、この期間にちょうど病院を受診する機会があったので保険証の確認を行ったのですが、「マイナンバーカードの方は並ばず、すぐに確認ができます」と再来受付機の近くで案内されました。
今回の取り組みでは、政府広報や健康保険組合連合会の作成した広告動画がインターネット、テレビコマーシャル、電車内放映などでも頻繁に流されていますし、新聞や雑誌にも広告や特集が掲載されていましたから、多くの人に「マイナ保険証」という名称が認識されたと思います。そして、実際に病院でマイナ保険証による資格確認をする患者さんは増えてきています。とはいえ、マイナンバーカードそのものは持っていても、健康保険証との紐付けができていなかったり、そもそも、持ち歩いていなかったりする方々にとってはちょっと面倒で「できれば自分は今までどおりの保険証にしてほしい」という気持ちになる人もいるようです。
今かかわっている病院で説明し移行を促したい
仕組みを新しくするときには、すぐに慣れる人と躊躇する人がいるのは当然です。これまでも、再診受付機の導入や会計精算機の導入などの際にはしばらく職員を配置し、案内をしてきたと思います。
「ここに診察券を入れて」とか「現金はこちら、クレジットカードの場合は……」など、1年間くらいは案内が必要だったのではないでしょうか。病院の都合で運用を変更する場合、患者さんが困らないようにと、細心の注意を払いながら対応してきたと思います。
ただ、今回は病院の都合ではなく国の政策の都合ですから、案内する側も少し意識が違うかもしれません。診療報酬改定で患者さんへの請求項目が増えたり金額が変わったりしたときの説明に近い感じかもしれません。マイナ保険証にしたくないと言われても、日本中どこに行っても「マイナ保険証にしてください」と言われることに変わりはありません。もちろん、12月以降、現在の保険証が使えなくなるわけではないので急ぐ必要はありませんが、できれば、今かかわっている病院でしっかり説明し、移行を進めたいものです。
ある病院では、手続きの仕方やマイナ保険証の使い方などを説明する場所を外来に設置してゆっくり話をする時間を持ったり、厚生労働省の「国民向けマイナンバーカードの利用案内サイト」「マイナンバーカードの健康保険証利用について」のサイトのQRコードを用意したり、病院のタブレットで関覧できるよう取り組んでいました。特に高齢の方々はゆっくり、丁寧に対応する必要がありますから、タブレットを見ながらわかりにくいところはそのつど聞いていただくようなかかわり方もいいでしょう。
マイナンバーカードへの信用が低く、何となく「不安」を感じる方々がいる――という現状はありますが、マイナ保険証の利点は大きいです。今はまだ閲覧できる情報が少ないですが、いずれは医療の質、安全の確保に不可欠になっていきます。まだ始まったばかりの仕組みですから、私たちも少しずつ慣れていく必要がありそうです。(『最新医療経営PHASE3』2024年9月号)