社会保障短信(10月31日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…医療機関機能の報告について「考え方」提示
◆ひとこと…医師偏在是正について
◆今週の数字…155%
トピックス:医療機関機能の報告について「考え方」提示
▼急性期・高齢者救急・在宅について言及
「新たな地域医療構想等に関する検討会」は10月17日、第10回会合を開き、医療機関機能の報告のあり方について議論を進めた。
現在の地域医療構想については、検討会のなかでも
▽病床数に着目した議論になり医療機関の役割分担・連携につながりにくい
▽病床機能報告において必ずしも客観的でない報告がなされる
▽必要病床数と基準病床数の関係性がわかりにくい
――といった課題が指摘されていた。
そこで、新たな地域医療構想では、
▽病床区分ごとの必要量を推計して病床の将来的な必要量と基準病床数の関係を整理しつつ
▽地域で求められる役割を担う「医療機関機能」を構想のなかで位置づけるとともに
▽医療機関の報告も、診療報酬における届出などに応じた客観性を有する内容とする
――などの論点整理を進めていた。
この日の検討会で、厚生労働省は「医療機関機能の報告に係る考え方(案)」を示した。
今回は「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」「高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能」「在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能」の3つの機能に関する役割について触れている。
▼確保すべき病院数の検討に役立てる
「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」については、絶対的な医療の提供量だけではなく、地域でのシェア等の地域の医療需要に応じた役割の設定も検討すべきと指摘する。
背景として、二次医療圏ごとに救急車受け入れ台数は異なり、救急車の受け入れ台数は多くないものの、二次医療圏内の救急車受け入れの大部分に対応している医療機関があることなどを挙げた。
また「手術については、多くの症例を実施する医療機関が症例数の少ない医療機関よりも死亡率が低いことが知られている」とも言及している。
また持続可能な医療従事者の働き方や医療の質を担保するための医師や症例などの集約化につながるよう、構想区域ごとに、確保すべき病院数をアクセスの観点や区域の規模も踏まえながら検討することが必要と述べている。
▼在宅での病院の役割にも着目
「高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能」「在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能」については、地域によって病院が対応する在宅訪問患者の割合が異なるなど、地域の実情に応じて医療機関に求められる役割が変わりうることなどに留意した上で報告のあり方を検討することが必要との考えを示している。
背景として、医療機関によって1カ月あたりの在宅訪問患者数に幅があり、また二次医療圏ごとに病院が対応する在宅訪問患者の割合が異なることを示すデータも提示した。
「急性期医療の集約化」は、現行の地域医療構想でも大きな課題だが、病床数という「量」からの働きかけでは十分な成果が出ていないため、新たな地域医療構想では、症例数やそれに伴う結果などの「質」も問うことで、更に進める考えを示したとも言えそうだ。
ひとこと:医師偏在是正について
「偏在是正を進める上でまず考えるべきは、医師が少ない地域で優先的に求められるのはどういう医療かということを明確にすることだと思います。さらに言えば、総合的な内科医療を行っていただける医師を増やして地域に適切に分散していただくことではないでしょうか。そのためにはある種の医師誘導策を導入せざるを得ないかと思います。一定のインセンティブを設けたりする等を前提とした上で、何らかの規制的な手法を採り入れるという方向で検討することもやむを得ないと考えます」
藤井隆太
日本商工会議所社会保障専門委員会委員
~社会保障審議会医療保険部会 2024年9月19日
今週の数字:155%
介護保険施設における2024年6月の、対2020年6月電気代比。5年間で電気代が1.5倍に跳ね上がったことになる。(出典:全国老人保健施設協会など介護系9団体「介護現場における物価高騰・賃上げ等の状況調査」2024年10月25日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)