社会保障短信(9月27日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…病院3団体が「経営調査」、51%が経常赤字
◆ひとこと…必要病床数について
◆今週の数字…11兆5139億円
トピックス:病院3団体が「経営調査」、51%が経常赤字
▼コロナ補助金等除けば65%が経常赤字
日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会は9月18日、「2024年度病院経営定期調査―中間報告(集計結果)―」を公表した。
有効回答数は480病院で、開設主体別では医療法人46.7%、自治体、その他公的と続いている。3つの合計で全体の83.3%。
医業利益における赤字病院の割合は2022年度の76.0%から2023年度は74.7%と1.3ポイント減少したものの、経常利益は2022年度の黒字病院の割合が77.3%に対して2023年度は49.0%。過半数が赤字病院で占められる状況となっていた。
またコロナ関連補助金、水道光熱費関連補助金を除いた経常利益を見ると、2022年度の赤字病院の割合が63.1%、2023年度では64.9%と増えていた。
▼経常損失率-5.2%
稼働100床あたりの状況を見ると、医業収益は2億8174万円で前年比3.0%増、医業利益は949万円減の-2003万円、経常利益は1685万円減の-3412万円。コロナ関連、水道光熱費関連の補助金を除いた経常利益が327万円増の-8391万円となっていた。
医業収益、医業利益、補助金を除く経常利益はいずれも改善傾向がうかがえたが、経常利益は悪化しており、補助金の効果が如実に出ていると見ることができそうだ。
赤字病院ではこの傾向がさらに著しくなる。
医業収益は前年比2.5%増だったが、医業利益は727万円減の-3億3639万円、経常利益は2億2626万円減の-1億4688万円。
コロナ関連、水道光熱費関連の補助金を除いた経常利益では1155万円減の-1億9269万円となっていた。
医業利益率は-11.9%、経常利益率は-5.2%。
黒字病院では医業利益率が-1.6%、経常利益率が3.3%だった。
▼赤字病院ほど人材紹介委託費が増加
人材紹介会社に支払う紹介手数料・委託料の状況も調べている。それによると、全病院では100床あたり前年比63万円減の441万円、黒字病院では268万円減の383万円、赤字病院では119万円増の493万円だった。赤字病院ほど人材確保に苦慮している様子がうかがえる。
経費に関しては全病院で-2.8%の1億6275万円。このうち水道光熱費は11.6%減、電気料金が11.3%減、ガス料金が21.3%減だった。水道光熱費などの高騰は落ち着きを見せつつあるようだ。
開設主体別では、自治体では医業収益が前年比4.1%増、医業利益率が1.2ポイント悪化の-15.2%、経常利益率が7.6ポイント悪化の-4.1%。
医療法人では医業収益が2.1%増、医業利益率は0.4ポイント改善の-1.8%、経常利益率は4.5ポイント悪化の-0.7%だった。
▼24年6月は状況がさらに悪化
2024年6月の状況も報告している。
全病院では医業収益が前年同月比0.1%減、医業費用は0.9%増。医業利益率は1.1ポイント悪化の-10.0%、経常利益率は1.6ポイント悪化の7.9%だった。
赤字病院はさらに状況が悪く、医業収益が前年同月比1.0%減、医業費用は1.0%増。医業利益率は2.2ポイント悪化の-13.6%、経常利益率は2.8ポイント悪化の11.5%だった。
開設主体別では、自治体では医業収益が前年比0.8%減、医業利益率が4.1ポイント悪化の-21.9%、経常利益率が5.0ポイント悪化の-16.3%。
医療法人では医業収益が1.4%増、医業利益率は0.3ポイント改善の-2.8%、経常利益率は0.3ポイント悪化の-2.1%だった。
▼3団体は救済措置を要望
この調査結果を受けて3団体は「特例的な救済措置・財政支援」を求めている。
自治体立はともかく、医療法人の場合、経常利益の赤字が2期以上続くと金融機関からの融資にも支障が出てくると言われているだけに、国の対応も注目されそうだ。
ひとこと:必要病床数について
「2005年あたりから入院患者数が徐々に減少してきており、病床稼働率も低下をしてきています。近年では1年間に年間平均9000床の病床が減っています。したがいまして、実際は2025年見込みはこれより下回る可能性が高いのではないかとも思っております。今後どのようにこれを考えていくのか。この病床数に加えて病床稼働率もしっかり併せて今後新たな地域医療構想に向けましては考えていく必要があるのだろうと思います。」
江澤和彦
日本医師会常任理事
~第15回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ2024年7月10日
今週の数字:11兆5139億円
2023年度の介護費用額累計。2022年度と比較すると322,7億800万円(2.9%)増加していた。(出典:厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」2024年9月26日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)