DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
医療施設調査から読み解く
診療所の状況⑦
「医療施設調査」の結果を用いて診療所の状況に関する分析を行っていく。7回目は、在宅医療について、各種画像診断装置の導入について、データ用いて現在の状況を検証していく。
厚生労働省の「医療施設調査」は、動態調査を毎年、静態調査を3年ごとに実施し、後者は前者と比べて項目が充実している。関心がある方は、e-Stat(政府統計の総合窓口)で検索してみてほしい。
GIF・CF実施施設は減少
診療所当たり件数は増加
全国には約10万診療所あるが、上部消化管内視鏡(GIF)、下部消化管内視鏡(CF)、CTスキャンといった比較的侵襲性の高い検査の普及率は低い。普及率が高いほどいいというわけでもないが、たとえば、2020年のGIF実施率は14.2%である。
図は、これらの実施診療所数と、診療所当たりの実施件数だ。GIFとCFは実施診療所数が減少傾向の一方で、診療所当たりの実施件数は増加している。他方、CTは実施診療所数・診療所当たり実施件数ともに微増している。
都道府県別に見る実施診療所数と実施件数
表は、GIF、CF、CTに関して、人口10万人対診療所数と、診療所当たりの実施件数を都道府県別に比較したものだ。
人口10万人当たりGIF実施診療所数は、鳥取県が26カ所で最も多く、和歌山県、鳥取県が続いた。逆に、最も少ないのは沖縄県の6カ所で、千葉県、埼玉県の順となった。最も多い県と少ない県の差異は、4.0倍だった。
診療所当たりGIF実施件数は、東京都が53件で最も多く、次いで、沖縄県、宮城県の順に多かった。一方で、高知県は19件で最も少なく、京都府、長野県が続いた。最も多い県と少ない県の差異は、2.8倍であった。
続いて、CFの実施診療所数は、佐賀県が11カ所で最も多く、次いで山形県、熊本県が続いた。逆に、最も少ないのは奈良県の3カ所で、次いで滋賀県、岡山県の順で少なかった。最も多い県と少ない県の差異は3.3倍だ。
診療所当たりCF実施件数は、最も多いのは神奈川県が33件で、大分県、東京都の順に多かった。一方、福井県が10件で最も少なく、三重県、佐賀県の順に少なかった。最も多い県と少ない県の差異は、3.4倍である。
最後に、CT実施診療所数は、鹿児島県は9カ所と最も多く、徳島県、青森県が続いた。逆に、最も少ないのは神奈川県の3カ所で、京都府、滋賀県の順となった。最も多い県と少ない県の差異は、3.6倍となっている。
診療所当たりのCT実施件数は東京都が99件と最も多く、次いで神奈川県、千葉県が続いた。一方、徳島県は34件で最も少なく、富山県、鳥取県が続いた。最も多い県と少ない県の差異は、2.9倍であった。
この地域差をどのように考えるべきか。一つの傾向として、三大都市圏では配置は少ないが、特に東京都、神奈川県で診療所当たりの実施件数は多かった。
この都県では病院数が多く、家賃が高いなどを理由に、高額な医療機器の導入率は低い一方、一部診療所が健診・画像センターとして検査に特化したビジネスモデルを採用していることが、実施件数の上昇に寄与しているものと推察される。
CTの配置が多い地域は撮影患者数が多いことから、「供給誘発需要」の存在が指摘されている。また、CTが多いことで医療被曝が増えるという声もあれば、早期発見への貢献を指摘する声もある。
今後の医療提供体制において、高額医療機器の適正配置は重要だが、地域の実情に応じた検討が必要だ。機器の共同利用の推進や、不要な検査の抑制といった施策の推進も欠かせないだろう。(『CLINIC ばんぶう』2023年7月号)
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務