資金難を乗り切る! ―「介護報酬ファクタリング」
Vol.3
多様な資金ニーズにスピーディーに対応
目まぐるしく事業環境が変わるなか、経営に課題を抱えている中小介護事業者が顕在化している。資金調達に奔走するも、金融機関から満足のいく融資を受けられるとは限らず、八方ふさがりに陥るケースも少なくない。そうした状況下、早期の資金繰りに応えるサービスとして注目を集めているのが、介護報酬(債権)を活用して現金化を図る「介護報酬ファクタリングサービス」だ。 短期連載の最終回は、同事業のリーディングカンパニーであるリコーリース株式会社における代表的な活用事例を紹介する。
新規開設した事業所の
資金サイクルを健全化
正社員5人を含む職員10人、定員10人の地域密着型通所介護事業所には、新規立ち上げ時に介護報酬ファクタリングをご利用いただきました。この事業所は金融機関から満額の融資を受けたのですが、開業したのはコロナ禍の真っただ中で、想定していた利用者を確保できずにいました。ただでさえ介護報酬が入金されるのは2カ月後であるのに加え、その金額も計画以下です。
一方、家賃や水道光熱費、人件費の支払いは待ったなしで、手元キャッシュは流出するばかり。放置すると、資金は早晩枯渇することから追加の資金融資を検討するも、新規開設で実績がないうえ、計画と異なる業績の低下を理由に銀行は追加融資を渋り、稟議が通るまでに時間もかかるとのことでした。
こうした状況下、当社のサービスをインターネットで見つけ、お問い合わせいただきました。他社とも比較検討したそうですが、当社サービスは初期審査料が一切かからず、手数料率も低いのが決め手になったとのこと。導入後は請求月の中旬に前月サービス分を資金化できるようになり、資金サイクルは正常化しました。現在はコロナ禍も落ち着き、利用者は増加。手元キャッシュに余裕も生まれたので、サービスの解約を視野に入れています。
この事業所の場合、コロナ禍による業績不振が理由でしたが、新規開業時は介護報酬の入金と支払いサイクルにギャップが生まれ、先行きに不安を覚える経営者は少なくありません。こうした課題解決を目的に介護報酬ファクタリングをご利用いただくことは多く、さらには資金需要の安定後も当社のサービスを継続し、積み立てたキャッシュで拠点の拡大に着手する事業所もあります。
人材確保に活用し
事業の安定・拡大を図る
次に挙げるのは、立ち上げ間もないNPO法人で訪問介護事業所のケースです。訪問介護は通所介護と異なり設備投資を抑えられますが、スタッフの数が利用者数に比例するので、人材確保が最も重要な経営課題となります。
ところが、昨今は介護人材の不足が顕著で、他事業所より高い賃金設定や人材紹介会社の活用による手数料支払いなど、売上げに先行して発生する費用が多額になり、キャッシュフローの悪化を招いていました。訪問介護を担うヘルパーは働き口が多い分、どうしても給与や時給の高い事業所へ流れがちになり、身体介護ができるコア人材を獲得するためには相応の報酬が求められます。加えて、人材育成や福利厚生を充実させるなど、入職後の定着率向上の施策も必要で、これらの資金需要に応えるために介護報酬ファクタリングの導入を決断したそうです。
導入の結果、非正規を含め10人のヘルパーを採用でき、スキルに応じた給与を支払うことで離職者はゼロに。利用者も増え計画以上の売上げを達成することで、介護サービスに注力できる事業環境が整いつつあります。キャッシュフローにも余裕が生まれたことから、今後は管理者を補充し、事業の拡大に努める方針だと聞きました。資金需要は当面続くので、当社のサービスも継続してご利用いただいています。
資金繰りの最終手段ではなく
事業の継続・成長に役立てる
最後に紹介するのは、定員100人規模の介護老人保健施設を運営する社会福祉法人の事例です。
同施設はコロナ禍に直面したことで、利用者の入院による稼働率低下や感染者発生に伴う事業の一部休止、新規利用者の受け入れ停止など、保険請求が安定しない状況が続いていました。施設の老朽化に伴いかさんだ修繕費用はメインバンクから調達しましたが、ランニングコストの支払いに苦労して資金調達を模索するなか、銀行の担当者からの紹介で当社のサービスにたどり着きました。金融機関からすると設備投資に対する融資で手いっぱいで、日々の運転資金は介護報酬ファクタリングが適切だと考えたようです。
老健の経営はシビアで、稼働率が95%を超えないと収益はプラスにならないケースも珍しくありません。急激な悪化に対応する早急な手当てが必要だったからこそファクタリングがマッチし、この施設の場合も売掛金を早期に現金化できたために、手元資金が確保できました。経営が安定してからは、前払い率を下げることで手数料を抑え、短期的な支払いは引き続きファクタリング、設備投資は銀行を活用することで、資金計画も立てやすくなっています。老健は地域福祉の担い手であり、雇用創出の場でもあります。おいそれとなくすわけにはいかず、当社としても福祉事業の継続に貢献できたと考えています。
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以上のように、多様な資金需要にお応えできるのが、介護報酬ファクタリングの長所です。ここで挙げたほかにも、訪問看護事業所や放課後等デイサービスにご利用いただくケースもありました。日本で介護保険制度が始まり20年以上が過ぎ、社会保障費が膨らむなか、介護報酬のトレンドは引き締めフェイズに入っています。中小介護事業者の経営状況は厳しくならざるを得ず、生き残るためには柔軟な資金調達の手段を活用すべきです。介護報酬ファクタリングは、そういった方々の助けになるからこそ、資金繰りに課題を抱えている場合は、ぜひご相談いただきたいと思います。
(取材・文/大正谷成晴)