社会保障短信(3月29日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…2027年度から「新たな地域医療構想」開始
◆ひとこと…医療の提供体制と法規制について
◆今週の数字…-1.1%
トピックス:2027年度から「新たな地域医療構想」開始
▼かかりつけ医や介護も含め検討
社会保障審議会医療部会の3月21日の会合で、「新たな地域医療構想」検討内容や工程の案が示された。地域医療構想は2025年までの取り組みとされているが、それ以降も継続することになる。
2040年頃を視野に入れつつ、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大等に対応できるよう、病院だけでなく、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め、地域の医療提供全体の地域医療構想として検討する。
2022年12月28日の社保審医療部会「医療提供体制の改革に関する意見」では、「病院のみならずかかりつけ医機能や在宅医療等を対象に取り込み、議論を進めた上で、慢性疾患を有する高齢者の増加や生産年齢人口の減少が加速していく2040年頃までを視野に入れてバージョンアップを行う必要がある」とし、「このため、『治す医療』を担う医療機関と『治し、支える医療』を担う医療機関の役割分担を明確化する」ことも求めていた。
▼外来や在宅体制の議論は不十分
厚生労働省は現在の地域医療構想についての主な課題として
▽2025年の病床の必要量に合計・機能別とも近づいているが、構想区域ごと、機能ごとに乖離している
▽外来や在宅医療を含めた医療提供体制全体の議論が不十分
▽在宅を中心に入退院を繰り返し最後は看取りを要する高齢者を支える医療を提供する必要があり、その際はかかりつけ医機能の確保、在宅医療の強化、介護との連携強化等が必要
▽地域ごとに人口変動の状況が異なる
▽医師の働き改革を進めながら地域で必要な医療提供体制を確保する必要がある
――などを挙げている。
▼介護保険事業における市町村の役割も検討
これを受けた検討事項案は、大きく「2040年頃を見据えた医療提供体制のモデル」「病床の機能分化・連携のさらなる推進」「地域における入院・外来・在宅等を含めた医療提供体制の議論」の3つが示されている。
このうち「地域における入院・外来・在宅等を含めた医療提供体制の議論」では、入院・救急・外来・在宅・介護連携・人材確保等を含めた医療機関の役割分担、連携のあり方に関する議論を求めるほか、外来、在宅、看取り、医療従事者などの将来推計や外来・在宅・介護連携等の議論を行う区域、構成員、進め方も検討するという。さらに介護保険事業等を担う市町村の役割もテーマになる。
▼検討会を3月下旬に開始
このための検討も、「新たな地域医療構想等に関する検討会」を設けて行う。病院関係者が中心だった既存の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」のメンバーに加え、県の保険福祉部長や市の地域包括ケア課長、全国介護老人保健施設協会会長などが加わっている。
3月下旬に第1回の検討会を開き、関係団体などからのヒアリングや論点の提示・議論を進め、夏~秋頃に中間まとめ、年末に最終まとめを作成する予定。
その後、2025年度に「新たな地域医療構想に関するガイドラインの検討・発出」、2026年度に新たな地域医療構想の検討・策定、2027年度に新たな地域医療構想の取り組みを、第8次医療計画の中間見直し後に開始する。
ひとこと:医療の提供体制と法規制について
「医療法では、もともと病院と診療所が診療を行う場所であったわけですけれども、在宅医療の推進が求められていく中で、居宅も療養の場所として認めたわけですね。これは、ご存知のとおり医療法の法改正によって行ったわけです。今回、見ていると、例えば通所介護事業所の場合はどうなのかということについて、居宅等の解釈問題として議論しているわけですけれども、医療の提供形態がオンラインに変わっているのですから、正直に言えば、かなり無理をしている感が否めないですね」
島崎謙治
国際医療福祉大学大学院教授
~2024年2月9日 第106回社会保障審議会医療部会
今週の数字:-1.1%
2022年度における一般病院の医業利益率。急性期一般入院料を算定する病院は、医療材料費率や経費率の上昇が響いている。コロナ患者受入実施病院は、補助金を除外した医業利益率・経常利益率が低下し、いずれもマイナスだった。(出典:福祉医療機構「2022年度 病院の経営状況について」2024年3月8日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)