制度と経営に強くなる!
「実地指導」から「運営指導」へ
変更点と準備すべきこととは
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
オンライン活用可で名称も変更
介護保険施設などに対して行われる各行政機関の指導の名称が、2022年4月より「実地指導」から「運営指導」に変更されました。これは指導の内容の一部においてオンライン会議システムなどを活用することが可能となったために、対象の施設などに訪問して実地ですべてを確認する必要がなくなったことに合わせて名称も変更されたものです。
運営指導は①利用者一人ひとりが受けた個別のサービスの質およびサービス提供の基礎である施設設備を確認する「介護サービスの実施状況指導」、②人員および運営の基準に規定する運営体制を確認する「最低基準等運営体制指導」、③加算等の介護報酬請求の適正実施の確保のために行う「報酬請求指導」――を原則実地で行いますが、実地でなくても確認できる②および③の全部または一部事項は、オンラインの活用が可能となっています。
具体的にはZoomなどを活用しての運営指導が想定されます。ただ、指導を受ける施設では関係書類をPDFなどの電子データで保管していることが前提となります。現状、ほとんどの施設が紙で保管をしていると思われますので、実際にオンラインで指導を受けられる施設は限定的かもしれません。
指導内容の効率化
運営指導は原則、指定の有効期間(6年)に1回、施設系サービス・居住系サービスについては3年に1回の頻度で行うことが望ましいとされています。これは今までの実地指導と変わりません。運営指導の所要時間については、効率的な実施が求められることから短縮することが必須とされています。これは施設・自治体双方の負担軽減や、多くの施設に対して運営指導を行うことでサービスの質の確保、利用者の保護を図る観点からです。そのため、確認すべき内容を確認項目および確認文書として、全サービスで規定されました。図表に記載された確認項目および確認文書以外は、運営指導では見なくても良いとされています。
確認文書については、運営指導を行う年度の前年度から直近(おおむね1カ月程度前まで)の実績に係るものが対象で、利用者への記録等については原則3人以内、居宅介護支援事業所については介護支援専門員1人あたり1~2人の利用者について、その記録等を確認することとされています。
当然、その3人程度の関係文書等の確認、直近の文書の確認で不明な点が多く発見されるようであれば、他にも問題がある可能性が高いことから監査の実施も考えられます。
また、これらの確認項目および確認文書は、指定基準である人員基準、設備基準、運営基準に関するものです。これとは別に、介護報酬に関する確認・指導は従来どおり行われることとなります。加算などについては、算定要件をしっかりとチェックしておく必要があります。
図表 運営指導で確認すべき項目・文書
資料:厚生労働省 介護保険施設等運営指導マニュアルについて「別添1確認文書・確認項目一覧」より一部抜粋
内部監査等の事前対策が重要
運営指導になり、指導の標準化・効率化が推進されていることは事実です。しかし、指導時に確認される文書が限定されるからといって手を抜いていいということではありません。日々のサービス提供に追われて記録等が後手になり、結果的に運営指導の直前に慌てて書類を整備するという事業所が多いのではないかと推察します。厚生労働省が作成した介護保険施設等指導指針でも、「基準等への適合性に関し、介護保険施設等による自己点検を励行する」と明記されています。普段から各基準や報酬算定要件で求められている記録、文書を整備できるように自己点検シートなどを活用しながら、内部監査システムを構築しておくことが重要です。
内部監査システムを構築するためにも、まずは現時点での各種文書の整備、介護報酬の算定が正しく行われているかのコンプライアンスチェックを外部の監査人によって実施してみてもいいでしょう。外部監査により、自社の課題と運営指導のポイントを確認します。そこから自社独自のコンプライアンスマニュアルやチェックリストを作成し、活用することによって内部監査を恒常的に行う体制が構築できます。
内部監査と並行して、年に1~2回は外部監査を活用し、いつでも運営指導に対応できる体制を構築しておくことがおすすめです。(『地域介護経営 介護ビジョン』2023年5月号)
C-MAS札幌中央支部
星田会計事務所
メディケア事業部部長
やまだ・たかひろ●1982年札幌生まれ。2009年星田会計事務所入社。札幌市で医業経営支援、介護経営支援に注力しており、実地指導の支援も延べ50事業所を超える
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