社会保障短信(10月30日号)

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トピックス…在宅充実に向けた看護と歯科の評価法を議論
ひとこと… 医療DXについて
今週の数字…7.3%増

トピックス:在宅充実に向けた看護と歯科の評価法を議論

▼訪問看護と歯科訪問診療を議論
中央社会保険医療協議会総会では、10月20日に「在宅(その3)」、10月27日に「在宅(その4)」が議題となり、それぞれで訪問看護と歯科訪問診療についての課題と論点を示した。

▼訪看事業所で看護職以外の医療職が増加
訪問看護では論点として
▽24時間対応体制の確保
▽機能強化型訪問看護ステーション
▽集合住宅等における効率的な訪問看護等
▽精神科訪問看護
▽医療ニーズの高い利用者の退院支援
▽周産期および乳幼児への訪問看護
▽オンライン請求開始に伴う訪問看護療養費明細書等の対応
▽介護保険における訪問看護と制度上の差異
――が示された。

このうち、24時間対応体制の確保に関しては、「看護職員の精神的・身体的負担が大きい」「夜間・休日対応できる看護職員が限られているため負担が偏る」ことなどが挙がっている。

また負担軽減策に取り組んでいる訪問看護ステーションは、厚生労働省の調査によると67.9%で、タブレットやスマートフォンなどICTの活用、夜間対応した翌日の勤務体制の調整、オンコール対応者のフォロー体制などが取り組み内容として多く挙がった。勤務間インターバルをとっていると答えた事業者は21.6%にとどまっている。

訪問看護ステーションにおける職種別従事者数は看護師のほか、准看護師、理学療法士、作業療法士などがおり、いずれの職種の従事者も増加している。看護職員の割合は69.9%だが、従事者全体に占める割合は減少している。

こうしたことを踏まえて、論点では「訪問看護における持続可能な24時間対応に係る連絡体制のあり方や負担軽減の取り組みを評価することについてどのように考えるか」を示した。

また医療ニーズの高い利用者の退院支援に関する議論では、医療機関を退院した利用者がいる事業所のうち、66.6%が退院当日に訪問看護を提供しており、退院当日に複数の訪問看護を行った際の理由として、「医療処置」「急変緩和」「苦痛の緩和」が多かったとのデータが示された。

▼24年6月からオンライン請求義務化
また訪問看護は、2024年6月からレセプトについてオンライン請求とオンライン資格確認を開始する。6月に施行、適用は翌7月請求分からとなる。さらに保険証を廃止するタイミングである2026年秋の施行予定で義務化に踏み切る予定だ。

これに合わせた論点として、「より質の高い医療・看護の実現に向けた、レセプト情報の利活用の観点から、傷病名の記録方法等を標準化していくこととしてはどうか」が掲げられた。
現在、訪問看護療養費明細書の「主たる傷病名」は、主治医が公布した訪問看護指示書に基づいて記載している。オンライン請求開始後は、訪問看護療養費明細書の様式と記載要領を変更し、訪問看護指示料において、傷病名に対応する7ケタの傷病名コードを訪問看護指示書に基づいて記録することになる。

▼医科歯科連携を促す方策が論点に
在宅歯科医療についての論点では
▽歯科訪問診療の提供体制
▽歯科訪問診療における口腔の管理
▽小児に対する歯科訪問診療
▽歯科訪問診療における連携
――の4点が挙がった。

このうち「連携」に関しては、「在宅医療を担う医科の医療機関や介護保険施設等の関係職種、介護支援専門員等との有機的な連携について、ICTの活用も含め、どう考えるか」とのテーマが投げかけられた。

在宅療養支援歯科診療所では、23.8%で病院への歯科訪問診療が行われているが、一方で医科の訪問診療と合同での歯科訪問診療は、病院とは1.1%、医科診療所とは2.1%にとどまっている。
また介護支援専門員のうち、利用者の口腔に関する情報を提供しているのは30.5%、歯科医師・歯科衛生士へ依頼して情報提供を受けた割合は50.8%となっている。

他の医療機関などの関係者との情報共有・連携にICTを活用している割合は、在宅療養支援歯科診療所で21%、それ以外で4.6%となっている。
活用しているICTはメールが70%弱で最多、在宅療養支援歯科診療所では地域情報連携ネットワーク、グループチャットの使用もそれぞれ29.3%、14.4%などとなっていた。

同時改定に向けた中医協と社会保障審議会介護給付費分科会の意見交換会では、「歯科治療や定期的な口腔の管理は誤嚥性肺炎や感染を予防するうえで非常に重要」との指摘が出ている。
在宅療養患者の生活の質を高めるという観点でも歯科治療・口腔ケアの充実は欠かせないだけに、どのような評価体系を描くか、注目される。

ひとこと:医療DXについて

「これは医療機関同士とか、介護の連携ということは、まさに医療・介護全般にわたるインフラ整備ということに当たるのではないかと思うので、道路において信号機を作るようなものだと思うんですね。ですから、これはやはり診療報酬で賄うというものではなくて、やはり国とか都道府県がきちんとインフラ整備として医療・介護全体を見るようなDXについて取り組んでいただきたいと思っています。」
泉並木
日本病院会副会長
~2023年9月29日 社会保障審議会医療部会

今週の数字:7.3%増

病院給食の食材料価格における、2022年度の2013年度比。仮に2013年の1日1人あたりの材料価格を700円とした場合、2022年は751円となる。入院時食事療養費は据え置きが続いている。(出典:日本メディカル給食協会「2024年度(令和6年度)診療報酬改定に係る入院時食事療養費の見直し要望について」)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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