DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
第53回
医療施設調査から読み解く
診療所の状況②

以前に分析した「医師調査」からは読み取れない診療所の状況や動向について、「医療施設調査」のデータをもとに分析していく。今回は、夜間・土日の診療状況や特殊外来の開設状況を読み解いていく。

引き続き、厚生労働省の「医療施設調査」から診療所の状況を検証する。同調査は動態調査を毎年、静態調査を3年ごとに実施し、後者は前者と比べて項目が充実している。関心がある方は、e-Stat(政府統計の総合窓口)で検索してみてほしい。今回は、夜間・土日の診療や、禁煙外来・助産師外来などの開設状況を見ていこう。

夜間土曜診療はわずかに減少
日曜診療については増加

図は、2002年から20年にかけた3年ごとの、①月曜午後6時以降、②土曜午後、③日曜午前――に診療していると報告した診療所数の推移だ。
①の診療所数は02年から11年にかけて2万3000から3万8000へと急増したが、以降はわずかな減少傾向にある。②は、02年から20年にかけて2万2000から2万と、こちらも微減傾向だ。他方、③は02年から20年で4000から6000と、絶対数は少ないが増加傾向である。

前回取り上げたとおり、診療所数全体は微増傾向で、開業後すぐの黒字化が難しくなっているとも言われるなか、特に都市部では夜間土日診療の「コンビニクリニック」チェーンや、美容クリニックの増加などの印象を持っていた。しかし、少なくとも全国傾向では、夜間土日診療が必ずしも増加しているわけではなさそうだ。
推測だが、高齢医師1人の診療所もまだ多い状況では、診療時間を縮小するところも多いことが影響している可能性も考えられる。

夜間土日診療・特殊外来の人口10万人当たりの地域差

次に、人口10万人当たりの夜間土日診療や特集外来の設置状況を、都道府県別に見ていく(表)。
「月曜午後6時以降」診療する診療所数は、京都府が77カ所で最も多く、次いで大阪府、滋賀県だ。少なかったのは岩手県、高知県、秋田県の順だ。当然とも言えるが、多い場所は人口も比較的多いかつ、特に関西圏に集中していた。最も多い場所と最も少ない場所の差異は15.1倍と、かなり大きい。
さらに、「月曜午後8時以降」の診療所数は、東京都が3.9カ所で最も多く、次いで京都府、熊本県。少なかったのは岩手県、大分県、香川県だ。「月曜午後6時以降」と少し異なる傾向だが、こちらも最も多場所と最も少ない場所の差異は9.7倍と、かなり大きい。
「土曜日午後」に診療する診療所数は、徳島県が45カ所で最も多く、栃木県、東京都が続いた。少なかったのは北海道、岩手県、和歌山県の順だ。最も多い場所と最も少ない場所の差異は7.3倍。一方、「日曜午前」の診療所数が最も多かったのは東京都の9カ所、神奈川県、埼玉県の順に多く、福井県、宮崎県、石川県の順に少なかった。最も多い場所と最も少ない場所の差異は6.6倍だ。

続いて、「禁煙外来」がある診療所数は、徳島県(16.4カ所)で最も多く、和歌山県、佐賀県が続く。少なかったのは、埼玉県、千葉県、高知県の順だ。最も多い場所と最も少ない場所の差異は2.3倍と、別の項目と比べて小さい。他方、「助産師外来」がある診療所数は、鳥取県(0.9カ所)が最も多く、次に鹿児島県、愛媛県、秋田県、青森県、福島県の順に少なく、秋田県では0カ所だった。

以上、夜間土日診療や特殊外来の開設状況は都道府県ごとの差異が大きいことがわかった。自院の診療機に能を強化するうえで、診療時間や特殊外来の観点から検討する余地があるだろう。(『CLINIC ばんぶう』2023年2月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務

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