社会保障短信(8月28日号)

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トピックス…地域包括ケア病棟、慢性期医療の議論も開始
ひとこと…高齢の救急患者について
今週の数字…5.8%

トピックス:地域包括ケア病棟、慢性期医療の議論も開始に

▼緊急患者受入、医療区分が議題に
8月10日の中央社会保険医療協議会入院・外来医療等の調査・評価分科会では、地域包括ケア病棟、慢性期入院医療についての議論が行われた。
地域包括ケア病棟では「自宅等からの緊急患者の受け入れ」の状況についての分析、慢性期入院医療については「医療区分」についての分析が報告されている。

▼地ケア病棟、直接入院患者の傾向
地域包括ケア病棟に関する論点として、同病棟に入棟した患者のうち、救急搬送後、直接入棟した患者の特徴を踏まえてどう評価するか――が提示された。

それに先立って示された資料によると、救急搬送後、他の病棟を経由せずに地域包括ケア病棟に直接入棟した患者の特徴として、
▽医療的に不安定
▽医師による診察の頻度必要性が高い
▽看護師による直接の看護提供の頻度・必要性が高い
▽リハビリ実施単位数は低い
――といった傾向が見られた。

さらに、救急搬送後、直接入棟した患者では、「食物および吐物による肺臓炎」「腰椎骨折 閉鎖性」といった主傷病の患者が多かった。また医療資源投入量を見ると、緊急搬送、直接入棟の患者は包括範囲の医療資源投下量が多い傾向もうかがえた。

また救急搬送後、直接入棟した患者の割合は、多くの病棟・病室で5%未満だったが、調査対象の1653施設のうち7.8%は15%に達していたという。

▼短期滞在手術の状況に触れる
地域包括ケア病棟における短期滞在手術の状況についての分析も報告された。それによると、入棟患者のうち短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者の割合は「0%」の施設が58.7%だった。ただし「10%以上」の施設も9.5%あった。

また、同基本料3を算定する患者の割合が10%以上の地域包括ケア病棟は、割合が0%である同病棟と比べて
▽家庭から入棟した患者割合が高い
▽自宅等に退棟した患者割合が高い
▽平均在棟日数が短い
――といった傾向が見られた。

▼医療区分、疾患・状態と処置等で違い
慢性期入院医療については、医療区分についての分析のほか、中心静脈栄養の適応状況などが報告された。

療養病棟は2018年度診療報酬改定でデータ提出加算が要件となっている。これを受けて同分科会でも「同加算のデータを用いて医療区分についての分析を実施すべき」といった意見が出ていたという。

そこで分析したところ、
▽医療区分に応じて医療資源投入量が増える
▽同一の医療区分においても医療資源投入量にばらつきがある
▽医療区分によって医療資源投入量の内訳が変わる
▽疾患・状態としての医療区分と、処置等としての医療区分は医療資源投入量の分布と内訳が異なる
――などの傾向が見られたと報告した。

▼中心静脈栄養の実施状況にも言及
中心静脈栄養は、実施している状態は医療区分3に該当することから、あえて中心静脈カテーテルを抜去せず、留置するケースが懸念されている。このため2020年度改定で、摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合は医療区分2の点数にするなどの見直しが行われた。

今回示された調査内容では、実施患者数は20年度改定前後で大きな変化がなく、
▽経口摂取に移行した患者は4.1%
▽摂食・嚥下機能の回復に必要な体制がない医療機関は32.7%
――といったことが示されていた。

さらに、
「消化管が機能している場合は、経腸栄養を選択することが基本である」
「経腸栄養が禁忌となるのは、汎発性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、麻痺性イレウス、難治性下痢、活動性の消化管出血などに限定される」
とも指摘している。

これまでも問題視されてきた療養病棟における中心静脈栄養実施は、今回の改定でさらに厳格な適用基準が示されそうだ。

ひとこと:高齢の救急患者について

「高齢者施設や自宅で、昨日までは日常どおりに生活されていましたが、突然ぐったりして意識レベルが低下、血圧も低下して救急搬送された患者が、最終的には尿路感染症や誤嚥性肺炎であったという診断になるケースも多くて、併存疾患の多い高齢者の疾患は、決して想像されているような、あまり重症感がなくゆっくりと発症するものではなく、介護施設の現場及び在宅治療の現場では、患者の状態の急変のために、救命のために救急搬送を依頼し、救急病院に搬送されている状況でございます。」
島弘志
日本病院会副会長
~2023年5月17日 中央社会保険医療協議会総会

今週の数字:5.8%

介護医療院の収支差率(2021年度決算税引前(コロナ補助金を含む)。2019年度は5.2%、2020年度は7.0%だった。全サービスの平均は3.0%。
(出典:第221回社会保障審議会介護給付費分科会【資料3】介護医療院」 2023年8月7日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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