社会保障短信(8月14日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…介護3施設の議論が始まる
◆ひとこと…急性期充実体制加算について
◆今週の数字…3340点
トピックス:介護3施設の議論が始まる
▼施設内での医療提供が議題に
社会保障審議会介護給付費分科会は8月7日の会合で、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院の介護保険施設系サービスの現状と課題、論点などが議題になった。いずれの施設でも介護と医療の複合的な提供についてのあり方、強化の方向性などが論点になっている。
施設サービスの平均要介護度割合を見ると、特養が3.9、老健が3.2、介護医療院が4.2となっている。
また施設内で提供可能な医療の割合を見ると、「経鼻経管栄養」は老健41.7%、介護医療院93.7%、特養28.7%。「喀痰吸引(1日8回以上)」が老健50.3%、介護医療院83.7%、特養24.1%。「酸素療養(酸素吸入)」が老健66.1%、介護医療院90.5%、特養53.9%となっていた。
▼配置医不在時の急変対応に課題
特養の論点では「今後も中重度の高齢者が増加することが見込まれるなか、入所者のニーズにこたえ、安定的にサービスを提供するために、どのような方策が考えられるか」が示された。
資料で引用された「特別養護老人ホームにおける医療ニーズに関する調査研究事業」によると、特養における医療処置の提供方針では、「摘便」「浣腸」「褥瘡・創傷の処置」は8割以上の施設が入所者を受け入れるとしている一方で、「医療用麻薬以外の点滴以外での投与」「透析が必要な入所者の日常的な観察・総合」などは7割以上の施設が入所を断ると答えている。
特養1施設あたりの配置医師数は「1人」が66.7%で最も多く、平均では1.5人だった。雇用形態は嘱託などの雇用契約が62.9%、医師の平均年齢は62.6歳だった。常勤の看護職員数は4~6人未満が最も多く33.1%、平均は4.2人だった。
配置医が果たしている役割は「日常の健康管理・慢性疾患の疾病監理のための診察・治療」が最多で93%、次いで「処方」が90.5%。果たしている役割のうち負担に感じるものは「急変対応(施設内で勤務している時間以外での対応)」(29.4%)、「急性疾患の診察(予定された定期の診察以外の診察)」(17.6%)が目立って多かった。
また配置医が施設にいない時間帯に生じた急変時の対応法は「配置医によるオンコール対応」が最も多いが、「原則、救急搬送」が次に続いている。「配置医師緊急時対応加算」が設けられているが「加算なし」が93.9%を占めた。算定していない理由としては「配置医師が必ずしも駆けつけ対応ができないため」「緊急の場合はすべて救急搬送で対応しているため」が多かった。
▼薬剤調整は主治医との連携が課題
老健については「在宅復帰・在宅療養支援機能の促進に向け、医療ニーズの対応力の強化、看取りへの対応の充実、リハビリテーションの充実、適切な薬剤調整の推進等の観点からどのような方策が考えられるか」が論点として示された。
このうち看取りについては、「ターミナルケア加算」の算定人数は年々増加傾向にあり、2012年12月が1076件だったのに対し、2022年12月は2785件となっている。
また薬剤調整の取り組みについては、必要性を高いと考える施設は95.5%だったが、実際に積極的に取り組んでいる施設は52%にとどまっていた。「かかりつけ医連携薬剤調整加算Ⅰ~Ⅲ」も設けられているが、算定率は11.5%。算定が困難な理由として、入所者の処方内容を変更する可能性があることについて、「入所者の主治医から合意を得ること」(48.3%)、「入所者の主治医に対して説明すること」(41.7%)などがあるほか、「入所者のこれまでの薬剤調整の経緯等について、入所者の主治医から情報を得ること」(40.4%)も挙がっていた。
▼死亡退院が5割超
介護医療院に関する論点としては「看取りを含め、引き続き必要な医療および介護を提供するためにどのような方策が考えられるか」が挙がった。
入所者像は医療区分1、ADL区分3が最多で、年齢層では85~94差異が最も多く49.1%。障害高齢者日常生活自立度の割合はCが最多で63.3%。認知症高齢者の日常生活自立度の割合はⅣが最多で42.1%だった。
傷病は認知症が50.8%、高血圧が44.1%と多く、処置の状況はリハビリテーションが76.7%、次いで喀痰吸引が32.4%だった。
退院先は死亡退院が52.2%、医療機関が19.8%、老健が9.9%、家庭が7.8%などとなっていた。厚労省は「看取りまで対応を行う場の一つとしての機能を果たしている」と評価している。ただし死亡退院者のうち、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づいた対応を行った割合は53.2%となっていた。
介護3施設の医療提供を充実させるうえでの要件として、施設内はもちろん、施設外の地域の医療機関との連携も重要という見方ができる内容だった。このあたりを介護報酬、あるいは診療報酬でどう後押ししていくかが注目される。
ひとこと:急性期充実体制加算について
「例えばこの中では大都市圏、大都市部で半径10キロ以内にこの急性期充実体制加算を届け出ている病院がひしめき合っているというところもあれば、一方では、申請をできていない都道府県がここに5つ存在しているということで、ある意味、1つは手術などの実績の要件が高過ぎるということもあろうかとは思うのですけれども、そうすると、この未申請の都道府県でも手挙げできるように要件を緩める、それもひとつあるのかもしれません。例えば加算2をつくってということも、そういう必要もあるかもしれませんけれども、そうしますと、ますますそういった都市部にまた申請できる病院が増えてしまうという、こういった都道府県の格差がなかなか難しい問題だとは見ております」
津留英智
全日本病院協会常任理事
~2023年7月6日 入院・外来医療等の調査・評価分科会
今週の数字:3340点
地域包括ケア病棟入院料1の1日当たりのレセプト請求点数。急性期一般入院料1は4651点、急性期一般入院料4~6は3919点、地域一般入院料1は3178点、回復期リハビリテーション病棟入院料1は3986点となっている。(出典:令和4年度調査結果〈速報〉概要)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)