栄養指導で”あるある!こんなこと”
第101回
料理ができなくても電子レンジの活用で
10kgの減量に成功!!

Qさんはほかのクリニックで肥満を指摘され、血圧も高いことから、減量と食生活の見直しを指導してほしいと、管理栄養士のいる当クリニックに紹介となりました。

内科で肥満を指摘され10kgの減量をめざす

田村:こんにちは。A先生からのご紹介ですね。減量と食事内容の確認とのことですが

Qさん:はい

田村:まずは身長と体重ですが、栄養指導指示書に書かれている数字で間違いないですか?

Qさん:はい、そのぐらいです

田村:わかりました。次回からはこちらでも毎回、体重測定させていただきますね

Qさん:は身長173cm、体重109kg、BMI3・4kg/㎡と、確かに高度肥満状態でしたが、見た目は若さのせいか、ものすごく太っているという印象はありませんでした。

田村:今回はA先生から減量を勧められたようですが……

Qさん:そうなんです。風邪で受診しましたが、血圧が高くて。このままでは糖尿病も心配なので減量することを勧められました。でも、自分では食事をどうしたらいいのか不安です

田村:そうですか。A先生からはどのぐらい減量するように言われてますか?(実は紹介状には書いてあるのですが、本人にも確認しました)

Qさん:最低でも10kg、できれば15kgぐらいと

田村:そうですか(ここで紹介状を本人の前で確認)

Qさん:糖尿病にはまだなりたくないので、よろしくお願いします

田村:わかりました、一緒に頑張りましょうね。20歳くらいの時の体重はどのぐらいでしたか?

Qさん:その頃は66kg後半ぐらいでした

田村:体重が増えだしたのはいつ頃からですか?

Qさん:仕事を始めてからストレスで食べるようになって

田村:そうですか。料理は普段、されていますか?

Qさん:まったくしません

田村:まったくですか?

Qさん:はい。できないっていうか、嫌いで

田村:普段のお食事やお昼は?

Qさん:前は実家にいたので、食事やお弁当は母がつくってくれていました。今は彼女と住んでいるのですが、コンビニやスーパーのお惣菜やお弁当で済ませています。お昼は冷凍のおかずをチンして、お弁当に詰めていきます

田村:ご飯は炊きますか?あと汁物とか……

Qさん:ご飯もパックのものとか、汁物もインスタントのみそ汁やスープです

田村:そうなんですね。それなら、まずはスーパーやコンビニのお惣菜の選び方を工夫しましょうか

Qさん:選び方ですか?

田村:はい。野菜を多くとれるように選んでください。たとえば、お弁当もほかと比べお野菜が多い物を選ぶとか。少ない場合はカット野菜のサラダでもいいので食べるようにしましょう。あと、お惣菜も揚げ物やお肉ばかりでなく、焼き魚や魚の煮付け、野菜の和え物など和食を意識してください。お弁当ですが、ご飯が多いので、3分の1は残すようにしましょう

Qさん:わかりました

田村:それから、野菜から先に食べること。ゆっくりよく噛んで食べることもやってみてください。ところで運動の習慣はありますか?

Qさん:前に1回だけ、歩いたり食事量を減らして少し体重を落としたことがあるんですが、彼女と住むようになってまた戻ってしまって

田村:そうですか。運動はもう少しあとにして、まずは野菜を意識してとること、野菜から食べること、ゆっくりよく噛んで食べること、この3点を実践してください。彼女にも野菜を多く選ぶように話してください

Qさん:やってみます

とりあえず初回はこのように指導し、1ヶ月に1回のペースで栄指導をしていくことにしました。そして2回目の指導では……。

電子レンジを活用し苦手な自炊で減量に成功

田村:こんにちは、体重ですが前回が109kgで、今月は107kgですね

Qさん:あまり減ってないですね

田村:増えてないし、ちゃんと2kg減っているので頑張りましたよ。食事のほうはどうですか?

Qさん:言われたことは頑張ってやっています。ただ、お弁当のご飯を全部食べてしまうことが多くて……。野菜はとっていますし、野菜から食べるようにはしています

田村:では次回までに、ご飯の調整を頑張りましょうか

Qさん:はい

このような指導から半年後……。

田村:体重減ってきましたね。最初から5kg減っています

Qさん:自分ではあまり減った気がしないですが、同僚からはやせたねって言われます

田村:順調ですよ。あまり一気に落としてもよくないので、1カ月に1~2kgくらいのペースがいいんです。一気に減らすと必ずリバウンドにつながります。じっくり、しっかり、ゆっくり落とすほうがいいんです

Qさん:だから以前はすぐに戻ったんですかね?2カ月で7kg落として、あっという間に落とす前より増えてしまって……

田村:減量とリバウンドを繰り返すのが一番の失敗です。リバウンドせず減量するためには、焦らないことです

Qさん:食事ですが最近、自分で電子レンジ調理はするようになりました。野菜を温野菜にしたり、パスタもレンジでつくってみたり

田村:それはいいですね。味付けも自分好みにできますね

Qさん:最近、お惣菜は味が濃くて

田村:野菜を食べるようになると味覚も改善されるので敏感になるんです

Qさん:それでかな。濃くて食べたくなくて、自分でやってみようかなって思います

田村:お魚もご飯も今は電子レンジで調理できますからね

Qさん:焼き魚も専用の皿でやりました。おいしかったです

田村:男性でも調理に興味が出てきたこと、味覚が変わってきたこと、こういうのが大切なんですよ

そして栄養指導開始から1年が経った現在、体重は109kgから99kgと10kgの減量に成功しています。本人は20kg減らしたいと頑張っています。そろそろ停滞期に入る時期なので、ウオーキングを少し始めてみるようお話ししています。そして……。

Qさん:管理栄養士さん、実は正式に彼女と入籍したんです。相変わらず食事は電子レンジを使って、僕が主につくりますが、彼女もちょっとは料理に興味が出てきたようで、この前パスタをつくってくれました

田村:まぁ~、それはおめでとうございます。よかったですね。私もうれしいです

Qさん:あまり苦痛なく、頑張りすぎなくても減量できて、管理栄養士さんのおかげです

田村:Qさんがちゃんと頑張ったからですよ。あと少し、頑張りましょうね

Qさん:あと10kgは落としたいので、よろしくお願いします!

今は電子レンジで何でもつくれる便利な世の中です。健康のために、男性も料理にどんどん挑戦してほしいと思います。(『ヘルスケア・レストラン』2021年12月号)

田村佳奈美
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士

たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング