第14回
「かかりつけ医の制度化」反対は誰のための反対か

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かかりつけ医の制度化を進めたい政府と
反対し続ける日医

財政制度等審議会財政制度分科会(分科会長=榊原定征・東レ社友/関西電力取締役会長)は5月25日、春の建議として「歴史の転換点における財政運営」を取りまとめた。

「医療分野で求められる今後の取り組み等」で真っ先に挙げられたのが、「地域医療構想の推進やかかりつけ医の制度化」である。さらに外来医療の項目では、「かかりつけ医およびかかりつけ医機能の法制上の明確化」が掲げられた。
その肝の部分では、かなり厳しい書きぶりで制度化を求めている。少し長いが引用する。

コロナ禍の教訓を踏まえ、「いつでも、好きなところで」という意味で捉えられがちで、受診回数や医療行為の数で評価されがちであった「量重視」のフリーアクセスを、「必要な時に必要な医療にアクセスできる」という「質重視」のものに切り替えていく必要がある。このような転換が、国民の上手な医療のかかり方に関する広報、好事例の横展開などといった通り一遍の方策では到底果たし得ないことは、もはや自明である。制度的対応が不可欠であり、具体的には、地域の医師、医療機関等と協力している、休日や夜間も患者に対応できる体制を構築している、在宅医療を推進しているといったかかりつけ医機能の要件を法制上明確化すべきである。その上で、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである。
このような取り組みを伴って初めて、必要な機能を備えたかかりつけ医が、平時において、高齢化時代における地域包括ケア・在宅医療の担い手となる一方、こうしたかかりつけ医が「緩やかなゲートキーパー」機能を発揮することとなる。感染症有事には、かかりつけ医は、患者情報の事前管理により、PCR 検査受検相談、発熱外来、オンライン診療、宿泊・自宅療養の健康観察を安全で迅速、効果的に包括的に提供し、保健所の負担を軽減することが期待される。

これに対し日本医師会(日医)は素早く反応。6月1日には「財務省財政制度等審議会の建議について」と題したコメントを発表、「『かかりつけ医機能の要件を法制上明確化する』ことが医療費抑制のために国民の受診の門戸を狭めるということであれば認められません」と強調した。
ただし、「必要なときに適切な医療にアクセスできる現在の仕組みを守ります」と明言しており、一定の留保の下でかかりつけ医の制度化を認める布石を打っているとも見える。

一方、病院団体の幹部からは、かかりつけ医機能の制度化を容認する声も出始めた。「かかりつけ医機能が適切に発揮される制度の整備を進めるべき」などの意見だ。

      ※

6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)では、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と明記された。政府の意思として、かかりつけ医(機能)の制度化を推進する姿勢を明確にしたわけだ。

そもそも、保険者などの支払側は、かかりつけ医の制度化推進の立場だ。病院団体が「容認」すれば、国民の目には日医の反対が「自らの利潤追求」のためと映ることになるだろう。それでなくても、COVID-19対応では国民から厳しい視線を向けられている。
果たして日医はどうするのか。「容認」に転じれば、スピード感をもって制度化が実現することになるのではないか。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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