制度と経営に強くなる!
実地指導対策専門家から見た
「科学的介護(LIFE)」への警鐘[2]
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
本当にLIFEって働いている自分の役に立ってくれるの?
(前号からの続き)
そもそも、介護事業者にとっても、国にとっても、科学的介護は「前代未聞の取り組み」であり、全国すべての事業所に参加させようというのだから、われわれも国も相当の「覚悟」がいるのである。その覚悟をもって、国はわれわれに、より精度の高い、利用者の自立支援のためのフィードバックを期待しているのであるならば、ある程度の「正解」や「モデル」を出してくれるものではないのか――。われわれも国に対して、科学的介護推進体制加算の名に相応しいフィードバックを期待したい。
とは言え、表題にも掲げているように、科学的介護というものが自分の仕事の役に立つと思える人はまだ少ないであろう。もちろん国からも「科学的介護へ取り組むと人材育成につながりますよ」、なんて説明を受けていない。ただし、起きていることをすべて前向きに捉え、自らの事業所のため、職員のために、この科学的介護加算に徹底的に取り組むことで、その経営や運営に限らず、職員全体が介護福祉のプロとして進化することに対する自信につなげているのである。
「機能訓練加算II」加算に必須の興味・関心チェックシート
興味・関心チェックシート※はLIFE以前もあったシートだが、私が見てきた限り、「忘れ物チェック」レベルのものしか見たことがない。しかし、おろそかにしてしまうこのシートにこそ「宝物」が埋まっている。これを有機性のあるレベルに上げる道は、介護のプロへ駆け上がるチャンスでもあるのだ。
最初の目標はシートの完成だ。すべての項目は国際生活機能分類(ICF)に基づく「心身機能・構造」、「社会活動・生活行為」と「社会参加・役割」で構成されている。残念なのは、このシートをプリントし、20分程度ヒアリングをして記入し、その後は3カ月おきに評価するだけでよい、という誤解だ。このシートに記入されているものこそが、私たち介護のプロが「わからないから」といって蓋をしてきた利用者の個別性が秘められている。利用者のこれまでの喜びと楽しみが詰められている。シートを通じて、対人関係で悩んできた怒哀の推移を紐解くチャンスになるかもしれない。もっと突き詰めていけば、親族や友人も、本人すらも気づいていない深層心理や潜在的可能性を、介護のプロとして掘り出し、提示できるチャンスでもあるのた。
「20分で作成&完了」と言わず、与えられた評価期間である3カ月で利用者の生きてきた約80年の生きざまとその背景、考え方をじっくり推理していくことこそ、この科学的介護のやり甲斐につながるのは間違いない。
ちなみに、このシートはACP(アドバンスケアプランニング:人生会議)とも直結するので、時間をかけて、より多くの関係者にかかわってもらいたいシートである。
※加算II算定に必須帳票とはされていない。
もうひとつ「生活機能チェックシート」
このシートは、「計画書」とともにこの加算IIを算定するための必須帳票であることを忘れてはいけない。アセスメントの課題分析でよく見るADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)、IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)、起居動作の評価選択とそれぞれの環境、補助具、状況・生活課題を記入する欄があるが、ここで最も注意して使うべき枕詞、“魔法の言葉”がある。もともと(今年3月以前)、このシートは「居宅訪問チェックシート」と呼ばれていた様式の改訂版でもある。そう、これは「居宅訪問」したことを証明するためのシートであったものの、改訂版なのだ。
つまり、魔法の言葉というのは、私(評価スタッフ)が「居宅訪問した際に」という言葉があることが重要。しかも評価は「3カ月以内に1回以上」、機能訓練指導員以外のスタッフが評価を行った場合には、実際の機能訓練指導員が「見ました」というフィードバックを受けたという署名等があることが大事だ。
今回は「科学的介護推進加算の算定でいっぱいだという人も多いとは思う。ADL維持等加算も含め、介護スキル「人材育成」につながる要素があちこちにあることも見逃せない加算である。
次回は最終回。実地指導対策専門家として、心配しているこの加算の問題提起をする。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年11月号)
にしむらえいいち●株式会社へルプス&カンパニー代表取締役、ISO9001審査員、大阪市立大学大学院都市経営研究科在籍。人材派遣や米国のウェディング衣装会社で勤務後2004年株式会社コムスンに入社。在宅現場から社内諸問題解決のための面談や外部クレーム処理、債権回収、行政対応強化を経てエリア責任者業務に従事。2010年に介護諸問題解決のため同社を設立。実地指導・監査対策専門のコンサルタントとして、900事業以上の実務的なリスク管理を行ってきた
株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー | ||
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