経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第15回
外来における指導料に注目!
医療者が専門性を発揮できるように

中央社会保険医療協議会から2022年度診療報酬改定に向けた情報が小出しにされていますが、院内ではどのように把握される工夫をしているでしょうか。秋以降の本格的な話し合いに向けて、中医協では改定に関する問題提起が進んでいます。今回は7月7日中医協総会の資料を踏まえ、病院における外来機能のあり方を考えます。

一般200床以上の病院は定額負担徴収の義務化へ

医療機関における機能分化の流れが進むなか、7月7日の中医協総会で外来機能のあり方に関する議論が始まりました。図のとおり、診療所と病院の外来機能分化は進んでおり、2009年度と19年度のそれぞれの外来単価は、機能分化に応じた変化が見られています。特に診療所では在宅医療算定が増えており、在宅医療が進んでいることが数値からも読み取ることができます。

皆さまの病院における外来単価はいかがでしょうか。現在はコロナ禍ということもあり、コロナ禍前と比べて単価が高まっている医療機関も多いと思います。
そうしたなか、20年度診療報酬改定では、一般200床以上の地域医療支援病院について、紹介状を持たない外来受診の定額自己負担の義務対象となりましたが、一般200床以上のすべての病院に対象を拡大する方針が示されました。大病院とかかりつけ機能を持つ病院、診療所それぞれの外来収入の構造がより明確化されるものと考えます。

図 入院外1日当たりの診療報酬点数の推移

生活習慣病関連に注目「外来を予防の場に」

今回特に取り上げたいのは、外来における指導です。7月7日の中医協資料でも、生活習慣病関連の指導料について分析資料が示されており、これからの病院における外来収入の要の一つが指導にあると考えます。

特に注目したい糖尿病透析予防指導管理料について、概要を表に示します。
その名のとおり、透析導入の予防的な治療・指導が行われていることを評価する指導管理料です。高額な医療費が発生する透析とならないよう、複数の職種が介入して計画的な指導を行うことを評価しているため、点数は高めに設定されています。中医協資料でも年々算定件数は増えていることが示されています(20年度はコロナ禍ということもあり減少)。

外来機能の見直しは多職種で進める

昨今の診療報酬改定は、算定要件で多職種の介入を求める加算が増加しており、外来における加算もその例外ではありません。ただ、入院に比べて外来のほうが多くの職種が複雑にかかわっているうえ、非常勤医・看護師等が多く、外来に係るすべての職種で話し合う機会を持ちにくいため、そもそも連携しにくい組織構造であることを理解する必要があります。
一方で、医師事務作業補助者が外来で活躍する病院が増えてきており、看護師が専門性を発揮して外来収入につながる指導に介入しやすい環境に整えやすくなっていることも事実です。

外来看護師の動きを変えて外来収入につなげるためには、外来看護業務はもちろん、外来に係る各職種の業務フローの見直しが重要です。ある病院では、外来事務の業務見直しにより重複していた業務や不要な業務がなくなり、外来全体の業務が効率化され「もっと前に見直しておけばよかった」「必要な業務だと思い込んでいた業務があった」という声が上がっていました。

業務効率化に向けた日々の改善が難しい外来では、顕在化されていない課題が眠っていることが多いと感じています。コラムで紹介するケースを踏まえ、自院における外来機能の現状を振り返り、今後どうあるべきか見直していただきたいと思います。もしかしたら、顕在化されていない課題が眠っているかもしれません。

まとめ

  • 一般200床以上の病院における紹介状なしの外来受診の定額負担義務化の流れ
  • 病院における外来単価の底上げのカギは「指導」
  • 予防医療の数は多職種連携!お互いのケアを信頼できる関係性をめざそう

コラム 現場で何が起こっているの!?

ここでは今回取り上げたテーマについて実際に現場で起こっている問題を提起します(特定を避けるため、実際のケースを加工しています)。

ケース:外来で能力を発揮したい看護師対医師・コメディカル

透析治療を行っている一般200床未満の地方都市にある急性期・回復期・慢性期のケアミックス病院のお話です。

「糖尿病透析予防指導管理料」の施設基準を届け出ていなかったこの病院に対し、経営改善会議で提案したところ、院長先生から「こんな加算があるなんて知らなかった。該当患者は多いし当院には糖尿病専門医もいる。算定に向けて動いていきたい」と前向きな発言がありました。しかし、会議終了後に苦い顔をした外来看護師長から「実はずっと提案したかったんです」と言われ、よく話を聞いてみると、以下の状況が判明しました。

  • 糖尿病専門医がおり、外来には糖尿病患者が多く来院している
  • 生活指導が必要な患者について糖尿病専門医から他職種へ指導を依頼しない
  • 指導の依頼をしない理由は「指導の内容が信頼できない」との回答
  • 糖尿病専門医は長く務める副院長であるが、院長を含め他の医師とのコミュニケーションがとれておらず、他の医師は上記を把握していない(把握する機会がない)
  • 上記を外来看護師長から院長に進言したことはあるが「看護師長さんから上手く言ってよ」と言われてしまった
  • 管理栄養士を巻き込もうと栄養課長に相談するも「今でも外来栄養指導は行っているがどうしたら良いかわからない」と要領を得ない
  • 事務を巻き込もうと事務長に相談したが「医師の協力がないと算定できないし、そもそも算定対象がそんなにいるのか」と看護師に丸投げ状態
  • 外来看護師としては看護師外来をつくるなど患者指導に力を入れていきたいが、医師の協力がないと進まないため諦めかけていた

つまり、外来機能の強化は病院全体の目標でしたが、目標達成に向けた具体的な取り組みについて検討されていなかったことに加えて、病院の問題として顕在化する機会を失っており、外来看護師長が孤軍奮闘している状態だとわかりました。今回、外部コンサルタントによって問題が顕在化「されてしまった」ことで、院長先生は糖尿病専門医に働きかけないわけにはいかなくなりました。糖尿病専門医は医師以外による指導の信頼性がないことを明確に説明できるわけもなく、届出を出さざるを得なくなり、少しずつ指導件数を伸ばす取り組みが始まりました。(『最新医療経営PHASE3』2021年9月号)

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。

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