経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第6回
「診療情報提供料Ⅲ」は算定しているか?
新型コロナウイルス禍の集患対策

2020年度診療報酬改定から半年が過ぎましたが、今年度は新型コロナウイルスの影響もあり、制度改正を踏まえた業務の見直しが難しい年となっています。今回は、あまり目玉のなかった20年度診療報酬改定のなかで新しい診療情報提供料として登場した「診療情報提供料III」についてお話します。

患者の移動を伴わない診療情報提供を評価

2020年度診療報酬改定前まで、診療情報提供料は患者とともに情報が移動する場合のみ評価するもので、患者を紹介した際の「診療情報提供料I」(250点)、患者の求めに応じてセカンドオピニオンを実施した際の「診療情報提供料II」(500点)がありました。
そこに、20年度改定で新たに登場したのが「診療情報提供料III」(150点)です(表)。

この診療情報提供料IIIは、患者の移動を伴わない診療情報提供に対する評価です。ただ、算定できるパターンが決まっており、パターンは3種類あります。

①かかりつけ医機能を有している医療機関から紹介された患者に対する診療情報提供
②産科医療機関から紹介された妊娠している患者又は産科医療機関に紹介された妊娠している患者に対
する診療情報提供
③かかりつけ医機能を有している医療機関に紹介された患者に対する診療情報提供

算定上注意すべきは、同月にIとの同時算定ができないことと、提供する情報は儀礼的な内容ではなく臨床的な内容を含むことが必要であるという点です。また集患対策の観点から、かかりつけ医機能を有している医療機関(地域包括診療加算等を届け出ている医療機関)に対する評価という点に注目する必要があります。

かかりつけ医機能を有する医療機関とつながろう!

改定後、「診療情報提供料III」の算定状況は医療機関によってかなり異なるようですが、現場での理解が進んでいないこともあってか、算定されていないケースが少なくないようです。皆様の医療機関ではいかがでしょうか。

皆様の地域でかかりつけ医機能を有している医療機関はどこか把握しているでしょうか?たとえばこの加算の算定を目的とするのではなく、在宅患者緊急入院診療加算を算定するために、地域連携室に一覧表を貼り出している病院もあると思います。Iとの同時算定はできないため、実際には毎月かなりの算定件数にのぼっているということはないと思いますが、新型コロナウイルス禍における収入減への対策という意味でも、できるかぎり漏れなく算定していくために、地域の最新情報を得ておきたいところです。

診療情報提供料IIIはかかりつけ医機能を有している医療機関と患者を紹介し合うことでお互いに算定機会が生まれる、win-winな加算であることがポイントとなります。

25年の地域包括ケアシステムの確立に向けて、かかりつけ医機能を有している医療機関を増やすための政策誘導が行われています。いち早く診療報酬の流れに乗っている診療所や、200床未満の病院ではかかりつけ医機能となる届出を行っていますが、まだまだ診療報酬改定の流れを正しく把握できていないところもあります。加算の趣旨についても、理解が十分でない医療機関は少なくありません。患者を地域包括ケアシステムで皆で支えるためのより良い関係性を築くことに、この加算を活用していただきたいと思います。

自院でできる取り組みとして、まず、紹介・逆紹介データを見返してみましょう。お得意様となっている医療機関のうち、かかりつけ医機能を有している医療機関はあるでしょうか。そのかかりつけ医機能を有している医療機関から紹介された患者のうち、算定できたケース、または算定機会があったが逃していたと思われるケースはなかったでしょうか。自院の算定ルールとともにぜひ見直してください。

地域の医療機関との新たな橋渡しとなるよう、診療情報提供料IIIを活用していきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2020年12月号)

まとめ

  • 自院に紹介される・自院から逆紹介する医療機関のうちお得意様はどこ?紹介・逆紹介分析を行い、上位の医療機関のうち、かかりつけ医機能を有している医療機関はどのくらいあるか知りましょう!
  • また、関係性の深い医療機関がかかりつけ医機能を有していなければ、かかりつけ医機能を持つ検討を呼びかけてみましょう!
上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。

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