デジタルヘルスの今と可能性
第33回
時限措置の3カ月延長が決定
オンライン診療の動向と今後
8月6日の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、時限措置として緩和された電話等診療の4~6月の状況が報告された。現状分析をしながら今後の方向性を考える。
医療機関の15%が電話等診療に対応
前回は医療AIの最新情報についての話をした。今回はオンライン診療を取り上げる。
オンライン診療は、2020年4月、急激な変化を遂げた。そのきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの感染拡大と、それに合わせて発出された4月10日の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」である。その内容についてはご存知のことと思うが、簡単にポイントを解説すると次のようになる。
●初診からオンライン診療が保険診療(214点)として行うことが可能
●電話等再診を活用して全ての疾患でオンライン診療や電話診療が可能
●通常の診療報酬では100点であるオンライン診療についても算定できる管理料が147点に増点
もっともこれらは、新型コロナウイルス感染防止対策として、時限的に認められた措置であり、3カ月ごとに収束状況を見極め措置の終了や延長を決めることになっている。8月6日に開催された厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では4月~6月の3カ月間のオンライン診療の実績の報告や時限措置の終了、延長の判断、今後の対応についての議論が行われた。
まず、電話等診療(オンライン診療+電話診療)の時限措置に対応した医療機関の総数は、4月末時点では1万812件だったが、7月末時点には1万6202件にまで増加した。これは医療機関全体の14.6%を占める数である。このなかで初診での電話等診療に対応している医療機関は、7月末時点で6801件。診療所での電子カルテの普及率41.6%(17年)を考えると、時限措置で電話等診療を始めている割合はその約1/3に過ぎず、「活用されている」とは言えないのが現状だ。
30歳以下が過半数を占める診療科は内科がトップ
4月から6月の間での初診での電話等診療の実施件数に関しても報告されている(図1)。その件数は4月が5300件、5月が9746件、6月が5761件となっている。電話診療とオンライン診療の占める割合の内訳は、電話診療が全体の約6割、オンライン診療は約2~3割で、1割程度が不明となっている。
患者の年齢層としては電話診療・オンライン診療ともに0~10歳が一番多く、0~30歳の受診が過半数以上を占めた(図2)。
その背景としては、0~10歳では、湿疹や上気道炎、気管支炎か多く、10歳以上では発熱や上気道炎、気管支炎を主訴として活用されていた。全体としては感冒症状を含む、上気道疾患の割合が高くアレルギー性鼻炎や湿疹などのcommon diseaseも多く扱われていた。
利用された診療科の割合で見ると電話診療·オンライン診療ともに1位は内科、2位は小児科、3位は皮膚科、4位が耳鼻科、5位が眼科という順番になった。このうち小児科と皮膚科においては電話診療に比べて、オンライン診療のほうが占める割合が大きかったのが特徴的だった。
要件を守らない場合厳正な対処を行う方針
電話等診療における時限措置は、新型コロナの収束がいまだ見られないため、要件を周知徹底し、さらに3カ月継続する方針となっている。ただし、検証において、▽電話診療やオンライン診療の患者は小児が多かった、▽全体の傾向として、軽症と思われる患者を中心に初診からの電話診療・オンライン診療が行われていた、▽一部、物理的に大きく離れた地域に対して診療が行われていた、▽一部、特例措置の要件を守らない診療が行われていた――ことを受けて、今後の対応として「厳正な対処や情報共有を行う」としている。
厳正な対応や情報共有は、初診で麻薬および向精神薬を処方してはならないことなどの改めての周知や、一部の診療に懸念があることから、▽概ね同一の二次医療圏内に居住する患者を対象とするのが望ましい、▽電話診療が適さない疾患があることに留意する必要がある(たとえば、湿疹に対して電話診療を行うなど)――などだ。
一旦、電話等診療として電話診療とオンライン診療が一体化された時限措置であるが、今後、オンライン診療なら可能、電話診療では不可などの差別化が図られるように考えられる。なお、時限措置は「患者が安心して医療機関の外来を受診できる頃」まで継続されるとされており、診療所経営にも影響を与えるため、その動向は今後も注視しておきたい。(『CLINIC ばんぶう』2020年9月号)
(京都府立医科大学眼科学教室/東京医科歯科大臨床准教授/デジタルハリウッド大学大学院客員教授/千葉大学客員准教授)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上