MMS Woman Lab
Vol.86
質を下げずに件数を増やす?
まずは業務の見直しからはじめよう

<今月のお悩み>患者さんやご家族の相談に対応する「よろず相談窓口」を担当しています。先日、上半期評価の面談がありました。窓口担当職員は私を含め10人ですが、上司から「他の人より対応件数が少ないので、評価が下がる」と言われました。相手のためを思って丁寧な対応を心がけてきましたが、どうしても時間もかかってしまいます。それで評価が下がるなら、件数を増やすために最低限の対応だけにしようかと思っています。

ニーズが高まる相談窓口業務で必要とされる対応力とは?

月日が経つのが早く感じます。特にコロナ禍と言われるようになってからの1年はあっという間でした。新年度も、もう上半期のまとめをする時期になってきました。個人の目標管理などを導入している病院では、上半期評価の面談なども始まっているのではないでしょうか。それぞれが立てた個人目標がどれくらい達成できたか、また課題があるようであればどのようなサポートを必要としているかなど、しっかりと話を聞く時間を持てると良いですね。

ご相談では、その個人面談で、上長から「日々の仕事量が少ないので、他の職員より評価が下がる」と伝えられたとのことですが、面談ではそれ以外にどのような話があったのでしょうか。
外来受診の総合案内や入退院支援の窓口、患者さんやご家族の相談窓口といった機能を充実させる病院は年々増えてきています。院内の案内だけでなく、医療や介護の利用についても個々の希望や選択の機会が増えていますから、それに伴って相談窓口の需要はますます高まるでしょう。

外来に設置されている「よろず相談窓口」の担当とのことですが、10人配置されているというのはとても充実していますね。「どの外来を受診すれば良いのか」「エコー検査室まで案内してほしい」などの依頼から、診察が終わった後の相談、入院についての不安、退院後の生活のことや治療中の家族を支える方々の心の相談まで内容は多岐にわたることでしょう。相談の内容によって対応にかかる時間には大きな幅があると思いますが、上長は毎日誰が何件対応したかの実績を一つの指標にしているということですね。

面談では、出勤日1日当たりの対応件数が他のメンバーの半分以下であることで能力評価をかなり低くされ、さらに、件数を増やす工夫をするように指導されたとのこと。ご高齢の患者さんも多く、丁寧さも優しさも求められる業務ですから、1人にかける時間はどうしても長くなってしまいます。また、あまりかかわりのなかった介護保険サービスや地域の福祉サービスの案内なども行おうと思うと、調べる時間もかかります。「詳しいことは市役所で聞いてください」と言ってしまうのは簡単ですが、一緒に調べてご案内できれば、利用する方は安心しますね。あなたの心がけは間違っているわけではありません。ただ、面談ではそのような思いが評価されなかったと感じ、「丁寧にやればやるほど評価が下がるなら、最低限の対応だけにしよう」と思ってしまったようですが、少し落ち着いて考えてみましょう。

質の向上と効率化の両立に向け工夫できる余地はあるはず

確かに、多くの方々にサービスを利用していただくためには、対応件数を増やさなくてはなりません。「件数を増やす工夫」をするように言われていたのは、どこに時間がかかっているのかを分析し効率的に対応するように求められているのだと思います。
たとえば、日々の対応業務のなかで、同じような質問に何度も対応していたりすることはありませんか?場所がわかりにくい検査室の案内、退院時に聞かれる介護保険制度のことなど、頻繁に同じような対応をしているようであれば、「よくある質問」としてまとめてみるのはいかがでしょうか。案内用に簡単な冊子をつくっても良いですし、各項目を1枚の案内文書にしてすぐにわたせるようにしておくのもおすすめです。
そして、「ここに書いてありますから見てください」だけでは不親切ですから、「この件は多くの方からご質問をいただきます。ここに記載してあるのですが」と見せながら説明するとご利用者も安心するのではないでしょうか。
また、それをあなた1人が行うのではなく、よろず相談窓口の皆さんで共有していくことで、病院としてのサービス向上につながります。自分だけの問題と考えず、部署として、チームとしての質の向上を目指していただきたいと思います。個々のスキルに依存しがちな相談業務でも、それぞれの「事例」を持ち寄ればチームとしての対応力も上がっていきますから、あなたの優しさや丁寧さを活かせる工夫をしていってください。

〈石井先生の回答〉

相談窓口の業務は、職員のスキルに依存している部分があります。丁寧に対応する心がけは間違っているわけではありませんが、効率化できる箇所がないか、見直してみましょう。部署内で「事例」を共有するなど工夫してチームの対応力を高め、あなたの優しさや丁寧さを活かしてください。(『月刊医療経営士』2021年9月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか

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